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RIN ~共に生きる異世界生活~  作者: ジルコ
第二章:メルリスの街にて
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ヒナの願い

「いや、常識的に考えて無理でしょ。」


 単純に今みたいに1日1階層を攻略するだけでも1か月はかかるのだ。潜れば潜るほど難易度も上がっていく。いくら初心者用迷宮とは言え本当に初心者である私がそんな速度で攻略できるとは思わない。しかもボスもいるのだ。


「タイチと私なら大丈夫ニャ。」

「えっ、他に仲間とかいないの?」

「・・・事情があってちょっと今はいないニャ。」

「さらに無理じゃないか。ちなみに初心者用迷宮を踏破する一般的な基準はどれくらい?」

「バランスのいい4人パーティで平均Lvが25くらいだニャ。」

「いや、Lv8の私じゃ無理でしょ。」

「嘘だニャ。今日見た感じ、タイチはLv20以上のはずだニャ。」


 Lvについては証明する手段がないからな。ステータスが他人に見えればすぐに証明できるのに。いや、それもダメか。私のステータスは見せられないものが多すぎる。どうしたらいいのか?


「うーん・・・」

「タイチ、わかったニャ。タイチは嘘言ってないニャ。」


 ヒナがあっさりと引き下がる。さっきまではかなり興奮していたのに急変したな。


「もしかしてヒナは相手の心を読むようなスキルを持ってるの?」

「そこまですごくないニャ。「共感」と言って相手の感情がなんとなくわかるくらいだニャ。今のタイチが困っているということがわかるくらいで、具体的なことはわからないニャ。」


 やたらとヒナに先を読まれると思ったらそういう事か。感情がわかるということは周囲の状況次第でその人が何を考えているのかある程度予想も出来るだろう。


「人に知られない方がいいスキルだね。なんで話したの?」


 そうなのだ、スキルの事を正直に話す必要は無かった。前みたいにまぶたが動くとか適当な癖を言っておけば、こちらにはスキルのことなどわからないのだから。


「私がこんな厄介な状況になった原因がこの「共感」のせいだからニャ。協力を依頼した相手に対して隠し事はしたくないニャ。」


 そう言い切ったヒナは真剣な目で私を見つめる。「共感」のスキルが無くともわかる。これはヒナの正直な気持ちだ。このスキルを知られる危険性もあるだろうにあくまで私に対して誠実であろうとするヒナの想いだ。

 その顔はちょっと不安そうでありながらとても誇り高く見えた。思わず見とれる。


(ルージュ。)

(なあに?)

(ヒナに出来る範囲で協力しようかと思う。いいか?)

(タイチがそう判断したならいいんじゃない。)

(ちょっと寄り道しちゃうけど、しばらく付き合ってくれ。)

(寄り道はいつものことじゃん。)

(まあ、そうだな。)


 ルージュの反応に思わず苦笑する。本当に良い相棒だ。


「わかったよ。ヒナに協力する。あくまで出来る範囲だけれど。」

「えっ、本当なのかニャ?実際危険も多いしタイチが受けるメリットはあんまりないニャ。」

「受けて欲しいのか、受けて欲しくないのか、どっち?」

「それはもちろん受けて欲しいにゃ!!」


 ガタっと音がするくらいの勢いで立ち上がりヒナが答える。美人云々は別として、同じようにいろいろな事情がありそうでなんとなく共感してしまう。多少の手助けをするくらいならいいだろう。情報ももらえそうだし。


「でも勝算はあるんだよね。」

「大丈夫ニャ、パーティなら25階層までは行ったことがあるし、個人でも20階層のボスまでは行けるニャ。20階層のボスは集団で襲ってくるから魔法がないと厳しいニャ。」

「回復とか休憩とかはどうするの?」

「回復に関してはポーションをたくさん持っていくつもりニャ。休憩は19階にギルドの作った休憩所があるからそこを使うつもりニャ。19階層までは最短距離で進めば1日で着けるし、20階層以降も2日程度で30階層まで行けるはずニャ。」


 それなら問題は無いか。迷宮の危険地帯に泊まるのは最高でも1日で済む計算だ。もちろん1回でそんなにすんなり行けるわけがないので探索期間を十分にとった上でボスを倒す時だけはその行程で行けばいいだろう。


「わかった。それじゃあ初めの1ヶ月を19階層までの攻略及び私のレベルアップと経験を積む期間、次の1ヶ月を19階層から29階層までを攻略する期間、残りの1ヶ月を30階層のボスを倒す期間と予備日ということでいい?」

