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弱い神
母が泣いていた
父の痴呆が酷くなった
そう泣いていた
父は世辞にもいい父ではない
短気で自分勝手で我が儘で
だけど俺のために一生懸命だった
今があるのも
父があってこそ
その父がおかしくなった
日に日にわかるようになり
気づいた時は
俺が知る
父
それではなかった
弱い瞳に辿々しい足並み
いつからこんなに老いたのか
母は泣く
俺は何も声をかけられず
見ているだけの小心者
俺にとって
両親は神様
何故なら俺をこの世に産んでくれた
仏像、偶像、偉大な神
そんなのは知らない
両親こそが俺を創った
母の背中は小さかった
俺の神様は弱々しかった