表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RIN ~共に生きる異世界生活~  作者: ジルコ
第二章:メルリスの街にて
64/181

11階層

 はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、ふー。

 乱れていた息を整える。別に体力的にきついわけではない。なんか恥ずかしいだけだ。


「どうニャ。驚いたかニャ?」

「ああ、思ったのと違う方向で驚いたよ。ヒナがお楽しみって言ったわけが良くわかった。」


 まさかモンスターハウスと同じとは思わなかった。しかもゴブリンの数が減っているから難易度としてはむしろ下がっている。

 魔石を取りながらゴブリンたちの様子を見ていく。うん、こんな状態でもちゃんと目を射抜いている。投擲は裏切らないな。ゴブリンナイトとボブゴブリンはさすがに1撃では死なず、片方の目に2本もう一方に1本の合計3本で倒すことが出来た。ワクコ製のダートならまだまだ1撃で倒せそうだが、あとの整備を考えるとさすがに使う気は起きないので土魔法を調整して最高でも2本で倒せるようにしよう。


「それじゃあ11階層に行くか。」

「とりあえずこれからは1日1階層のペースでいいのかニャ?」

「そうだね、日帰りが無理そうなら泊まる必要があるから準備が必要だけど、まあ今日のところは様子見もかねて11階層を制覇出来ればいいなくらいかな。だから時間が来たら帰ろうと思う。」

「11階層以降を日帰りで攻略できるなんてバイシクル様様ニャ。」

(でしょー。)

「んっ、タイチなんか言ったニャ?」

「いやっ、気のせいじゃない。」


 なんでルージュの念話が聞こえたんだ?

 アンさんと言い、勘の鋭い人には念話が聞こえてしまうのかもしれないな。注意しなくては。


「それで11階層から15階層まで出てくる魔物はさっきのアレなんだよね。」

「そうだニャ。さっきタイチが瞬殺したアレニャ。」

「なんかそう考えるとさっきのボスってこの次の階層の練習みたいな感じだね。」

「まあ、ボスのゴブリンナイトとボブゴブリンは11階層よりもLvが高いから強いニャ。一応ボスと言えると思うニャ。」


 まあ、これで11階層よりも弱いとか言ったら本当にボスと言うよりはお試しみたいな感じだからな。


「次の階層からは私もちゃんと戦うニャ。私の動きを見てタイチは自分の戦闘方法を考えるといいニャ。」

「了解。」


 まあ、今までのヒナの戦闘は基本的に首コロコロしか見てないもんな。どんな風に動いてどんな攻撃をしていくのかでこちらも戦う方法を変えないといけない。攻撃手段がいろいろあって相棒に合わせることが出来るのが私の強みでもあるし。


「じゃあ、張り切っていくニャ。」

「よし、行くか。」


 私を先頭に罠を警戒しながら進み始めた。





「ねぇ、ヒナ。」

「なんニャ?」

「もしかして11階層も人気の階層?」

「そうだニャ。ボブゴブリンは魔石くらいしか取れないけどゴブリンナイトの剣は鉄の質がいいから熔かして新しい武器を作るのに適しているニャ。買い取り価格もコボルトのナイフとは比べ物にならないニャ。」

「だからこんなに冒険者が多いのか。」

「まあLvも一番低いから倒しやすいし、冒険者がたくさんいるからまず囲まれることが無いので安全だしニャ。」


 そうなのだ、戦闘をしようと思ったのだが近場には魔物がおらず、いても冒険者と戦闘中だったりして戦うことが出来ない。もっと出入り口から離れた場所までいかないと無理っぽいな。


「あっ、罠もグレードアップしてるね。」

「まあ、11階層からが本当の迷宮だからニャ。」


 タイルに色がついていない罠を見つけてちょっと嬉しくなる。それでもまだまだ簡単に見つけられるがこれでこそ迷宮の罠と言う感じだ。


「ちょっと待ってね。」


 罠のタイルに圧力をかけないように軽く手を触れさせる。魔力操作で罠が連動するための魔力の流れをトレースしていく。魔力は罠から壁の一点へ一直線上へ流れていた。

 コボルトナイフを取り出し、その流れを切るように地面に突き立てる。

 一応保険として、2メートルくらい離れて土製ダートを罠にぶつけるが発動しなかった。その後自分で踏んでみたが発動しなかったのでコボルトナイフが吸収されるまではこの罠は安全だ。


