迷宮サイクリング
昨日も、三人のかたにブックマーク頂きました。ありがとうございます。
そして今日20000PVを越えそうですので越えたら記念投稿します。
(ストだー、ストをするぞー!!)
(ルージュ、どうしたの急に?)
(ストライキだよ、タイチ。メルリスに来てからほとんど僕に乗ってないじゃない。何日かに1日は乗るって約束だったのに。)
(そうだったね、ごめん。ちょっと迷宮の攻略に集中しすぎだったよ。)
迷宮の探索は順調に進み、ヒナと潜り始めて3日目にして9階層までマップが完成した。明日は10階層のボスに挑むつもりだったが、ここらで休息をとってもいいような気がする。
「ヒナ、明日の予定だけどボス戦の前に1日休みを取ろうと思うけどいい?」
「別にいいニャ。順調に進んでいるし英気を養うのも探索のうちニャ。」
良かった。ヒナの了解がもらえた。早速ギルドへ行ってちょうどいい依頼がないか見てみよう。
(無いねー。)
(うん、無いな。)
ギルドに魔石とナイフを買い取りしてもらい依頼の掲示板を見ているのだが良い依頼が無い。長距離走れるような依頼はあるのだが、帰ってくるのに私たちでも2日はかかる距離だ。かといってわざわざ遠くまで薬草を取りに行くのも微妙だ。
(いっそのこと依頼を受けずにただ走りに行く?)
(でもタイチこの周りの景色に飽きるでしょ。)
(いや、景色は素晴らしいと思うんだけど変化が無いのがね。)
(うーん、ならいいかな。あっ、迷宮の中を走るのはどう?)
(えっ?)
あれっ、いけそうか?確かに迷宮内は道も広いしでこぼこもしていないから走りやすい。6階層以降になれば冒険者の数も減るしメインの通りを通らなければまず会うことは無い。どうも10階層以降の方が効率が良いらしく、この迷宮の攻略方法としては5階層までのゴブリンでレベルをしっかり上げて一気に10階層まで進んでボスを倒し11階層以下で稼ぐのが一般的らしい。コボルトは経験値もあまりゴブリンと変わらないし、初心者にはちょっと倒すのが面倒な相手なのだそうだ。まぁナイフ持ってるしな。
名案かもしれない。今後逃げるときなどルージュに乗りながら攻撃する必要が出てくるかもしれない。その訓練にもなる。
(ルージュ、いい考えかも。)
(でしょー。)
ものは試しだ。明日は気分転換も兼ねて迷宮内をサイクリングとしゃれこもう。
翌日、いつも通りの訓練からの流れをした後、迷宮へ行き1から5階層を最短ルートで抜ける。途中で出会ったゴブリンについては土製ダートを投擲し、倒してそのまま放置した。今日はお金を稼ぐのが目的ではなく、サイクリングが目的なので解体している時間がもったいない。残った遺体は冒険者が見つけるなり迷宮が吸収するなりするだろう。
急いだかいがあり、6階層に着いたのは1時間半後くらいであった。最短記録だ。自分の体力がかなり上がっているのを改めて実感するな。人のいないところでルージュに乗ったとは言え、オリンピックのマラソン選手以上の速度を維持したまま走り続けられるのは昔では考えられないことだ。
(とうちゃーく。)
(ルージュ、ご機嫌だね。)
(うん、迷宮内って走りやすそうだなって前から思ってたから楽しみだし、タイチと二人きりで乗ってもらえるしね。自由に話せるし。)
そういえばそうだよな。いままでは2人のことの方が多かったから自由に話せていたけれど、今はヒナがいるからあまり話さなくなっていたからな。それにしても嬉しいことを言ってくれる。
(じゃあ、メインの道からちょっと離れたらサイクリングしますか。)
(おー!!)
