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RIN ~共に生きる異世界生活~  作者: ジルコ
第二章:メルリスの街にて
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調薬

(今日の予定は?)

(まずは治療院に行って回復魔法を使うところを見てみようと思う。)

(見られると思う?)

(まあ、手伝いをすれば見られるんじゃないかな?当たって砕けろの精神で行ってみよう。)


 翌朝、訓練の後水浴びをして朝食を食べ、自分が持っている中で一番清潔に見えるこざっぱりとした服に着替えたら治療院に向かって出発する。見学をお願いするにしても手伝うにしても治療院なら清潔感は必要だろう。

 数分走り、ギルドの横の白い建物に着く。確かに看板に「迷宮治療院」と書いてある。確かにわかりやすいがそのネーミングセンスはどうなんだ?お化け屋敷みたいだぞ。

 計画がうまくいくかどうかちょっと不安に思いながら扉を開ける。

 中は日本の病院のような感じではなく普通の道具屋みたいだ。違うのは壁一面にポーションや解毒薬などの回復アイテムが所狭しと並んでいることだろう。


「おはようございますー。迷宮治療院へようこそー。治療ですかー、お薬ですかー。」

「あっ、おはようございます。どちらでもないんです。ちょっとお願いがありまして、治療の様子を見学させてもらえませんか?」


 受付の20代くらいのお姉さんがこちらに近づきながら聞いてきた。お姉さんが歩くごとにゆっさゆっさと大きなものが揺れている。やはり母性か?治療院で働くような母性の強い女性はこうなるんか?

 視線が行きそうになるのを理性でなんとか防ぐ。回復魔法を覚えられるかどうかで今回の迷宮も今後の旅も難易度が変わってくる。今が耐える時だ、タイチ。


「そうなんですかー・・・。私じゃ判断できませんので先生に聞いてきますねー。」


 頬に手を当てながら首をかしげて少し考えると、お姉さんは奥の扉へ入っていった。首をかしげた時に、その腕によって胸がむにゅむにゅと変形していたがあれはわざとなのか?そうなのか?

 それにしても独特の雰囲気の人だ。超マイペースみたいだな。


(タイチ、なんかすごい人だったね。)

(ああ、色々な意味ですごい人だな。)

(アレ、あんなに揺れて痛くないのかな?)

(特に本人は平気そうにしていたし大丈夫なんじゃない。)


 あんまり揺れると胸の靭帯が切れて将来的に垂れてくるらしいから年を取ったら大変かもしれない。この世界でブラジャーって見たことがないんだよな。胸にはサラシみたいな布やリボンを巻くぐらいらしいし。まあ、実際に女性のその姿をこの世界で見たことが無いからもしかしたら専門の店とかがあるのかもな。

 お姉さんが帰ってくるまでの間、店の商品を眺めて待っていた。迷宮に向かうのであろう冒険者が時々入ってきてはポーションや解毒薬を買っていく。一応参考になるかもしれないのでどの種類が売れているかはチェック済みだ。


「治療を見たいっていう変わり者はあんただね。」


 先ほどのお姉さんに連れられて腰の曲がったおばあさんが歩いてきた。この人が先生なのか?


「はい。8級の冒険者でシーフのタイチといいます。今後のために治療の様子を見学させていただきたいのですが。」

「タダって訳にゃあいかないね。あんた、何が出来るんだい?」

「「調薬」のスキルはありませんが、一般的な解毒薬などの調合は出来ます。あとは外に出て素材の採取が出来ますね。」


「調薬」は最後の半月ぐらいアンさんに教えてもらっただけなので、まだスキルを取得するまでは出来ていない。まあ、毒草を自分で食べたりするときの解毒薬は自分で用意したものだが。一応アンさんのお墨付きなので効果はあるはずだ。


「そうかい、じゃあ午前中は薬作りを手伝いな。治療が増えてくるのは午後からだ。十分な働きをしたと認めたら治療を見させてやるよ。」

「わかりました。ありがとうございます。」

「それではこちらですよー。」


 お姉さんに連れられておばあさん先生が出てきたのとは違う部屋に入る。すりこぎや鍋、フラスコのような道具など薬作りに必要な道具が机に並んでいる。邪魔にならない位置にルージュを立てかけ奥へと進む。


「ロンソさーん、欲しがっていた助手が来ましたよー。」

「本当か、あんなババアの所へ来る奇特なやつなんていたのか?」

「先生をそんな風に言ってはダメですよー。ロンソさんの方が年齢は上じゃないですかー。」

「あんなのと比べてもらっては困る。見た目からして私のほうが若いからな。」


 床から起き上がってきた20代に見えるハンサムな男性とお姉さんのやり取りを黙って聞く。並んでいるとお似合いのカップルに見える。「あのー、助手ではないんですが。」と言いたいが言える雰囲気ではない。でも気になることを言っていたな。先生よりも年齢が上?どういうことだ?