「ふぅ、11階層以降も見た目以外はあんまり変わらないみたいだ。」

「へぇ、タイチは罠の解除も出来るのかニャ。」

「まあ、遠距離から発動させた方が安全だし簡単だから普段はしないけど、人が乗らないと発動しない罠とかもあるからね。」

「いったいどんな風にやるのニャ。」

「迷宮の罠って基本的に感圧式が多くてスイッチを踏むとそれに連動して罠が発動するんだ。その踏んだ場所から罠が発動する場所まで魔力の糸のようなもので繋がっているんだけどそれを邪魔してやれば踏んでも発動しなくなるんだよ。」

「じゃあ罠の周りを全部ナイフとかで囲んでしまえばすべて解決じゃないのかニャ?」

「そこが難しいところで今回はその魔力の糸が地表近くを通っていたからナイフで良かったけど1メートル下とかを通っていたら無理だしね。それに魔力の糸も1本とは限らないし。」

「ふーん、めんどくさいんだニャ。」

「まあ、それをちゃんとやって仲間を助けるのがシーフだからね。」

「わたしにはシーフは無理だニャ。」

「うん、そうだね。」

「どういう意味ニャ。」

「それぞれに合った職業があるってことだよ。ヒナは剣がうまいんだから剣士でいいし、それで仲間を助ければいいんだから。適材適所ってこと。さあ進もうか。」


 罠を気にせずそのまま先へ進む。


「そういえばヒナは1人の時、罠があるときはどうしてたの?」

「罠の場所はもう20階層まではほとんど把握しているから通らないようにしたニャ。一時的な罠は避けるか飛び越えていたニャ。」

「1人だから出来ることだね。」

「そうだニャ。魔法使い系の体力があまりない仲間がいたら無理ニャ。その点、タイチは楽ニャ。」

「お褒めにあずかり光栄です。」

「これからもよろしく頼むニャ。」


 ちょっとした小芝居を挟みつつ探索を続ける。


「ヒナ、直進したところの部屋にボブゴブリン3匹。どうする。」

「私が突っ込むから、タイチは援護よろしくニャ。」

「了解、じゃあ注意していきますか。」


 ヒナと順番を入れ替え戦闘態勢に入る。とりあえずはダートで援護すればいいか。ヒナも腰の剣を引き抜きすぐに動ける体勢だ。


「じゃあ2匹の目をダートで潰すからその2匹から優先的に攻撃して。ヒナが攻撃範囲に入る前に残りの1匹の目を潰すよ。」

「了解ニャ。」


 物音をたてないように歩いてきたが、遮蔽物もないし気づかれずに近づけるのはここまでだな。ダートの射程距離まで10メートルほど。仕方がない、行くか。


 ふぅーと一息吐いた後、ヒナに目で合図をして走り出す。後ろからキナの足音が聞こえる。改めて感じる。仲間がいるってすごい安心感だ。


 ボブゴブリンたちがこちらに気づいて吠えながら向かってくる。すかさずダートを左右の手で1本ずつ投擲する。ダートは狙いたがわず目に突き刺さり2匹のボブゴブリンたちは目を押さえながらうずくまる。

 足を止めた私の隣をヒナが風のようにかろやかに走っていく。倒れている二人に向かって直進ではなくちょっと外に大回りしながら進んでいくのは私の射線を邪魔しないためだろう。

 残りの1匹の目を狙いダートを投擲したが、急にヒナの方向に進路変更したため後頭部をかすめて外れてしまった。


「チッ。」


 ヒナと接触するまで投げられるのはあと一回。若干斜めに走っているので、変な動きをされたら目を外す可能性がある。ならば・・・。

 左右両方からダートを素早く投げる。ドスッと言う音とともに当たったダートのせいでボブゴブリンがこの世のものと思えない悲鳴を上げ、股間を押さえてのたうち回る。そう股間を押さえて・・・。

 ヒナが倒れている3匹の首をはね、そのまま戦闘は終了した。


「タイチ、えげつないことするニャ。」

「いや、1回目を外してしまって、後が無かったからね。」

「あの悲鳴・・・、なんか魔物をかわいそうって思ったのは初めてニャ。」


 ヒナが何とも言えない目で見てくる。おかしいな、結果としては3匹無力化したのだが。2回目の私の判断をアンさんなら褒めてくれるだろうに、いや、1本目を外したことをめちゃくちゃ怒られそうだ。よかった、アンさんが見ていなくて。


「次からは外さないようにもっと気を付けるよ。探索を続けよう。」


 自分がしてしまったボブゴブリンの惨状を見ないようにしながら魔石を取り探索に戻るのであった。

股間にボールが当たったりすると悲鳴と言うよりは何も言えずにただ倒れこみますよね。

女性にはわかるのでしょうか?

読んでくださりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RINの外伝の小説を書いています。次のリンクから読もうのページに行くことが出来ます。 「お仕事ですよ、メイド様!!」(飛びます) 少しでも気になった方は読んでみてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