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RIN ~共に生きる異世界生活~  作者: ジルコ
第二章:メルリスの街にて
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魔道具研究者

ブックマーク50件を超えました。ありがとうございます。

せっかくストックを作ったのですがこれは記念投稿せずにはいられない。

と言うことで本日記念投稿で二話投稿予定です。二話目は早ければ12時ごろに遅くても18時には投稿します。

「わぁー、ありがとうなのですよ。かわいいのですよ。」


 翌朝、訓練を終え朝食を食べに行くついでにレーザー彫刻したカトラリー類をモカちゃんに手渡した。嬉しそうにスプーンとフォークを持ってくるくると回るモカちゃんは見ていて微笑ましい。猫好きはしっかりと親から子へ受け継がれているようだ。


「ふわぁぁー。おはようニャ。」

「おはようですよ、ヒナお姉ちゃん。」

「おはよう。こんな時間に食堂に来るなんて珍しいね。」

「ネロの部屋がうるさくて寝ていられないニャ。」

「すぐ注意してくるのですよ!!」


 言うが早いか2階に向けて走って行ってしまった。その走る音の方がうるさいかもしれないよ、モカちゃん。


「災難だったね、お隣さん?」

「そうニャ。たまにあるニャ。」

「体調が悪いなら今日の探索はやめておく?」

「大丈夫ニャ。朝ご飯を食べれば何とかなるニャ。」


 そう言いつつヒナは机に突っ伏してしまった。仕方がないのでセルフのお茶をヒナの分まで持っていってやる。緑茶のいい匂いが鼻孔をくすぐる。


「ありがとうニャ。目が覚めるニャ。」

「無理はしないようにね。」


 朝茶はその日の難逃れというからな。これ以上ヒナに苦難が来ないといいんだが。


「戻りましたですよ。注意しに部屋に入ったら床で寝ていたですよ。後で怒っておくのですよ。」

「うわぁー、あともうちょっと我慢すれば良かったニャ!!」

「落ち着け!!ヒナ。」


 うん、そういうことはあるあるだよな。可哀そうに。


「?、とりあえずヒナお姉ちゃんの朝ご飯も持ってくるのですよ。」


 ヒナのリアクションを不思議そうにしながらモカちゃんは奥の厨房へ入って行き、しばらくしてヒナのご飯を持って帰ってきた。フォークとスプーンはレーザー彫刻されたものだ。よほど使ってほしかったんだな。


「はい。なんだかわからないけど、ご飯食べて元気出すですよ。」

「ううっ、モカの優しさは嬉しいんだけどそっちじゃないニャ。」

「まあ、早起きは三文の徳っていうから有効活用しよう。」

「わかったニャ。今日は早めに迷宮に行って絶対に早めに帰って寝るニャ。」


 おぉ、急にヒナが目をカッと開いて食事を食べ始めたぞ。食べ物の恨みは恐ろしいというがヒナの場合は睡眠欲の方が強そうだ。覚えておこう。


「あれっ、モカ。フォークとスプーンを新しくしたのかニャ?」

「ふっふーん。そうではないのですよ。そんなお金はうちには無いのですよ。」


 モカちゃんが腰に両手をあて胸を張る。うん、すごく自慢をしたそうだ。とても見ていて可愛らしい。

 それにしてもお金が無いとかお客の前で堂々と言ってしまっていいのか。まあここにそれを気にしそうな人はいないからいいが。相変わらず何でもしゃべっちゃうみたいだな。


「この模様はタイチさんが彫ってくれたのですよ!!可愛いのですよ!!」


 右手をズビシッと効果音がつきそうな勢いで私を指さした。私は気にしないけど他の人をあんまり指さしちゃ駄目だよ。


「相変わらずタイチは便利な奴だニャ。」

「いや、そのなんでも屋みたいな扱いはやめてよ。」

「冒険者なんて何でも屋みたいなものだニャ。」

「それもそうか。」


 ヒナが彫刻された部分をなでながらフォークをじっと見つめる。


「タイチ、これどうやったニャ。」

「光魔法で加工しただけだよ。自分の訓練も兼ねているからまだまだムラがあるけどね。」

「うーん、もしかしたらネロに捕まるかもしれないニャ。」

「それってヒナの隣のうるさかった人?」

「そうだニャ。変わり者だけどいい奴だから、もし気が向いたら協力してあげて欲しいニャ。」

「わかった。ヒナがそう言うなら協力できる範囲で助けるよ。」


 それを聞いたヒナはちょっと嬉しそうだった。





 その日は探索に早く潜ったかいもあり、かなり早く12階層を制覇することが出来た。1番の原因はヒナがかなり本気で戦闘したためだ。遠距離から先制攻撃していない敵まで一閃で倒していく光景は援護なんていらないんじゃないかと思うほどだった。もっと修練しなくてはと思うとともに、なんとなく悔しかったので帰りは全力でルージュをこいだ。その相乗効果だ。

