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1 プロローグ

色々な小説を読んでいるうちに自分でも書いてみたいなと思い投稿してみました。

誤字脱字文法ミス、設定の矛盾などおかしいところがあれば教えてくださると助かります。

 ガルム帝国。魔法と科学を組み合わせた魔科学が非常に発達した国であり、この世界、オーランド最強の軍事国家である。

 ガルム帝国は魔科学を武器に周辺国家へ次々と侵略戦争を仕掛け、そのことごとくに勝利。世界をガルムの名の元に一つに纏め上げた。


 そんなガルム帝国の保有する研究所の一つ、帝都から最も離れた、周囲を荒野に囲まれた研究所。

 地上二階、地下三階建てのその建物の一室で茶髪の男と銀髪碧眼の少女が椅子に座り、丸いテーブル越しに向かい合って話し合っていた。


 男はこの研究所の所長であり、その所長と話している少女は人間ではなくガルム帝国の開発した戦闘用アンドロイドだ。名はティアマト。


 近接戦闘特化型として作られた彼女は圧倒的な膂力や耐久力に加え、魔法無効化能力まで備えたガルム最強の兵器の一角である。

 ちなみに姉妹機として範囲攻撃型のレヴィアタンと機動力特化型のフェルニゲシュという二機も存在し、彼女たちもティアマトと同様に別次元の性能を誇る。


「こんなことになっちまって、本当に悪い。……オレたちに、もっと力があれば」


 所長が少女に頭を下げ、それを見て少女がため息をつく。


 所長が落ち込んでいる理由、それはティアマトにある。

 ガルムの兵器として戦場でその圧倒的な力を振るった彼女たち三姉妹は、戦争が終わるとその強大な力を危険視された。


 そして彼女たちの処遇をめぐり連日で会議が行われた結果、三姉妹揃って無期限の封印処理が行われることが決まったのだった。


 所長は封印処理には反対していたのだが、力及ばず、ティアマトら三姉妹を封印すべしという意見をを止められなかったことを悔いているのだ。


「もういいよ。所長たちが頑張ってくれたことは知ってる。その気持ちだけで十分さ。それより、レヴィアとフェルニはどこに封印されるかとかわかる?」


「すまん。それも分からん。……だが、フェルニの奴は相当人間を憎んでるハズだ。性格も攻撃的だしな。お前ら三姉妹の中でも一番厳重に封印されるだろう」


「……まったく、こんな美少女をつかまえて封印とかどうかしてるぜ。どうせなら封印じゃなくて攻略に走れよ攻略に」


 外見美少女のティアマトが突然男口調で話すが、所長にそれを気にする様子はない。なぜなら。


「言ってもお前、人格が男だしねえ。男相手だと精神的ホモはちょっとと言って靡かねえ。女相手でも肉体的レズはちょっとと言ってやっぱり靡かない。レヴィアもフェルニも極まったシスコンだからお前以外にそういう感情は抱かないだろうし、お前ら攻略とか無理だろ」


「お前らがそう作ったんだろうが! ……はあ。まったく、こんな変態共がガルム最高の技術者とか泣けてくるな」


 そう、ティアマトは意図的に男の人格を組み込まれていたのだから。主に所長の趣味で。ハハハと仲良く笑いあう二人。


 しかし、所長は知らないがティアマトにはまだ秘密がある。それは、彼女には前世の記憶とも呼べるものが存在することだ。


 前世の彼女、いや、彼は平凡な男だった。大きな失敗もなかったが、同時に大きな成功もない。顔も性格も能力も普通。可もなく不可もなく。まさに一般人のテンプレートと呼べるような人間だ。


 他者からみれば何の面白みもない人生だったろうが、しかし、本人は特にやりたいこともなかったのでそれなりに満足していた。そんな平凡ではあったが幸福だった人生。


 しかし、ある日風呂場でうっかり寝てしまい、ふと目覚めてみれば侵略国家の技術の粋を集めた最強兵器になっていたのだからびっくり仰天である。


 おそらくは風呂場で寝た結果、溺れ死んでしまったのだろうと彼は推測する。どう考えても自業自得なので、前世はすっぱり諦めて第二の人生を受け入れ、ティアマトとして生きることにした。しかし、生まれ変わった先はよりにもよって絶賛戦争中の侵略国家の尖兵だ。


 戦闘兵器であるが故に恐怖や罪悪感など、戦闘の妨げになる感情にフィルターがかけられていなければ、とてもではないがやっていけなかったであろう。


「それにしても」


 ティアマトが椅子から立ち上がる。椅子の背もたれの部分ににかけてあった黒い軍用コートを取り、羽織りながら部屋の隅にある姿見の前に歩く。所長はそんな彼女を何も言わずに眺めている。