しばらく進むと冒険者はほとんどいなくなった。よし、サイクリング開始だ。
クロスバイクの状態のルージュに乗るのも久しぶりだ。メルリスに来てからシティサイクルになっていることが多かったしな。やはりシティサイクルとは違う加速感、乗り心地だ。これならどこまでもいけそうな気がする。
(やっぱり、いいなー。)
(だよねー。)
なんとなく二人で感慨にふける。
(あっ、そういえば一応マップに罠の場所はメモしてあるから大丈夫だと思うけど一時的な罠の可能性もあるからルージュも警戒よろしく。)
(りょーかーい。)
この一時的な罠が厄介なのだ。これさえなければ魔物にさえ気を付けていればいいのに。魔物ならばマップに反応があるのですぐにわかるが、罠は目視で確認しなければわからない。とはいっても9階層までの罠は、宝箱などの罠を除けば、踏むことによって発動する罠しかないので地面にさえ注意していれば大丈夫だ。ヒナにも確認済みである。
(前方の通路の魔物がいるね。)
(そうだな、まあ実験もかねて走りながら倒してみるか。)
前方には3匹のコボルトがいるようだ。接敵までおよそ30秒くらいか。まずは定番の方法から試してみるか。
(ルージュ、まずは土魔法で攻撃してみる。)
(りょーかーい。)
およそ150メートルの距離で向こうもこちらに気が付いたらしい。まあライトをつけているし当たり前か。3匹もこちらに向かって走ってくるのでぐんぐんと距離が縮まる。
3本の土製ダートを作り出し、目に向けて射出する。
キャン、と言う声とともにコボルトたちが吹き飛ぶ。しっかりと目には命中しているようだ。
(大当たりー。)
(一応倒せそうだな。ただやっぱり魔力の消費が多いのが問題か。威力も自分で投げた時よりも無さそうだ。)
(まあ、ダートを作るだけならあんまり魔力使わないしね。飛ばす方が大変だし。)
(それにしても狙い通りに当たったな。投擲スキルってこの場合にも関係するのか?)
(うーん、僕かタイチのしか魔法を見たことが無いからわからないね。)
(今度魔法の使える人の戦闘を見てみるか?)
(知り合いいるの?)
(ごめんなさい、いません。)
(まあ、いつかね。)
なんか普通の会話からナチュラルに傷つけられてしまった。別に友人が作れないわけじゃないんだ。そう、たまたまヒナと迷宮探索ばっかりしていたから出会いが無いだけなんだよ。なんだか前にもこんなことがあったなと思いながら言い訳を考えていた。
倒した3匹のコボルトを放置してサイクリングを続ける。まあ土魔法ならお金はかかっていないから特に回収とか解体をしなくても損することは無い。これがワクコ製のダートとかだったら回収は必ずするが。
しばらくサイクリングを続ける、途中で出会う魔物については土魔法で同様に目を狙って倒しておいた。たまに狙いがずれて目じゃないところに当たるが、その場合は殺せないまでも顔面にダメージがいくので倒れているうちに無視して進めば特に問題は無かった。
(それじゃあそろそろ他の方法を試してみるかな。)
(どんなー?)
(最初はワクコ特製のダートだね。)
ルージュに乗っているためダートを普通に投擲しようとしてもいつもの威力は出せない。他に何か威力が増す方法は無いかと考えたときに思いついたのが西部劇でよく見るカウボーイだった。まあ、あれは縄を投げるんだが遠心力をうまく使えば威力が増すのではないかと思ったのだ。
(タイチ、前方に3匹。これはゴブリンだね。)
(よし、実験してみるか。)
片手でスライムの糸を持ちダートをぶんぶんと回す。かなりの勢いだ。射程圏内に入ったので目を狙い糸を離す。ヒュンという音とともにダートは飛んで行ったが目には当たらず額に当たった。ダートはそこまで刺さっておらず死んでもいないようだ。
仕方がないのでダートのスライムの糸から土魔法で槍を作り、ダートで開いた穴からそのまま追撃し頭を破壊する。ずしゃっという音とともに頭の半分が吹き飛んだ。
(うわー、えぐいね。)
(うわっそうだね。でも思ったより威力が出ないな。やはり遠心力だけでは無理だったか。)
他の2匹をダートの先から発動した土製ダートを飛ばして倒しながら検討する。コンセプトとして面白いと思ったんだけどな。遠心力だけでは足らないならそれを補うには・・・。
(よし、次はもうちょっと工夫してみよう。)
(僕としてはあんまりえぐいのはやだなー。)
(まあ、そこはあきらめてくれ。)
(やっぱりー。)
ルージュの文句を聞きつつダートを回収し、サイクリングを続ける。まあ魔物を殺すんだから、えぐくない方法なんて無いって。
カウボーイとかいいですよね。
自転車泥棒を投げ縄で捕まえるカウボーイとか映画みたいですし。
読んでくださってありがとうございます。




