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RIN ~共に生きる異世界生活~  作者: ジルコ
第二章:メルリスの街にて
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タイムリミット

昨日は記念投稿で二話投稿しています。

ご注意下さい。

「助けてくれ!!」


 ドカっとギルドのドアが乱暴に開かれ、傷だらけの30代くらいの冒険者が飛び込んできた。受付で私たちの対応をしていたミアさんが慌てて駆け寄る。


「どうしたんだい?」

「18階層で毒矢の罠に仲間がかかったんだ。解毒薬が切れていて、19階層のギルドの宿まで何とか連れて行ってそこで買って急いで使ったんだが熱が下がらねぇんだ。このままじゃ死んじまう。助けてくれ!!」

「そうかい。じゃあすぐに依頼を出しな。緊急と言う事で即時の処理をしてやるよ。受けてくれそうなやつもいるしね。」

「すまない、恩に着る。」

「いいから早く手続きしな!!」


 傷だらけの冒険者が依頼窓口に急いで向かう。よく見れば頭から血を流しているしあの人もかなりの重症だ。1人で迷宮を19階層から戻ってきたのか。無茶をする。

 窓口でヒナと待っているとミアさんが戻ってきた。


「聞いていたね、あんたら。あんた達なら19階層まで誰よりも早く行けるだろう。同じ冒険者同士だしあいつの仲間っていうのはあいつの娘だ。助けてやりな。」

「私たちより強い冒険者ならもっと早くつけるんじゃないですか?まだ8級ですよ、私は。」

「あんたの移動速度は異常だよ。4日連続で毎日10階層以降の魔石や剣を持ち込むなんて6級以上の冒険者だってありえないことさ。あと今回の依頼を受ければ7級に昇格するからね。」


 おぉー、ついに7級か。特に上がってもメリットは無いけど7は縁起がいいから好きなんだよな。


「具体的にはどうすればいいんですか?」

「とりあえず毒に関することは治療院のセイナ先生に聞きな」

「?、セイナ先生?」

「治療院のばあさんの先生だよ。この迷宮都市で一番のヒーラーだ。」


 あぁ、おばあさん先生の事か。いつも先生としか呼んでなかったから名前を聞くのを忘れてた。そうかセイナっていうのか。


「とりあえず先生に聞いてきます。」

「ちょっと待ちな。」


 ミアさんが先ほどの冒険者が書いた依頼の内容を簡単にまとめて渡してくれる。普通は依頼書に書いていない依頼の原因となった出来事が書いてある。毒を受けてからの時間経過やどう対処したかなどがよくわかる。普段はギルドが依頼の正当性などを確認するために使っているのだろう。


「ありがとうございます。ちょっと行ってきます。」

「私はここで待ってるニャ。あの先生はちょっと苦手ニャ。」


 うん、癖が強いしね。慣れればいい人なんだけど。





「あらー、いらっしゃいー。こんな時間に来るなんてめずらしいですねー。」

「こんばんは、先生いますか?」

「いつものところで本を読んでると思うわー。」

「ありがとうございます。」


 部屋の扉を開くと先生が真剣な表情で医学書を読んでいた。


「すみません、先生。ちょっと相談があるんですが。」

「なんだい、ここで働く気にでもなったのかい?」

「いえ、そうではなくてこちらの件です。」


 ミアさんから渡された紙を先生に渡すと、目を落とし読み始めた。しだいに険しい表情になっていく。


「患者は19階層にいるんだね。」

「はい、そう聞いています。」

「じゃあ無理だね。患者の体力や耐性にもよるがここに書いてある通りならあと半日ほどで死んでしまうよ。助かったとしても障害が残るだろうね。解毒薬の処方が遅すぎる。末端まで回って蓄積してしまった毒を消すのには解毒薬単体ではなく治療魔法が必要なのさ。特に迷宮の罠の毒はね。」

「確実に助かる時間としてはどのくらいですか?」

「あと6時間と言ったところか。まさか行くのかい?」

「何とかなるかもしれませんので。」

「・・・。まあいいよ、詳しくは聞かない。じゃあちょっと待ってな。ロンソ!!ロンソちょっと来な!!」


 先生が大声で呼びかけると、ダンダンダンという不機嫌そうな足音が近づいてきた。


「うるせぇぞ、ババア。そんなに大声を出さなくても聞こえるわ!!んっ、タイチじゃねえか。ポーションでも作りに来たのか?って痛ってー、何しやがる。」


 ドアを蹴破るように開けてやってきたロンソさんの腕に先生が針を刺している。針に紫色の液体が付いているような気がするが大丈夫なのか?


「うわっ、毒じゃねえか。しかも厄介な神経毒系だと・・・。」


 ロンソさんの動きがぎこちなくなり、話せなくなっているみたいだ。これまずいやつなんじゃないのか?