「まあ、という訳で助手のタイチさんですー。タイチさん、こちらが院の薬全般を作っているロンソさんですー。ロンソさんに指示してもらってくださいねー。それでは私は仕事に戻りますー。」


 そう言い残すとお姉さんはこの部屋から出て行ってしまった。とりあえず自己紹介をしておくか。


「今日の午前中、ここで働かせていただきます、8級の冒険者のタイチです。「調薬」のスキルはありませんが解毒薬などは作れます。」

「ああ、私はロンソだ。気づいているかもしれんがエルフだ。ここで薬全般の作成をしている。」


 おぉー。初エルフだ。正確にはすれ違ったりしていたのかもしれないが、ちゃんとした知り合いとしては初めてだな。思ったより耳が長くない。人間の耳2個分くらいの長さだ。


「それで午前中って言うのはどういうことだ?」

「治療を見学させてもらう見返りとしてここで午前中働くように言われました。」

「お前も変な奴だな。それにしてもあのごうつくババアめ、それくらいタダで見させてやればいいのに。」

「まあ、お願いしたのはこちらですし。」

「まあいい。どちらにせよあと5時間は働いてもらうんだ。とりあえずどの程度出来るのか確認させてくれ。」

「わかりました。なにをしますか?」

「そうだな、まずはポーションを作る土台の薬草でもすりつぶしてもらうか。」


 そう言うとロンソさんは奥の薬材庫と書かれた部屋に入っていき、かごに山のように盛られた薬草を持って帰ってきた。うわっ、あの量をすり潰すのはかなりの手間だぞ。

 文句を言っても始まらないので薬研を使いすり潰していく。薬研は時代劇とかで薬屋が使っている丸い板の中心に手で持つところが両側についており、専用の器でそれを行ったり来たりさせてすり潰す道具だ。最近では同じような形の腹筋を鍛える器具があるな。


 薬研の前に座り、適量の薬草を入れすり潰していく。多く入れすぎると均一にならないし、少なすぎると効率が悪い。速度と強さも問題だ。あまり早すぎたり、力を入れすぎると薬草が反応して変化してしまうし、熱を持つと効果が激減する。これはアンさんとの実践で実際に体験したから絶対に注意しなくてはいけない。飲んでも飲んでも回復しないあの時は地獄だった。適度なスピード、適切な力で一定のペースを守りながらゴリゴリと潰していく。

 なんかこういう地味な作業好きなんだよな。研究しているみたいで懐かしいし。


 ゴリゴリ。

 ゴリゴリ。

 ゴリゴリ。

 ゴリゴリ・・・。


 薬草をつかもうとした手が空を切る。いつの間にかすべての薬草をすり潰していたらしい。時計を見ると2時間くらい経過していたみたいだ。ぐっ、と背伸びをして背骨を伸ばす。これだけの量を作るとさすがに達成感があるな。


「終わりました。次は何をすればいいですか?」

「お前本当に「調薬」のスキル無いんだよな。基礎は十分に出来ているし、これだけの時間同じ作業を集中して続けられるのは才能があるぞ。」

「まあ教えてくれた人が良かったですから。「調薬」のスキルはまだないですよ。」


 ステータスを見てみる。あれっ、「調薬 Lv1」がなぜか増えているな。


「あの、なぜか「調薬」のスキルを覚えたみたいです。」

「まあ、あれだけ基礎が出来ていれば当然だろうな。おそらく薬を作った経験が足らなかったんだろう。」


 これは嬉しい副産物だ。これで自分で採った材料でより良い薬が作れそうだ。

地味な作業を続けて最後に成果が出るのは嬉しいものです。

読んでくださってありがとうございます。

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RINの外伝の小説を書いています。次のリンクから読もうのページに行くことが出来ます。 「お仕事ですよ、メイド様!!」(飛びます) 少しでも気になった方は読んでみてください。
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