20 ポーラとお出かけ(中編)
ポーラに手を引かれながら俺たちは本屋へとたどり着いた。
しかし、町ゆく人たちが微笑ましいものを見るかの様な目で俺たちを見てくるのは少し恥ずかしかったな。
まあポーラも俺も見てくれは最上級の美少女なので人目を集めるのは仕方ないだろうが。
……ポーラも俺も美少女なので! ポーラも俺も美少女なので!
「ふふーん。あったあった、これがアタシお勧めの一冊よ。とりあえずアタシからのプレゼントってことで」
本屋の棚から一冊の本を抜き出したポーラは、そう言うとともに会計へと早足で向かう。
ああ、行っちゃったよ。支払いぐらい自分でするのに。
アレスと一緒に依頼を片付けた事で報酬を貰ったので、今の自分は小金持ちなのだ。だから本ぐらい買えるんだけど……。
「素直に受け取っとくべき、かな」
なんかポーラは機嫌がいいみたいだし、ここで遠慮して折角の好意を無碍にするような真似をする事もないだろう。
人のパンツを被って喜ぶような変態だけど、それでもポーラは一応貴族で俺よりお金持ちなわけだし。
「それにしても……漫画の類はやっぱ無し、か」
まあ漫画って地球でもかなり近代に入ってからできたものだしね。正直、期待はしていなかったが。
「……漫画書いたら売れるかな? ライバルが誰もいないんだから下手な絵でもセーフだし……むしろ後続が増えてくれれば、いっぱい漫画が読めるからむしろそっちのほうがいいし……」
流石に本格的な漫画は無理だが、簡単な四コマ漫画ぐらいなら俺でも書ける。それが新たな漫画の呼び水となってくれれば万々歳だ。
問題は漫画がこの世界の人間に受け入れられるかどうかだな。絵ばっかりで気持ち悪い、小説の方がいいと避けられる可能性もあるだろう。
とりあえず、屋敷に帰ったらアレスに聞いて反応をうかがってみますかね。
ちょうど考えがまとまるのと同時に、会計を終えたポーラが戻ってきた。
「ティア、お待たせ。はい。読み終わったら感想聞かせなさいよ?」
ドヤ顔で俺へと小説の入っているであろう紙袋を差し出してくるポーラ。
「うん! ポーラ、ありがとう」
「ふふ、いいのよ気にしなくて。それよりティアはどう? 気になる本はあった?」
うーん。そう言われてもなあ。俺は面白い作家や話題になっている作品を知らないので、なんとも言えない。
タイトルで判別しようにも、お堅いタイトルの作品が多くて心惹かれるものがないし。
「特に無い、かなあ。私はほら、こっちに来て日が浅いから。あまり流行りの作品とか知らないし?」
店内でも俺とポーラの二人は目立つらしく、みんながちらちらと俺たちを見たり会話を伺っているのでボヤかしながらの説明になる。
そういえばポーラはお隣の領地を治める貴族の娘だったもんな。そりゃ有名だろうし目立つよね。
トロール退治のとき一緒した騎士のコリンもポーラについて詳しかったし。
「……やっぱり人目、気になる?」
ポーラがさり気なく俺の傍によって、そう呟く。
「いや、別に? 私、昔はもっと有名人で、もっと人目を集めてたからさ。だからこの程度なら気にならないかな」
何しろ英雄みたいなもんでしたし。まあガルムの民はみんな礼儀正しいから、民衆がわらわらと寄ってきて大変な事に……って状態にはならなかったのが救いか。
それでも人目は集めたし、そのせいでうかつな行動が取れなくて大変だった。
まあ、あのころに比べれば受ける視線の量も可愛いものよ。
「そう、ならいいわ。でも、我慢できなくなったら言いなさいよ?」
「あはは、ありがとう」
心配そうな目で見て来るポーラを安心させるため、笑顔を作って礼を言う。
本屋を出て、ポーラと二人でのんびりと街を歩いていると、ふと脳裏をアレスの顔がよぎった。
アレスは今頃商談中かな? 結局、ロバーツ商会とやらとの用事がなんなのか教えてくれなかったなあ。
「そういえばティアってさ、妹が二人いるのよね? どんな感じの子なの?」
「ん? そうだね、じゃあまずは次女のレヴィアから! 青いロングヘアで、キリッっとした顔が可愛いくて、身長は私よりちょっと高くて、胸もでかくて、丁寧で礼儀正しいいい子なんだ!」
ちなみに武器は機械杖で、範囲攻撃が得意。攻撃魔法だけじゃなくて補助魔法も使いこなし、俺ほどではないけど近接戦闘までこなすオールラウンダーであり、非常に頼りになる自慢の妹だ。
欠点は主な攻撃手段が魔法である関係上、俺みたいに魔力消失領域を常時纏えないってことかな?
