帰還
昨日は記念投稿で二話投稿しています。ご注意ください。
ブックマークしていただきありがとうございます。
「それじゃあ帰るかニャ。」
「そうだね。」
「よろしくお願いします。」
1日休んで私もヒナも体調は万全になったし、メリルも回復魔法を使ったかいもあってかだいぶ体力が戻っており、相談の結果予定通り今日帰ることに決めた。
隊列は私、メリル、ヒナの順番だ。一番危険性が少なく、不意の出来事にも柔軟に対応が出来る。メリルのことを信用していないわけではないが、戦闘能力がどれくらいか不明なため今回についてはサポートに回ってもらうつもりだ。
「そういえばヒナはコボルトリーダーをどう倒してきたの?」
「襲ってくる部下のコボルトを一匹ずつ倒して、最後に残ったコボルトリーダーを倒すニャ。というか向かってきた順番に倒していくニャ。」
「ええっ!?」
「うーん、効率が悪くない?」
「じゃあタイチはどうやって来たニャ?」
「バイシクルに乗りながら土魔法でコボルトリーダーを倒して、コボルトが動揺している間に逃げてきた。」
「ええっ!?」
「それじゃあ魔石とか剣とか取れないニャ。もったいないニャ。」
「それもそうだね。行きは最速で到着することが第一だったけれどせっかく倒したんだし回収はしないとね。」
「それじゃあ・・・」
「ちょっと待ってください!!」
今後の方針をヒナと詰めようとしたらメリルに邪魔をされた。なぜか必死な表情だがどうかしたのか?
「「どうした」ニャ?」
その剣幕に思わすヒナとはもる。
「どうしたじゃないですよ。なんですかその非常識な倒し方は!!」
「いや、非常識と言われてもニャ。」
「逆に普通はどうやって倒すの?」
「通常は前衛がコボルト達を抑えつつ、後衛が魔法や弓矢で数を減らしていくのが定石です。囲まれるのが1番まずいですから。」
「そのまま倒した方が早いニャ。」
「リーダーが狙える位置にいるんだから、リーダーを潰せば指揮系統が崩れて倒しやすくなるんじゃない?」
「それがおかしいんです。ヒナさんは6級ですし、そんなことも出来るのかなと思わなくもないですが、タイチさんは8級ですよね。コボルトリーダーは速いから魔法を的確に当てるのは難しいはずですよ。」
「一応この依頼が終わったら7級になるらしいけど。」
「そんなことはどうでもいいんです。」
ひどい。なんかバッサリと切り捨てられた。昨日の印象だとおとなしいイメージだったんだがびっくりすると素が出るんだろうか。
「まあ、昨日は非常事態だったし今日は戦い方を変えるつもりだよ。自分のメインの武器は魔法じゃなくてこっちだし。」
腰のダートホルダーをポンポンと叩きながら先へ進む。
「あっ、ちょうどいいね。この先にコボルトリーダーとコボルト3匹の群れがいる。とりあえずヒナはコボルトを足止めしてくれる?こっちはコボルトリーダーがどれくらい反応するか確認してみる。」
「わかったニャ。」
「えっ、どうしてわかるんですか?」
「タイチの便利機能の一部ニャ。」
「ええっ!!」
そんな電化製品みたいな扱いはしないでくれ。そしてそこもそんな機能が!!みたいな目で見ない。普通にマップさんのおかげだ。
「それで私はどうしたら?」
「うーん、とりあえず無いとは思うけどヒナが危なくなったらフォローしてほしい。」
「わかったわ。」
杖を持つ手に力をこめるメリル。そんなに緊張しなくてもいいのに。倒せることは既にわかっているんだから、今回の戦闘はただの検証だ。
確かにこの迷宮の今までの魔物の中では飛びぬけて厄介だが苦戦する相手ではない。モンスターハウスのように大量に遭遇でもしない限りは1人でも対処可能だろう。
「そこの角を曲がれば目視できると思うけど距離があるから奇襲は無理だね。」
「じゃあ近づくのも面倒くさいから迎え撃つかニャ。」
「はい、頑張ります。」
「別に頑張らなくてもいいと思うけどね。」
そんなことを話しながら角を曲がる。すぐにコボルトリーダー達がこちらに気づいて走ってやってくる。3匹のコボルトで足止めしてとどめをリーダーが刺すためだろう、フォークのような陣形でやってくる。
「ヒナ、左右を遅らせる。正面の1匹の相手を優先して。」
「了解ニャ。」
ヒナが正面を相手取るように動いたのを確認して左右のコボルトの足を狙ってダートを6割程度の速さで投擲する。全力ならば一撃で倒せるがどうしても次の攻撃までにロスが多くなってしまう。6割程度なら本命のリーダーへの攻撃へスムーズに移れる。
キャンと言う悲鳴とともに足にダートの刺さった左右のコボルトが後れを取る。リーダーはその様子を一瞥しただけでそのまま突っ込んでくる。コボルトなどリーダーにとっては捨て駒当然と言う事か。