「今更だけど、よくこの外見で許可下りたよな。最強の兵器の威厳がーとか威圧感がーとかで止められると思うんだが」


 ティアマトが鏡の前で色々なポーズを取りながら自分を観察する。


 透き通るような青い目に銀髪のセミロングヘア。黒いミニスカートの軍服に、金属で補強されたこれまた黒いブーツ。そして片側だけ履いたニーソックス。ソックスを履いてないほうの太腿にはベルトタイプのホルスターが巻かれており、銀色の金属棒が二本挿されている。これは魔力式のレーザーブレードであり、普段は柄だけだが使用時には魔力の刀身が伸びる仕組みだ。


「どーせ皆殺しにするんだし、威圧したって意味ないしなー。だったら可愛い見た目にして仲間の士気上げたほうがいいだろ?」


「まあ確かに怖い外見にして、それで逃げられたりしたら追いかけるの面倒だけどさ」


 所長の発言に同意し、そのまま姿見の前で何度か適当なポーズを取った後にティアマトが口を開く。


「うん、あざとい。実にあざとい」


「だが、それがいい。……だろう?」


 ティアマトの呟きに所長がニヤリと笑いながら返す。


「いやー、本当はボクっ娘属性も盛ろうかと考えていたんだがな。いいよなぁー、元気でうっかりな天然娘とか最高だわー」


「さすがに盛りすぎだ馬鹿」


「なんだよぉ、いいだろボクっ娘。最高じゃねえか。今からでも遅くねえ、一人称にフィルターかけてお前をボクっ娘にしてやろうか?」


「おい馬鹿マジでやめろって」


 最初の重苦しい雰囲気はどこへやら、わいわいと楽しそうにはしゃぐ二人。


 前世の記憶や精神が男ということもあって、ティアマトはこういう萌えやらなんやらにはかなり寛容だ。

 自分から可愛いポーズやら演技やらをする事は滅多にないが、頼まれれば大体「仕方ないな」と引き受けてくれる彼女は、この研究所の筆頭変態である所長とはかなり仲がいい。二人の妹が嫉妬して所長を亡き者にしようと企む程度には。


「……なあ、所長。今まで、ありがとうな。それで、な。所長に言いたいことがあってな」


 所長とはしゃいでいたティアマトが突然真面目な表情で語りだし、所長は黙ってそれを聞く。


「俺は一定レベルを超す悲しみを感じない。感情自体はあるんだろうが、フィルター機能がかかってて感じなくなる。そりゃそうだ、仲間が死んで悲しくて戦えませんとかそんなことが起きたら駄目だしな。兵器失格だしな。当然だ」


 ティアマトが目を閉じ、数秒の間沈黙する。そして、言うべきことが固まったのか目を開き、所長の目を見て語る。


「だから、明日の別れも俺はたぶん、悲しくない。本当は駄目なのかもしれないけど、素の俺じゃその悲しみに耐えられないからありがたい機能だ。だからさ、俺は大丈夫だから、所長も気にしないでくれよ」


 ティアマトの台詞を聞き、所長が目を閉じ、何かを堪えるように震える。そして、そのまま口を開く。


「わかった。……未来でお前が楽しくやってることを祈るぜ、ティア。もう遅いから、オレは戻る」


 所長が椅子から立ち、部屋を出る。部屋の扉が閉じた後、ティアマトは椅子に座って呟く。


「ホント、何で封印なんか。心配しなくても逆らわないってのに」




 翌日。研究所の最下層、かつて会議室として使われていた大部屋にティアマトの姿はあった。

 机や椅子が撤去された部屋には大型の機械が何個か設置され、それぞれがパイプやコードで部屋の中央に縦向きに置かれている金属製のシリンダーと接続されている。


 作業員の指示に従い、ティアマトが金属製のシリンダーの中に入る。封印を行うため、彼女たちの特徴である魔法無効化機能も停止してある。


「武器は持ったな? 時間凍結による封印だ、目覚めたらガルムが滅んでましたーってこともありえるかもしれないからな。ちゃんと持ってけよ」


 作業員の指示に頷くティアマト。自分の背中に背負った黒い剣を見せ付けるように体を捻り、次に太腿のレーザーブレードを指差す。それを見て作業員も頷く。


 ティアマトに施される封印は時間凍結による封印であり、一度封印されたら中からはどうしようもない代物だ。


 流石に時間を止められてしまえば、魔法無効化機能で強引に封印を破ることもできない。

 逆に、時間経過でボディ等が劣化することはないというメリットもあるが、出られないのなら意味はない。


 シリンダーの扉が閉じ、その内部が暗闇に包まれる。暗闇の中、ティアマトは目を閉じて決意を固める。


 いつか。いつか封印が解けたら、妹たちと皆で過ごそう。みんなで、仲良く、永遠に。

文章力欲しいなあ

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