魔法の邪魔をしないよう、基本的には体から離れた位置に壁のように展開していたので、アレスのような魔法剣士タイプは苦手だったりする。
まあ相性差なんてゴリ押しで無効化できるだけのスペックがあるから弱点(笑)みたいなもんなんだけど。
本当はポーラにレヴィアの凄さを思いっきり説明してやりたいが、ここは人目が多いのでぐっと我慢する。
どこから情報が漏れるかわからないからね。
ぶっちゃけ知られたところで現代の人間達には対処できないだろうが、だからと言って自分からバラすようなこともあるまい。
「へぇ……ティアよりおっきいのねえ……」
ポーラさん、目が怖いです。というかそこに食いつくのね。
「う……三女のフェルニは、金髪のツーサイドアップが似合う可愛い子でね。ちっちゃくて、人懐っこい性格で、もう最高に可愛いんだよ。本人も自分の強みを理解したうえで甘えてくるからさ、こっちもついつい甘やかしちゃって……」
フェルニの武器は銃だ。マシンガンとショットガンを装備し、超高速で空を飛び回りながら攻撃を仕掛けるフェルニは奇襲や強襲が大得意で、平地での戦いにおいては最強だ。
なにしろ敵の布陣とか戦況とか完全に無視して敵の本陣や重要拠点を強襲できるわけだしね。
対処しようにも、超高速で動くフェルニを捉えるのは至難の技だ。というか得意分野が違うだけで俺たち三姉妹の性能はほぼ同一。仮に万全な対処を取ろうが真正面から踏み潰せるわけで。
フェルニの欠点を上げるなら、弾切れと装甲面か。
フェルニの軍服は倉庫の役目を果たすマジックアイテムとなっていて、ポケットに大量の弾薬を詰め込んではいるが、それでも一応は有限なわけだし。
今までフェルニが弾切れになった場面とか一度も見たこと無いけど、多分弾切れはあるはずだ。多分。
そして最大の欠点として、飛行や弾薬の格納に魔法を使っている関係上、魔力消失領域の展開できる範囲が狭い事だろう。
飛んでる最中に全身に纏おうとすると落っこちちゃうしな。だから基本、体から離れた位置へ壁のようにしか展開できない。
……弾薬を収めてるあの服の魔法解除したらどうなるんだろう。やっぱ格納してた弾薬が飛び出てくるのかな?
まあいい。それでも超高速の飛行能力があるので、これも弱点とは言いがたいだろう。接近して魔法を使おうにも、超スピードで飛んでる相手にどう接近するんだよという話だ。
「へえ、小さい子なの! 会って見たいわねえ」
今度は嬉しそうに微笑むポーラ。判断基準はそこなのか。
「そうそう、二人ともすっごく可愛いんだ。まあでも、会うのは難しいかも? 会ってもアレスとポーラは間違いなく嫌われちゃうだろうしなあ」
「え? 何で? ……やっぱガルム帝国の住民じゃないから?」
目を丸くしたポーラが聞いてくる。
ガルムに関する部分は周りに聞かれないよう、俺の耳元に口を寄せてこっそりと聞いてくれたが。
「うーん、そこじゃなくてさ。あの二人さ、私にすっごく懐いててね? というか懐きすぎててね? 私が他人と仲良くなるのをよしとしないんだよね。『姉さんには私達以外必要ないんです』とか言っちゃう子たちだし。いやぁー、愛が重いねえ。ふふふ」
俺が関わらなければ二人とも問題ないんだけどね。でも、既にこうして思いっきり関わってしまった以上、あの二人がアレスとポーラに懐く事はないだろうな。
「……重いとか言う割にはずいぶんと嬉しそうな顔ね?」
「そりゃあね。だってそれだけ想われてるってことだし?」
それに相手は妹だし。憎からず思っている相手に慕われて、いい気分にならない人間などいるであろうか? いや、いない!
「ま、まあティアがそれでいいならいいけど……あ、見えたわ。あそこが武器を取り扱っている店よ」
ポーラが指差す先には、剣のマークの看板を下げた一軒の店があった。
姉妹の身長はティア160cm レヴィア165cm フェルニ135cm ぐらいです。
戦闘力(意味深)はそれぞれC、F、AAといったところでしょうか。
前後編の予定だったけど終わらなかった……。