 時刻はまだ午後3時。治療院でもろもろの薬でも作ろうか、それとも久しぶりに街の店を冷やかしに行こうか考えながら宿へ帰った。


「ただいまニャ。」

「ただいま。」

「お帰りなさいですよ。そして、タイチさん。ごめんなさいですよ。」


 モカちゃんがギュンと音が出そうな勢いで頭を下げる。


「うーん、なんとなく予想はつくけど、どうしたの?」

「ネロさんに彫刻のこと褒められて嬉しかったから、タイチさんに彫ってもらったって自慢したんですよ。そうしたらぜひ会わせて欲しいと言われたのですよ。それを聞いていたお父さんにまた怒られたのですよ。タイチさんに迷惑をかけてしまったかもしれないって思って・・・」


 床にポタポタと涙が落ちている。モカちゃんに悪気は全然ないんだよな、ちょっといろいろ話しちゃうだけで。そのくらいならこの年齢なら仕方ないだろう。


「大丈夫だよ。もともとヒナからもその可能性は聞いていたから話を聞いてみるよ。そんなに落ち込まなくてもいいよ。」


 モカちゃんの下げられたままの頭をポンポンとなでる。モカちゃんが笑った方が皆嬉しいからな。


「そうだニャ。悪いのはそんなことを頼むネロの方ニャ。」

「でもでも、話しちゃったのは私なのですよ。」

「別に話しちゃダメって言ってなかったし、良いよ。ただ他のお客さんのことについては注意しようね。」

「はい、なのですよ。ありがとうございますですよ、タイチさん。」


 こっそり後ろの方でのぞいているマタリさんをちらっと見ながら、これでいいですよねと目で確認する。うなずいていたので大丈夫だろう。


「それでネロさんの話を聞いてみたいんだけど今どこにいるのかな?」

「帰ってくるまで食堂で待つって言ってたから食堂にいるはずですよ。」


 ちょっと目の赤いモカちゃんの後について食堂へ向かった。食堂で待っていたのは30代前半と思われる兎人族の男性だった。頭の毛が真っ白なので一瞬老人かと思った。


「あっ、あっ、あなながこれを作ったタイチさんでしゅか。」

「はい、それを彫ったのは私ですが。」

「よ、よかったら、ぼ、僕の研究を助けてほしんでしゅ。」

「落ち着くニャ、ネロ。ちゃんと自己紹介から始めるニャ。あと聞き取りにくいからゆっくり話すニャ。」


 ネロさんが深呼吸をしている。てっきりこれが兎人族のスタンダートな話し方かと思ってしまった。緊張して噛んでいただけか。


「ふぅ。すみませんでした。僕の名前はネロと言います。魔道具を研究している研究者です。」

「自称研究者だニャ。」

「ひどいですよ、ヒナさん。」

「研究機関にも入っていない野良の研究者は自称研究者ニャ。成果も出してないし。」

「うっ、それを言われると弱いんですが。」


 ネロさんがとても情け無さそうな表情をしている。ヒナの言うことが間違っているわけではないんだろう。


「はじめまして、8級の冒険者でシーフのタイチです。」

「これはこれはご丁寧に。それでもう一度確認したいのですが、この彫刻を彫ったのはタイチさんでよろしいんですよね。」

「はい、モカちゃんに頼まれましたので彫りました。」

「すばらしい!!」

「うるさいニャ。どこにそんなに興奮する点があるニャ?」

「わからないのですか?この何十本ものフォークなどに均一に同じ絵を彫るなどドワーフでも不可能です。彫りによって尖っている点なども無く、そして本来の頑丈さを損ねることも無い。そして何より素晴らしいのがこの精密性です。しっかりと一本の線で無駄な枝分かれをすることなく彫られています。すごいことなのですよ!!」

「また始まったニャ。」

「あぁ、何度見てもすばらしい。この何本にもわたる再現・・・・」


 ネロさんが一人でフォークに頬ずりしながらすばらしさを叫んでいる。かなり危ない人に見える。大丈夫か?


「ヒナ、この人大丈夫なの?」

「大丈夫ニャ。これは毎度のことだから放置しておけばそのうち気が付くニャ。もしくは・・・。」


 ヒナがつかつかとネロさんの方へ歩いていくと拳骨を頭に落とした。


「いい加減に戻ってくるニャ。それでタイチに何をしてほしいニャ?」

「はっ、そうでした。タイチさん、私の研究を、鉄の魔剣を作る研究を手助けしてくれませんか?」

好きなことを語ると夢中になり過ぎて相手にひかれることありますよね。

私の場合は自転車関係がそうなりがちなので注意しています。

読んでくださりありがとうございます。

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RINの外伝の小説を書いています。次のリンクから読もうのページに行くことが出来ます。 「お仕事ですよ、メイド様!!」(飛びます) 少しでも気になった方は読んでみてください。
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