表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
喜怒哀楽  作者: クレヨン
41/146

一丁目一番地 叙情詩 赤

 少し小説風です。


 いや、小説かも

 この町にまた来るなんて

 この町を逃げ出したのは

 何十年前か

 ここは俺の想いが残る

 小さな町


 ここで俺は、惚れて好きを派手に演じ

 心を一つにした

 想いが伝わり、想いを伝え、永遠を誓ったのは確か一丁目一番地だった

 

 愛 


 それを誓ったのだ

 なんだか大袈裟な言葉だ

 愛は永遠の魔法

 そう思ったのは若い時間

 必ず幸せが待っている

 しかし実際は

 少しずつ体の距離は近づいたが

 心の距離は離れていく

 しかし子供が出来て

 育んで

 これはこれで良いのかも

 なんて心に蓋をした

 

 時間は流れ

 子供が育ってくると

 心の距離は

 ますます広がり

 蓋ができなくなった

 

 終わらせよう


 紙には俺の名前と……

 紙切れに俺の滅びの魔法を書き入れた

 カネという命を置いていったのは

 俺が不器用だったから

 

 しかし俺は出来損ないだった

 再びぬくもりを求め……


 あいたい


 そんな文字が手紙にあった

 そんな気はなかった

 風の噂を耳にするまでは

 

 一丁目一番地


 そこには小さな家があり

 青い屋根が

 今でも鮮やかだった

 

 家には子供が入れてくれた

 どこか棘のある態度に

 時間の流れを感じた

 薔薇のように美しく

 凛とした子供らは

 棘があって当然だ

 そしてその棘が

 俺に向いているのも

 間違いではない

 いや、当然なのだ


 部屋の一室に

 あいつがいた

 椅子に座り

 姿勢を伸ばして

 簡素ではあるが

 美しい身なりをしている

 しかし顔つき、顔色に

 言葉がなかった

 健康的で弾けるような

 あいつのオーラが

 そこにはなかった

 老いたから

 それもある

 しかし理由は、それではない

 

 陸に上がる時間が近い  

 私は確信した

 風の噂は事実だった

 

 人間は時間と言う

 大河かわの流れに身を任せている

 そこで人間は、自分の物語を

 創っている

 しかし大河かわには、いつまでも

 入っていることはできない

 いずれ陸に上がらないと

 いけないのだ

 

 陸には時間はながれていない

 つまり陸とは

 

 死


 人間はある意味魚である

 

 しばらくあいつと無言でいた

 話すことはない

 話たくない

 そして話せる訳がない

 ふと、あいつの口元が緩む


 ごめんなさい


 その言葉にあいつの瞳から

 涙がおちた

 そして俺も、涙をおとした

 謝らないといけないのは

 おそらく俺だった

 顔が上がらなかった


 あいつの顔が見えない

 いや見えないのではなかった

 見たくなかった

 怖かった

 情けなかった

 しかし後悔していない

 自分に悔しかったからだ


 そう……後悔はない

 しかし涙は熱かった

 

 


 

 

 

 


 

 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