誰かからの襲撃
今日で初投稿から2か月経過しました。
ブックマークしていただき70件を超えました。
本当にありがとうございます。
「じゃあ今日は18階層の残りと19階層のマップを埋めて帰るのが目標ニャ。」
「了解、じゃあ挨拶をしてから出て行こうか。」
「わかったニャ。」
昨日寝る前にすべての部屋をクリーンできれいにしておいたので埃が舞う事もない。寝室へ行きベッドの上で横たわる主に向かって頭を下げる。
「すみませんがいろいろともらっていきます。もし機会があればいつか返しに来ます。」
「泊めてもらってありがとうニャ。静かに眠ってほしいニャ。」
(それじゃあねー。)
当然返事は無いのだが自分たちの中のけじめだ。もし将来旅を終えて帰ってくることがあればお参りついでにここまで来よう。
部屋を出て、来た道を戻る。もしかしたらゴブリンジェネラル達が復活しているんじゃないかと思ったのだがそんなことは無かった。隠し扉の場所まで戻ると刺しておいた剣はすでになく壁も元に戻ってしまっていた。
「どうするニャ?」
「あぁ、ちょっと待ってね。たぶんこの辺に・・・。」
一応マップで外に誰もいないことを確認し、扉の横についているボタンを押す。しばらくして壁がこちらに少し向かってくると横にスライドし始めた。
「ずいぶんと簡単ニャ。」
「一応入るときに魔力の流れが一点に収束していたからスイッチがあるだろうとは思ってたんだ。まあ万が一を考えて刺しておいた剣はあっさりと無くなったけどね。」
(内側から開けるのに複雑にしても仕方ないしね。)
「確かにニャ。」
18階層の残りを埋める。地上からくる時間が無い分、探索に使える時間が多くなるので効率的だ。しばらく歩くとコボルト達の群れと遭遇した。ヒナが新しい剣を試してみたいと言ったので私は見ておくことにする。
ヒナがコボルトリーダーに向かって走る。それを防ぐようにコボルト達が3匹同時に迎え撃とうとナイフを構え、そしてナイフが突きだされた。しかしその直前に体を半分ひねったヒナに簡単に避けられ、そのまま首をコロコロされる。コボルト達をすり抜けそのままその先にいるコボルトリーダーの首も跳ね飛ばすと何事もなかったかのように帰ってきた。
「やっぱりいい剣ニャ。」
「そうなんだ、あんまり違いが判らなかったけど。」
「剣の通りがコンマ1秒以下だけど違うニャ。なんというか今まで抵抗のあった骨とかをスッパリと切れる感じニャ。」
(へぇー、それってすごいの?)
「そうニャ。剣士ともなるとコンマ1秒以下の差で勝負が決まることがざらにあるニャ。この剣があれば私はさらに強くなれるニャ。」
ヒナは布で拭って汚れを落とすとマジックバックにその剣をしまい込む。手に剣を持ったまま探索するのは疲れるし非効率だからな。盗賊と間違われるかもしれないし。感触が良かったのかとても上機嫌だ。今でさえかなり強いのにさらに強くなるつもりなのか。どこを目指しているんだろうな。
コボルトリーダー達を蹴散らせつつ18階層、19階層の探索を続ける。昨日の戦いを考えると本当に雑魚としか言いようが無い。パーティメンバーでマップを共有できるとかだったら二手に分かれて時間短縮できるんだがな。
仕方が無いので今は杖での戦闘を訓練中だ。突き、払い、打ち倒す。現在の集中部位はヒナを見習って首と頭だ。流れを意識して攻撃していく。レベルが上がっていることもあり以前の訓練時とは比較にならない威力と速度だ。しかし技術の面では基礎がものを言うので訓練を欠かさないようにせねば。
19階層の探索もほぼ終わり、最後にギルドの宿へ寄っていくことにした。ヒナ曰く、何か異常があったときに情報が集まるのでここまで来たら必ず寄った方がいいそうだ。
「こんにちは。」
「あぁ、数日ぶりだな。タイチさん、ヒナさん。」
入り口で見張りをしていたのは相変わらずあのギルドのおっちゃんだった。
「この宿にいつもいるんですか?」
「いや、4チームで一週間交代で地上へ戻るんだ。ここには常時3チームがいる。その地上を往復するときに物資を補給するのさ。」
「まあここには何もないからずっといたら気が狂うニャ。」
「わっはっはっ、確かにな。」
おっちゃんが豪快に笑う。メリルの時は泣きそうな顔だったのに変われば変わるもんだ。
「なにか変わった情報はあるかニャ?」
「あぁ、特に変わったものは・・・いや、数日前に魔物の死骸が魔石もとられず放置されるって言う報告があったな。後は走り去る影の魔物の噂とか。まあ噂だしそこまで気にすることじゃないだろう。」
「・・・。わかりました。ありがとうございます。」
噂の原因のおそらくほとんどが私な気がして若干気まずいが、まあ人の命を救ったんだから気にしないでおこう。だって何も悪いことはしていないし。
おっちゃんにまた来ると伝え19階層のマッピングに戻る。ほどなく19階層までのすべてのマッピングが終了した。
現在は12階層。ルージュに2人乗りしながら帰る途中だ。そう、後は帰るだけなのだが。
「ねえヒナ。なんか攻撃を受けてるけど心当たりある?」
「私は品行方正に生きているからそんなことは無いニャ。」
「うーん、私も無いんだけどな。正面から攻撃魔法と弓を放ってきたから盗賊じゃないような気がするし。相手の顔を見た?4人組だったよね。」
「それぞれ槍と弓を持った男が2人と杖を持った女が1人、一番後ろの奴は隠れて見えなかったニャ。」
「とりあえず遠距離攻撃してくる奴をしびれさせて無効化させようか。」
「そうだニャ。あとの二人はとりあえず骨でも折っておくニャ。」
ヒナとのんびりと作戦会議をする。ファイヤーボールを打ってきているのだが威力も弱く、弓の速度も遅い。私たちよりもかなり実力が下の奴らだ。まあこれが罠と言う事も考えられるので慎重に行かなければいけないが。
攻撃は散発的でこちらをこの攻撃で倒そうとしているとは思えない。まあ気を引こうとしているのだろう。その間に近接系の仲間が裏に回り込むつもりらしい。まあつもりらしいというのはマップでその様子がわかってしまうからだ。
「じゃあヒナはしばらくしたらそこの角から出てくる2人の腕でも折っておいて。私はちょっと黙らせて来る。」
「いってらっしゃいニャ。」
気楽な感じでヒナに手を振られ、散歩に出かけるような気やすさで歩き出す。たぶん相手は効率よく打っているつもりだろうが効率が良いと言う事は規則的と言う事だ。攻撃のやむ瞬間など簡単にわかる。
「よいしょっと。」
身も隠さずに攻撃をしていた女と男を目がけて、しびれ薬つきのダートを投擲する。狙い通り太ももに突き刺さりドサッと2人が倒れる。やっぱり昨日のあいつらは強かったんだな。少し慎重に近づき、しっかり薬が効いていることを確認するとそれぞれの足を持って引きずりながらヒナのところへ戻る。顔を確認したが記憶には無い。うーうーとうなっているが、しびれているため聞き取ることが出来ない。まあヒナの方に期待だな。
元の場所に戻るとすでにあちらも戦闘が終了しており、1人は腕を折られたうえで気絶させられ、1人は腕を折られ腹這いにさせられ背中を足で踏まれて動けなくされていた。
コンマ1秒以下は短いようですが意外と大きい違いです。
距離にすれば数センチになりますから。
読んでくださってありがとうございます。




