閑話:モカの1日
「モカ、モカ。そろそろ起きなさい。」
「ふぁ~。おはようなのですよ。お父さん。」
「はい、おはよう。早く顔を洗って目を覚ましておいで。」
「わかったのですよ。」
時計を見る。時間は5時ちょうど。いつも通りの朝だ。まだぼーっとした頭のままもぞもぞと着替えをして食堂の奥の洗面所に向かう。
「おはよう、モカちゃん。早起きして偉いね。」
部屋を出て廊下を歩いているとお客さんと出会った。
「おはようございますですよ。タイチさん。」
タイチさんは杖を持ってバイシクルを引いて部屋から出てきたみたいだ。いつも通り庭で訓練をするつもりだろう。こんな時間に起きてくるお客さんはタイチさんだけだ。
タイチさんがしげしげと見つめてくる。何か用事なのかな。
「モカちゃん。たぶん服が裏表反対だと思うから後で確認してね。」
そう言ってタイチさんは庭に向かって行った。ペタペタと自分の服をさわってみる。縫い目が見えているし確かに裏表が逆みたいだ。教えてくれたタイチさんには朝食を一品追加しようと回らない頭で考えながら洗面所へ向かう。
顔を洗い意識がはっきりしてくるにつれて、自分がしてしまった失態に気がつき恥ずかしくなる。どうしようと食堂であわあわしているとお父さんがやってきた。お父さんに相談すると、あとでありがとうってお礼を言えばいいと思うよとアドバイスをくれた。善は急げと言うから早速庭に向かおう。
後ろでお父さんが何か言っていた気がするが後で聞けばいいや。
「タイチさーん。教えてくれてありがとうなのですよ。」
「どういたしまして。他のお客さんが寝ているから静かにね。」
棒を振り回していたタイチさんが動きを止めてこちらを振り向く。慌てて口を手で押さえて声が出ないようにする。また失敗しちゃった。なんでこんなに失敗が多いんだろう。
なんとなくすぐに戻る気が起きなかったのでそのままタイチさんの訓練を見ることにした。
タイチさんはゆっくりとスライムが動くような速さで棒を振っている。遊んでいるのかなと思ったけど目は真剣で汗が全身から噴き出している。なかなか大変そうだ。タイチさんは飽きることなく同じ動きを何度もしている。なんでなんだろう?
「どうしてそんなにゆっくり同じことを繰り返すのです?」
「ゆっくり動くことで基礎を確認して、繰り返すことで体に覚えこませるんだ。私はまだまだ弱いからね。」
動きを続けながらタイチさんが教えてくれる。ヒナお姉ちゃんはタイチさんの事を強いって言っていたけどそんなことはないのかな?
「モカちゃん、お父さんが来てるよ。」
振り返るとお父さんがこっちへ向かってきていた。タイチさんは後ろを向いていたはずなのにまるで後ろに目があるみたい。しまった、お手伝いするのを忘れてた。
「じゃあ失礼しますですよ。」
挨拶をしてお父さんの元へ走る。まずは朝食の準備からだ。頑張ろう。
食事の準備を終えて6時半ごろを過ぎるとお客さんが起きてくるので食事を運んだり、スープをよそったりする忙しい時間になる。お客さんは長い間泊まっている人が多いから元気がなかったりしたらすぐにわかる。そういう時はお父さんに言うと特製の料理に変更したりするのでお客さんと話すのも私の大事な仕事だ。
7時半ごろになってほとんどのお客さんの食事が終わるころにヒナお姉ちゃんが起きてくる。
「モカ、おはようニャ~。」
「ヒナお姉ちゃん、相変わらず眠そうなのですよ。」
「朝は眠たいものニャ。モカはいつも早く起きて偉いニャ。」
「お仕事なのですよ。」
ヒナお姉ちゃんに褒められて嬉しかったので手を腰にあてて仕事が出来ますアピールをしておく。そうするといつもヒナお姉ちゃんは頭を撫でてくれるから大好き。
「食事を持ってくるのですよ。」
厨房へ行き、お姉ちゃんの分の食事を用意する。訓練を終えたタイチさんも合流したみたいなので2人分の食事を運んでいく。ちょっと前までは1人ずつしか運べなかったが練習して2人分を運べるようになった。ちょっと手がプルプルするけど大丈夫。
「お待たせなのですよ。」
「ありがとうニャ。」
「ありがとう。」
無事に食事を運んで他のお客さんが食べ終えた食器を片づけたり、机を拭いたりする。お客さんにはきれいな食堂を使ってほしいからしっかり掃除をする。
最近、タイチさんとお姉ちゃんは一緒に迷宮へ行っているらしい。一緒に出掛けて一緒に帰ってくることが多いので付き合っているのかなと思って聞いてみたけど2人とも違うって言っていた。相棒かなって2人とも言っていたけど照れ隠ししているんだと思う。
お客さんの食事が終わると残った食事をお父さんと食べる。使うのは最近お気に入りのスプーンとフォーク。タイチさんにお願いして看板の絵と私の名前が彫ってある自分だけのものだ。
ヒナお姉ちゃんはタイチさんはお人好しでいろいろできて便利だからいっぱいお願いするといいニャって言ってたけど何かお礼をしたいな。今度お父さんに相談してみよう。
食事が終わると、お客さんが出かけている間にベッドのシーツを取り替えて洗濯したり、部屋の掃除をしたりする。お父さんは仕入れや宿代の計算、備品の点検などをするから難しい顔をしていることが多い。お金に困ってはいないが余裕があるわけではないのだ。
昼はお客さんの食事は作らないのでお父さんと一緒にご飯を食べて、その後少しお昼寝をする。この時間が一番好き。お父さんは本を読んでいるので膝枕してもらって寝ると幸せなんだ。
昼寝が終わると、読み書きと計算の勉強をお父さんに教えてもらう。庶民が通うような学校はこの街には無い。勉強を教えてくれる教室もあるけど高くて通えない。でも宿をお手伝いするには絶対に必要だからお父さんに教えてもらって一生懸命勉強するんだ。でも一度でいいから学校に通ってみたいな。前に商人さんが話してくれた王都の学園生活は楽しそうだった。
洗濯物を取り込んで片付けると夕食の準備が始まる。今はちょっとずつお父さんに料理を教えてもらっているがとても難しい。お客さんのことを思って作ることが一番大切だよって教えてもらったので皆のことを考えながら野菜の皮をむいていく。最近は1週間に1回くらいしか怪我をしなくなったからうまくなっているはず。
お客さんの食事が終わるとお父さんとご飯を食べて厨房を片付けて部屋に戻る。今日の勉強の復習をしたあとベッドに入る。
明日も晴れるといいな。
子供の話なので地の文もだいぶおかしくなってます。
読みにくかったらすみません。
読んでくださってありがとうございます。