「いいかいタイチ。よく見ておきな。「この者から毒を取り除き給え、アンチポイズン」」


 ロンソさんが光に包まれ、少しずつぎこちなさが消えていく。すごい効き目だな。


「毒を消すならこの魔法だ、覚えたね。」

「はい。」

「そしてどの毒に対して発動するか知識があると効果は増大する、回復魔法と同じようにね。そこに毒に関する本があるから持っていきな。貴重な本だから必ず返すんだよ。」

「わかりました。ありがとうございます。」

「話が進んでいるところ悪いんだがなんで俺は刺されたんだ?納得のいく説明をしろ。」

「あんたまだこんなとこにいたのかい。時間が無いんだ。汎用じゃなくて迷宮の罠用の毒消しを持ってきな。」

「ちっ、呼ばれて来てみりゃあ、毒針で刺されるわ、事情の説明もないわ散々だ。後で事情を説明してもらうからな、タイチ!!」

「なんで私なんですか!?」

「ババアに何を言っても無駄だからだ。」


 ロンソさんはきびすを返すと部屋から出て行ってしまった。なんかこの院のパワーバランスが垣間見えたな。

 本と専用の解毒薬を受け取り、代金を払おうとしたが後で依頼主に請求するからいらないと言われてしまった。勝手に買ってきてしまったが大丈夫だよな?

 そんなことを考えながらギルドへ急いで戻るとヒナとミアさんが窓口で待っていた。


「戻りました。とりあえず治療方法は聞いてきました。ただリミットは早ければ6時間、長くても半日までには行かないと厳しいそうです。」

「それは難しいニャ。」

「あんた達でも無理かい?」

「タイチ、2人乗りした場合、19階層まで何時間かかるニャ?」

「これまでの実績から考えると8時間くらいかな。16階層の魔物と戦ったことが無いからあくまで予想だけど。」

「助かる可能性はあるってことだね。じゃあ・・・」

「ちょっと待つニャ。もし1人で全速力で言った場合の予想はどのくらいニャ?」

「探索していない階層の最短ルートを通れると仮定して魔物を全部回避すれば4,5時間かな。」

「ミアおばさん。」

「わかってるよ。すぐ依頼人に確認してくる。奥で休んでるからね。」


 そう言い残してミアさんは去っていった。依頼人自身も疲労と怪我でギルドの救護室で休んでいるらしい。1人で行く可能性も考えて、未踏の15階層から19階層までの地図を窓口で購入する。


「16階層以降の新しい魔物は確かコボルトリーダーだったよね。」

「そうだニャ。まあその名のとおりの魔物ニャ。手下のコボルトを連れているから囲まれないように注意するニャ。」

「あとはこの地図とヒナの記憶を比較して間違っている場所ってある?」

「うーん、最短ルートではないニャ。ほかはちょこちょこ違うような気がするニャ。」

「じゃあ、今回については問題ないね。」

「そうだニャ。」


 今確認できるのはこれくらいだな。こうして待っている間にも時間は刻一刻と過ぎていく。重大な決断だが早く決めて欲しい。


「タイチ、仮にだけど・・・」

「んっ、なあに?」

「仮に助からなかったとしてもそれはタイチの責任じゃないニャ。それだけ覚えておいて欲しいニャ。」

「どうしたの?なんかヒナらしくない物言いだけど。」

「何でもないニャ。なんとなくニャ、なんとなく。」


 ヒナはごまかすように笑っていたが、その目は違う事を考えているように感じた。それについて聞かなければと思った時にちょうどミアさんが戻ってきた。


「タイチ、全速力で1人で行ってほしい。報酬は大銀貨2枚だ。」

「わかりました。」

「そしてヒナ、あんたも自分の足で出来るだけ早く向かってほしい。あんたなら半日くらいで着けるだろう?」

「やったことが無いからわからないニャ。」

「大丈夫だよ、あんたは保険だ。大銀貨1枚でなるべく早く19階層まで行っておくれ。」

「わかったニャ。指名依頼じゃないのに半分指名みたいなものだしニャ。ミアおばさん、この借りを返すということで今度とっておきを出してもらってもいいのかニャ?」

「わかったから行きな!!時間が無いんだ。頼んだよ。」


 とっておきが何かちょっと気になったが、時間が無い。ヒナは解毒薬をもらいに治療院へ向かうためギルドで別れ迷宮へ急ぐ。残り時間はあと6時間だ。

時間が迫っているときほど何か違うことがしたくなりませんか?

掃除とか自転車で走りに行ったりとか、現実逃避したくなります。

読んでくださりありがとうございます。

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RINの外伝の小説を書いています。次のリンクから読もうのページに行くことが出来ます。 「お仕事ですよ、メイド様!!」(飛びます) 少しでも気になった方は読んでみてください。
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