散策
明日から投稿時間を変更します。
18時前後の予定です。なので今までのお礼も込めて今日は二話投稿します。
「なんだい、この魔石の数は!!」
周回を翌日も行ってさらに300個の魔石と素材を回収し、1週間ぶりの地上へ戻りギルドでミアさんに魔石を提出したらちょっとした騒動になった。ギルドにいた冒険者もこちらを見ながらちょっとざわざわしている。目立ちたくないんだが。
「ミアおばさん、うるさいニャ。」
「ああ、悪かったね。それはそうとこの数はどういう事だい?まさか2人で倒したって言うのかい?」
「そうですね。この数だと買い取りは無理でしたか?」
目の前の袋には魔石が700個くらい入っているはずだ。供給過多になって魔石の買い取り価格が下がって他の冒険者の恨みを買うのもまずい。
「いや、魔石は常に需要があるから大丈夫だよ。問題は他の素材さ。どのくらいあるんだい?」
「ゴブリンナイトの剣とゴブリンメイジの杖が300くらいだニャ。」
「さすがにそれだけは買い取れないね。全部買い取るとしたら一本当たりの単価が安くなるね。」
「どうする?ちょっとずつ売っていく?」
「それでいいかニャ?」
「こちらとしてもそうしてくれるとありがたいね。」
「ではそんな感じでお願いします。」
「わかったよ。これだけの数を清算するには時間がかかる。明日の昼頃でもいいかい?」
「かまいません。」
「じゃあ帰るニャ。」
「失礼します。」
ミアさんに後を任せてギルドを出る。久しぶりに宿の自分の部屋に帰って眠ることが出来るので楽しみだ。
「ヒナはこれから3日の休息時間は何か予定あるの?」
「うーん、ゆっくり休んであとは買い物とか食べ物を食べたりとか気晴らしするニャ。タイチはどうするニャ?」
「治療院で薬の作成と手伝いをして、ネロさんの研究で何かすることがあれば手伝って、あとは自分の研究と買い物と読書かな。」
「なんか手伝ってばっかりで忙しそうニャ。」
「まあ、自分にも利益があるからね。」
(タイチ、僕に乗るのを忘れてるからね!!)
「ああそうだった。1日はルージュに乗る日だね。」
「さらに忙しそうニャ。」
そんなことは無いよ。たぶん。
翌朝、訓練がてら街の外でスライムを狩り、朝食を食べ、簡単にすむ用事から済ますことにした。マジックバッグを買うことにしたのだ。アイテムボックスの容量も増えているし、特に不便はしていないのだがこれからLvアップのために周回するならもっと剣や杖が溜まるだろうし、あまり使わないものなどをマジックバッグに入れておけば不審に思われたときの言い訳になりそうだからだ。ヒナに場所は聞いてあるので迷うことは無い。
迷宮に入る冒険者を相手にしているからかメルリスの店の開店時間は早い。具体的には冒険者関係の店や飲食店は朝7時ごろには開いている店が多い。魔道具屋もその例に漏れず既に開店していた。数人の冒険者や一般市民が店内を物色している。
「おはようございます。マジックバッグが欲しいのですが?」
カウンターに座っている老人に話しかける。老人は読んでいた本からこちらに目線を移すと一言、
「あっちだ。」
と言って指さし、また本を読み始めてしまった。こんな商売をしていて大丈夫かと思うが、まあ商品さえ手に入れば問題は無い。この店の経営方針に対して何か言う立場でもないしな。
マジックバッグが並んだ棚を見る。値段は大銀貨3枚程度から金貨数枚まで幅広い。袋の素材と術者の実力で中に入る量が変わるらしいので仕方がない。各バックのデザインもいろいろでリュックのようなものから女性が持つポーチのようなものまで様々だ。それぞれのバッグにどれくらい入るのか目安が書かれているだが、外見と内容量は一致しないようだ。
さあ、どうしようかな。あまり安いものを買っても意味が無いし、逆に高いものを買ってもアイテムボックスがあるから無駄になる。仕方がない。容量が中くらいのものの中でデザインの好きなものを選ぶか。
金貨1枚程度のバッグを見ていく。どれも無難なデザインで決め手に欠ける。まあこの店にあるのはほとんどが冒険者用だから傾向が似るよな。まあどれでもいいかと半ばあきらめかけていたころ棚と棚の隙間に落ちているに変なものを見つけた。三角形の旗のようなバッグだ。
「なんだ、これ?」
バッグを持ち上げる。うわっ、埃まみれだ。ちゃんと掃除してくれ、おじいさん。
金貨1枚と値札が付いており、容量も同じ価格帯の今まで見たバッグの1.3倍くらい入る。お得な商品だと思うんだがなぜこんなに安いんだろう。普通なら値段は2倍するはずだ。
「すみません、これって売り物ですか?」
「そうだ。」
「棚と棚の隙間に埃をかぶって落ちていたんですが機能に問題は無いですかね?」
「ちょっと待っておれ。」
おじいさんがバッグを持ってカウンターの奥へ消えていく。待っている間、他のお客の様子を見るが、なかなか迷っているようだ。魔道具は高いから仕方がないか。
それにしても商品がいろいろある。薪に火をつける小さな杖から冷蔵庫と同じ機能の箱、ファイヤーボールが撃てる杖まである。ファイヤーボールの撃てる杖は武器屋にあるものなんじゃないのか?いまいちこの店のラインナップが読めない。
そうこう観察しているうちに確認が終わったようだ。おじいさんがこちらに戻ってきた。バッグもきれいになっている。
「機能に問題は無い。」
「じゃあ買います。」
特にどれでもよかったのだ。たまたま見つけたのも運命だろう。機能もいいし。
「大銀貨8枚でいい。」
「えっ、いいんですか?」
「盗まれたと思っておったし、売れ残りだ。」
「機能的にはお買い得だと思うんですがね。ありがとうございます。」
金貨1枚払い、お釣りの大銀貨2枚をもらって店を出る。お得に買えたのでちょっとほくほく顔だ。
(おかえりー。いいものあった?)
