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17 ティア轟沈

「あー、さっぱりするわねー」


「だねー」


 グランヴィルの屋敷にて、オーク退治でかいた汗を流すためにと、俺とポーラは二人で風呂に入っていた。


 俺は汗とかかいてないし、純粋な女の子であるポーラと一緒というのは不味いだろうと思ってポーラの後に入ろうとしたのだが、ポーラが「一緒に入ればいいじゃない」とゴリ押ししてきたので仕方なく一緒に入っている形だ。


 それにしてもここの風呂は広いなーと、何度か入った今でもそう思う。小さな銭湯くらいの大きさはあるんじゃなかろうか。

 まあ沢山いる使用人もこの風呂を使うとのことなので、ただ無駄に広いだけというわけではないのだが。


 ちなみに普通の貴族なら自分達の使う風呂に使用人を入れたりはしないらしい。まあ当然だよな。


 こうやって家族の風呂の使用許可を出したりするあたりからもハインツさんのいい人っぷりがわかる。

 いやー、流石はアレスの父親だな。


「それにしてもティアって本当に強かったわねー。こーんな可愛いのにあんなに強いとか詐欺よ詐欺」


「ふふーん。もっと褒めてもいいんだよ? まあ、こっちこそポーラが意外とやり手なことにびっくりしたよ」


 湯船に浸かり、両手を組んで水鉄砲を作って遊んでいたら今日の戦闘についてポーラが褒めてくれた。

 銭湯で戦闘について褒められる、なんちって。ふふふ。別に銭湯じゃないんだけどね。


 友人であるポーラが褒めてくれたので早速調子に乗ってみる俺。やはり友人からの賞賛は格別よな!

 うむ、もっといっぱい褒めるがいい!


 ドヤ顔を浮かべて追加の賞賛を求める俺に対し、ポーラは一瞬だけ苦笑したかと思うと次の瞬間には悪戯を思いついたかのような笑みを浮かべる。


 む? 何を思いついたのかは知らんが煽り耐性MAXの俺には効かんよ?

 前世で掲示板の前のお友達相手に鍛え上げたからな!

 ハハハ、さあ何でも言ってみるがいい! まあ無駄だろうけどネ!


「ティア可愛い、とっても可愛い! 小動物みたいで可愛い! お肌すべすべで可愛い! お目目ぱっちりで可愛い! ちょっと褒められるとすぐ大喜びしちゃうチョロさが可愛い! 痴女みたいな超ミニスカート穿いてるくせに……」


「そっちじゃなーい! あと俺はチョロくないし! 普通だし! ていうか痴女って何! ポーラだってミニスカートじゃん!」


 あ、しまったと思った時にはもう遅い。俺の叫びを聞いて、ポーラがニタァと嫌らしい笑みを浮かべる。

 くそう、慌ててたから普通に俺って言っちゃった。


「ティアのは短すぎるの。限界ギリギリ攻めすぎでしょ。そ・れ・よ・り・も。 今、ティアちゃんってば自分のことを『俺』って言わなかったかしら~? 言ったわよね~? はい、罰ゲーム!」


 そう言うと同時に近寄ってきたポーラが俺の胸を揉みしだく。


「あはははは! ちょ、やめ……! やめてぇ!」


 くっ、くすぐったい! 駄目だって、マジそれ駄目だから!