ダートを取り出し全力でリーダーの目を狙って投擲する。フォンっという腕を振る音とともに投擲されたダートがリーダーの目に普通に突き刺さり、その勢いのままリーダーが後ろへ吹っ飛ぶ。一言も発さないままコボルトリーダーは物言わぬ骸になった。
「あー、またこのパターンか。」
リーダーが倒されたことに気づいた先頭のコボルトが後ろを振り向いたがそれは致命的な隙だ。次の瞬間そのコボルトの首は胴体と離れ離れになった。
そのままヒナが右のコボルトを倒しに行ったので左のコボルトのところへ行き杖でのどを潰し倒す。足を怪我して動きの鈍ったコボルトなどただの的だ。
「ヒナ、コボルトリーダーってまた防御力は低い感じ?」
「ボブゴブリンやゴブリンナイトに比べればかなり低いニャ。そのぶん反応速度や移動速度が速くて攻撃が当たりにくいニャ。」
「まあ確かにバイシクルから投げたダートは弾こうとしていたしな。普通に投擲したダートはまだまだ反応できないみたいだけど。」
「魔法だとそこまで速度が出ないから苦戦するニャ。」
「うーん、そうすると6から9階層までの感じで進めばいいか。杖の訓練には多少使えそうな気がするけれど。」
「まあそれはまた今度来た時にするニャ。早めに帰った方が父親も安心するしニャ。」
「そうだね。」
そうだよな。父親からすれば情報が全く入ってこないから、1日も早く元気になった姿を見せて安心させてあげないと。まあこの階層にはこれから何度も来る予定だからその時に訓練すればいいか。
それにしてもそのメリルがさっきからずっと静かだな。
「・・・。」
「おーい、メリル?」
「どうしたニャ、メリル。早く帰ってくるニャ。」
ヒナがメリルのほおをペチペチと叩いている。あんまり効いていないみたいだな。
「ヒナ、使う?」
「助かるニャ。」
水でも飲ませれば正気に戻るだろうと思い、水の入った袋を取り出して渡してやる。ヒナはそのふたを外すとそれを口ではなく頭から振りかけ始めた。
「うわぁ、なにするんですか!!」
「あっ、正気に戻ったニャ。」
「正気に戻ったじゃないです。なんで水をかけるんですか。」
「ぼーっとして動かないからかけてみたニャ。」
「はぁ、まあいいです。それよりもなんですかあの武器は?コボルトリーダーが吹っ飛びましたよ。」
「えっ、普通のダートだよ。魔法で作った特製の奴だけど。」
「ただダートを投げただけでは吹っ飛びません!!」
「あぁ、目を狙ってるから。一瞬で意識を刈り取るからその勢いのまま後ろに行くんだよね。」
「タイチの便利機能その2ニャ。」
ヒナさん、その言い方ブームなんですね。
「そうなんですか。もうそういうもんだと思っておきます。いちいち驚いていたら疲れてしまいますし。」
「それがいいニャ。」
なぜか私が悪いみたいな流れになっているが私には責任は無いよな。なんでこうなった。
その後はヒナと私で敵を殲滅しながら最短コースで迷宮を脱出した。メリルの休憩も含めて16時間ほどかかったがそれでも早い方だろう。朝の4時に出発したが今はもう夜で迷宮内より外の方が暗かった。
とりあえずギルドへ依頼達成の報告へ向かった。ミアさんはさすがにおらず、男性職員のところで依頼達成の報告をして報酬の大銀貨2枚を受け取った。いよいよこの臨時パーティも終わりだ。
「タイチさん、ヒナさん。お二方が居なければこうやって帰ってくることは出来なかったでしょう。本当にありがとうございました。」
「別にいいニャ。」
「そうですよ。それに今はお父さんに元気な姿を見せてあげてください。心配しているでしょうし。きっと早くてびっくりすると思いますよ。」
「ふふっ、そうですね。それでは失礼します。困ったことがあったら連絡してください。あまり力にはなれないかもしれませんが出来る限りのことはします。」
「それじゃあ、メリル。またニャ。」
「それでは、体に気をつけてくださいね。」
「それを今の私に言うのはどうかと思いますよ。」
メリルが苦笑しながらギルドを去っていく。その足取りは軽く、喜びに満ちているような気がした。
「それじゃあ私たちも帰るニャ。」
「そうだね。久しぶりのマタリさんの夕食が楽しみだよ。」
「今日は何だろうニャ?」
「3日前が肉料理だったから今日は魚系じゃない?」
「よし、タイチ。早く帰るニャ。」
心なしか早足になったヒナを追い、宿へ向かう。何にしろメリルの命を救えてよかった。日常へと戻っていくのを感じながら、改めてそう思った。
自分の常識が実は世間の非常識だったりします。
注意しないといけませんね。
読んでくださってありがとうございます。