(お買い得商品を見つけたよ。ほらこれっ。)
(なんか運動会の時の旗みたいなデザインだね。)
(ああ、でもルージュのトライアングルバッグにぴったりじゃない?)
(確かにね。)
トライアングルバッグなら走りながらでも使えるから便利だ。あっ、でも変形した場合はどうなるんだろうな。また今度確認してみよう。
(次は金物屋でプレートの大量買いだね。)
(りょーかーい。)
金物屋にあった鉄板のプレートを買い占めた。この前に買い占めたからか30枚入荷されていたので次来るときはもっと増えているかもしれないな。購入をやめるときには事前に伝えておこう。
買い物も終わったし、実験でもするかなと考えながら歩いていると後ろから声をかけられた。
「よお、タイチ。」
「おはよう、ヨルム。」
振り返ると鎧ではなく普通の市民のような恰好をしたヨルムが立っていた。
「今日は休み?」
「ああ、昨日まで探索していたからな。これから2日は休みだ。」
「朝ご飯はまだ?まだなら約束の食事でもおごろうか?」
「おっ、本当にいいのか。じゃあ行きつけの店があるから行こうぜ。」
ヨルムの案内で連れて行かれた店は大通りから一本外れた場所にある、落ち着いた雰囲気の店だ。年配の夫婦が経営しているらしくなんとなく個人経営の隠れたカフェのような感じがする。
「マスター、いつものね。」
「じゃあ、私も同じので。」
常連の注文なら間違いはないだろう。マスターと呼ばれた男性がうなずき調理に入ったのを見ながら席に着く。席は7割ほど埋まっており、冒険者が来ると言うよりは地域の人の交流場のようだ。
「あの時はありがとう。」
「いや、俺の方こそ面白いものを見せてもらったよ。」
ヨルムと会話しながら運ばれてきたサンドイッチと紅茶、サラダを食べる。サンドイッチは肉や卵、野菜などいろいろ挟まれていてボリュームがあり、しかもおいしい。マタリさんといい勝負だ。2食目じゃなければもっとおいしかっただろう。
「そういえばタイチはまだ単独で探索しているのか?」
「いや、今はヒナって言う猫人族の冒険者と一緒に探索しているよ。」
「ああ、ヒナか。」
「あれっ、知り合い?」
「まあまあ有名人だしな。パーティを組まないって噂だったが違ったようだな。」
「まあ、成り行きでパーティを組むことになってね。」
「そうか、まだ単独だったらタイチをうちに誘うつもりだったが残念だな。」
「機会があればよろしく。」
「そうだな。」
食事を食べ終え代金を払い店を出る。二人で銅貨8枚、すごく安い。
「おごってもらって悪かったな。」
「いや、私の方こそいい店を教えてもらって良かったよ。」
ヨルムと別れ、宿へ向かう。お腹も膨れたし、実験の開始だ。
〈自転車豆知識〉
トライアングルバッグ
自転車のフレームに取り付ける三角形のバッグ。
あまり一般的ではない。長時間走る時にあると便利だか物によっては走る時に足に当たって邪魔になるので注意。
ふと入ったお店がおいしかったりすると嬉しくなります。
逆に入念に下調べしたお店がおいしくなかったりして人の味覚は難しいです。
読んでくださってありがとうございます。