「おのれ、無駄にデカイ乳しおって……。馬に乗せてあげてる間、まるでアタシへの当てつけのようにぐいぐい押し付けてきた恨みは忘れんぞ……!」


「それ不可こうりょ……も、もう、いい加減に……!」


 俺への理不尽な文句を言う間もポーラの手は休まることを知らず、ひたすら揉み続けてくる。


 しかし、最初はただくすぐったいだけだったが、揉まれているうちに変な気分になってくる。

 なんだこの感覚……。


「ポ、ポーラぁ……もう……やめ……」


「ん~。これ以上はスイッチ入りそうだしまずいかしらね。というか入っちゃった? あはは、まあゴメンゴメン!」


 ようやくポーラが解放してくれるも、あいにくと俺の方はそれどころではない。

 なんだか頭に靄がかかった感じで、ふわふわする。マトモに頭が働かない。

 ああ、でも悪くないな、コレ……。


「あぅ……」


 大理石の湯船の縁にぐったりと倒れこむ俺を見て、ポーラが自らの額を右手で押さえる。


「あっちゃー、やりすぎたか。完全にスイッチ入ってるわね。うう、これってアレスに怒られるんじゃ……? って言うかこっちの方もチョロすぎでしょ……。」


「ポーラぁ、なんか、あたまがへんに……なにこれぇ……」


 ぼんやりした思考の中、必死にポーラに助けを求める。そんな俺を見て、ポーラがゴクリと唾を飲み込む。

 見てないで助けてポーラ……頼むってば……。


「ええい! 落ち着けポーラ、落ち着けポーラ。アタシはノーマル、アタシはノーマル!」


「ああぅ……ポーラ……」


「く、くぅぅ……!」






「…………死にたい」


 あれからしばらくたち、なんとか素の状態に戻った俺は激しい羞恥心に襲われていた。

 あんなのが俺だとは思いたくない。ガルム最強の兵器の威厳はどこ行った。

 というかこれでも精神は男だってのにあんな醜態を……うわあ……うわあ……。


 湯船の縁にもたれかかり、額まで湯に浸かりブクブクと泡を立てながら落ち込む俺。


「あ、あははははははははは。ごめん、ごめんってば。謝るから機嫌直してよぉ~」


 そんな全力で落ち込む俺に謝り倒すのは今回の騒動の元凶であるポーラ。

 うう……屈辱だ。よりにもよって同性のポーラに……。どうせならアレスの方が……。


 いやいや、一体何を考えているんだ俺。何故ここでアレスが出てくるんだ。

 ふふふ、あまりのショックに混乱が収まらないようだ。はぁ。


「ほらほら、機嫌直して。直してくれなきゃまた揉んじゃうぞーっと」


「ひっ!」


 こっそりと近寄ってきたポーラが再び俺の胸を鷲掴みにするので、あわてて振り払いポーラから距離をとる。

 湯船の中央の方に逃げたため、湯の表面に大きな波が立つ。


 やめてくださいお願いします。もう一度やられたら壊してはいけない壁が完全に壊れちゃいそうなんです。


「まったく……。今のは揉み心地のいいティアのおっぱいが悪い! アタシは悪くない! 文句があるなら思いっきり揉み倒すわよ!」


 コイツ、開き直りやがった! 最低だ!


 思わずポーラにジト目を向けてしまうが、開き直ったポーラには全く効いてないようだ。むしろ手をわきわきさせながら、ゆっくりと湯を掻き分けながらドヤ顔で近づいてくる。


 その様子にかつてない危機を感じた俺は両手を挙げて降参のポーズを取り、慌ててポーラへと謝るのであった。

 くそう、何で俺が謝らなきゃならんのだ。どう考えてもこっちは被害者だってのに、ガッデム。



 それから俺は湯船の中央に体育座りを、ポーラは湯船の縁にもたれかかるように座って向き合いながら湯に浸かる。


「いやー、それにしても素晴らしいおっぱいね。色よし形よし感度よしと、もう完璧じゃない。流石はガルム帝国ね……やっばいわ……」


「そんなとこ褒められても微塵も嬉しくない……どうせなら戦闘力とか戦果とかで褒められたい……」


 というかぶっちゃけた話、胸とかあっても邪魔なのだ。戦闘中とか無駄に揺れるし。被弾面積増えるし。……いや、クッションになってくれるから打撃攻撃への耐性は上がってるのか?


 まあどっちにせよ俺の超スペックなら攻撃なんて食らわないから邪魔なだけなんだよね。五年も付き合ってれば流石に慣れるどさ。


 真面目な話、ポーラの絶壁ボディが羨ましい。心の底から羨ましい。出来れば交換して欲しいぐらいだ。


 そう伝えると、ポーラは物凄いにこやかな笑みを浮かべ、無言で立ち上がり俺に近寄ってくる。


「ポ、ポーラ?」


 え? 怒った? あ、ちっちゃいの気にしてたんですね、ハイ。

 でも賓乳でもポーラは可愛いと思うよ? だから怒るのはやめよう。


 とりあえず逃げようと腰を上げるが、遅かった。立ち上がったところでポーラに両腕を捕まえられ、逃走を封じられる。


「え、えーっと。悪気はなかったので許して欲しいなーって。ダ、ダメ?」


 えへへと笑いながら謝ってみるが、ポーラは止まらない。

 そのまま湯船の縁まで連れて行かれ、無理矢理座らせられる。


「ゴ、ゴメンって。本当に悪気は無かったんだって!」


 事態の深刻さを察した俺は俺は軽く涙目になって震えながらも謝罪するも、ポーラは笑顔を崩さない。許してくれない。


 そのまましばらくニコニコと俺の謝罪を聞き流していたポーラだったが、急に笑顔から真顔に戻ったかと思うと、そのまま静かに呟いた。


「完全にキレたわ。もう泣いても許さない」


 直後、浴室に俺の悲鳴が響き渡った。

むつかしかった(こなみ)

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