「特に問題はないと思うニャ。」

「それでヒナは他に仲間を増やす気はないの?というかなんで私だったの?」

「一応私の事情はあんまり知られたくないニャ。それに迷宮探索には大体パーティで来ている冒険者が多いニャ。単独で来るのは癖の強そうな奴ばかりニャ。」


 確かにこれまで迷宮に潜った時も単独で行動しているのは私とヒナを含めても10人に満たなかった。皆、どことなく影があったり、周囲に喧嘩を売っているような奴だったりしてちょっと問題がありそうだったな。


「タイチを見つけたのは本当に偶然ニャ。でも今日1日見てみてタイチなら信頼できそうと思ったニャ。」

「それは嬉しいけど、何を根拠に?」

「勘ニャ。」

「そうか。」

「あとはある程度の強さが欲しかったニャ。20階層以降でも一人で戦える強さがある、そして初心者用迷宮で単独で行動している冒険者なんてほとんどいないニャ。」


 なるほど、確かにそんな冒険者は少なそうだ。ヒナが欲しかった条件にたまたまあったということか。


「それで私の協力する部分は?」

「罠の警戒、索敵、戦闘時の補助をお願いしたいニャ。」


 今の状況に近接の出来る前衛が増えたと考えればいいか。Lvアップが安全に出来そうだし私にもメリットがあるな。


「じゃあ最後に治療のできる魔法使いに心当たりある?」

「それならギルドの横に治療院があるからそこにいるはずニャ。」


 あぁ、あの白い建物か。治療院って書いてあったから普通の病院みたいなものだと思っていたけど、そりゃあ魔法で治療できるんだからそこにいるよな。

 不安な点は回復面だ。ポーションによる治療は摂取してから体に吸収されるまでに多少の時間がかる。戦闘中に回復するのはなかなか難しい。その他の回復手段があるならそれを手に入れておきたい。


「ありがとう、それじゃあいろいろと準備するから4日後から迷宮に潜り始めるということでいい?」

「事情は話さなくてもいいのかニャ?」

「うーん、お互いに話しにくいことがあるのはわかっているから別にいいよ。ヒナは信頼できると思うし。もしヒナが話したくなったらその時に話してくれ。」

「わかったニャ。感謝するニャ。」

「まあ迷宮を踏破したときにその言葉を受け取るよ。今はまだ何もしていないし。」

「覚えとくニャ。」


 すっかりと冷めてしまったお茶を飲み干す。


「ごちそうさま、それじゃあね。」

「どういたしましてニャ。」


 ヒナと別れ、自分の部屋に戻る。ダートのメンテナンスをしながらまずこれからするべきことを整理しよう。

 アイテムボックスから汚れたダートとぼろ布、チェーンクリーナーを取り出す。ぼろ布である程度の汚れを落としたあとチェーンクリーナーをダートに吹きつけ新しいぼろ布で磨いていく。今回使うチェーンクリーナーは揮発性が高いタイプなのでしばらくすると乾いてしまう。これで一丁上がりだ。これをあと100本くらいか。面倒くさいな。

 まあ考えをまとめながら進めるか。


 ・迷宮について調べる


 ある程度は既に調べているが、本当に攻略を目指すなら各階層に出る魔物や罠の状況についても詳しく調べることが必要だろう。これはヒナに聞いてもいいな。また今度確認してみよう。


 ・広範囲殲滅系の手段を得る


 今回のように大量の魔物と退治した時に「落とし穴からさようなら」が使えない今の状況では何かしら別の一度に殲滅できる方法が必要だ。土魔法でそんなことをしようとすればすぐにMPが無くなってしまうし、アイテムボックスはヒナがいるから使えないし。使えるのは光魔法かDPで何か使えそうなものを変換するかだな。


 ・回復魔法を覚える


 ヒナはポーションを持っていくと言っていたが数に限りがあるのでやはり回復魔法は覚えたい。まずは治療院を当たってみよう。


 ・ダートの代わりを見つける


 これは案があるんだけど出来るかどうかわからないからな。とりあえずは用意だけしておいて次の迷宮に入るときに試してみるか。


 考えをまとめてもまだ半分ほど残っているダートを見ながら、なるべく夕食までに終わらせようと気合を入れ直した。

何事も手入れすることで長年使えるようになります。

もちろん自転車もです。

読んでくださりありがとうございます。

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RINの外伝の小説を書いています。次のリンクから読もうのページに行くことが出来ます。 「お仕事ですよ、メイド様!!」(飛びます) 少しでも気になった方は読んでみてください。
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