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RIN ~共に生きる異世界生活~  作者: ジルコ
第二章:メルリスの街にて
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旅立ち

いよいよ新章の始まりです。

評価していただいた記念に本日二話投稿予定です。

二話目は18時過ぎか最低でも20時過ぎには投稿します。

(そういえばメルリスまで何キロくらいなの?)

(ジンさん達が馬車で1週間くらいって言っていたから600キロ前後だと思うよ。一応途中に村もあるらしいから宿泊は問題ないと思う。)


 馬車の移動速度は大体、時速10~15キロだ。馬や人間の休憩を含めると走れるのは6、7時間。馬を使いつぶすような走り方をすれば速度は上がるがそんなことをするメリットはあまりないからな。


(じゃあ頑張れば1日半くらいで着けるね。)

(いやっ、ステータスも上がってるし出来ないことはないかもしれないがやらないぞ。一応2日目の夜、門が閉まる前に到着するつもりだ。)

(えー、そこは最速に挑戦!!とかしようよ。)

(危険は避けるのが一番だからな。それにせっかく新しい場所を走るんだから景色を堪能したい。)

(ちぇ・・タイチ、つまんなーい)


 何とでも言え。命以上に大切なものなどあまりないのだ。それにせっかく異世界に来たのだから、それらしい景色を見てみたいものだ。期待に胸を膨らませながらペダルを回した。


 3時間後。


(なあ、ルージュ。なんか最速に挑戦!!もいいような気がしてきたよ。)

(どしたの、タイチ?)


 あれからずっと走っているが景色に変化が全くない。広大な野原の中の道を永遠と進むだけだ。多少の傾斜などはあるが道も真っすぐのままだ。

 なんだ、異世界ってもっと特殊な環境とか奇妙な生態とか、特異な景色とかがあるもんなんじゃないのか。

 なんかモンゴルみたいだぞ。確かにこの光景も素晴らしいとは思うが3時間も同じ景色を見せられたらさすがに飽きる。


(そうだよな、異世界だからって期待のし過ぎは良くないよな。)

(まあ、なんとなく何を思ったかはわかったけど土魔法に集中したら?ほら、また制御が乱れてる。)

(あぁ、ごめん。)


 4時間ほど走ったところにあった一つ目の村は時間も早いので寄ることもせずそのまま通り過ぎた。村については見るべきところもあまりないとアンさんから教わっていたからだ。

 まあ、地元民と触れ合う楽しさはあるだろうが、時間は有効に使わないとな。


 時間を有効に使うと言えば、自転車に乗っているとすごくおなかが減る。カロリーを大量に消費しているからだ。そのまま何も補給せずに走り続けているとどうなるかというとハンガーノックという症状になる。


 ハンガーノックとはその名のとおりエネルギーを使いすぎて極度の低血糖状態になることだ。症状としては思考力の低下、手足のしびれ、動作の不自由、意識の喪失と死に直結することもある。


 普通の人はそんなことにはならないだろうと思うのだろうが、結構簡単になる。特にスポーツ自転車を始めたばかりの運動が得意な人は注意が必要だ。走りやすいため補給もなしに遠くへ行ってしまう。そして山などのコンビニなどが無いような場所でエネルギーが切れて痛い目を見るのだ。

 あの時助けてくれた植木屋のおばさん、本当にありがとうございました。もらったバームクーヘンとおにぎりの味絶対に忘れません。

 そういえばこの世界に来てすぐなったな。まああの時は仕方がなかったと思うが。


 まあそれはそれとして、そのハンガーノックにならないように補給をしなければならないのだが、いちいち自転車から降りて食べていては時間がもったいない。そのためサイクルジャージには背中にポケットが付いている。そこに食料などを入れておいて走りながら食べるのだ。慣れが必要だが意外と簡単に出来るようになる。


「とは言ってもアイテムボックスがあるから今は意味ないんだよなー。」


 配達の店で買ったサンドイッチを食べながらつぶやく。2日前に買ったものだが十分に美味しい。やはり便利だ。アイテムボックス。


(なんのこと?)

(いや、アイテムボックスがあるから後ろのポケット使わないなって。)

(何か入れておけば。)

(そうだね。とりあえず携帯食料でも入れておくか。)


 食料をマジックバックから取り出すように偽装するにしてもそのマジックバックに見せかけたカバンが狙われるかもしれないし。

 サンドイッチを食べ終え、干し肉とパンを包みごと背中のポケットに入れ走り続けた。

 数人の旅人や馬車と道中すれ違ったが、驚いてはいるようだったが特に何もなかった。ワクコのバイシクルのおかげだろうか。





 夕方ごろに2つ目の村へ着く。今日はここで宿泊予定だ。

 村に一つしかない宿へ向かう。


「いらっしゃい、宿泊かい?」


 小太りの40台と思われる女性が聞いてくる。いいお母ちゃんって感じの人だ。


「はい、一泊お願いします。」

「宿泊は大部屋が大銅貨2枚、個室が大銅貨5枚だよ。食事は別途下の食堂で会計しておくれ。宿泊客には一品サービスするよ。」

「それじゃあ、個室をお願いします。あと食事はすぐに食べられますか?」

「ああ、奥の食堂へ行ってくれれば食べられるよ。鍵を見せれば一品つけてくれるから。」


 大銅貨5枚を渡し、鍵を受け取る。さすがに1日中走ったので疲れた。早く食事を食べて水浴びをして眠ってしまいたい。


「そういえば水浴びってできますか?」

「裏の井戸のわきに衝立があるからしたければ自由にしていいよ。あんまり汚すんじゃないよ。」


 女将さんにお礼を言って食堂に向かう。食堂のおまけの一品は野菜のサラダだった。野菜炒めに野菜のサラダって健康には良さそうだがチョイスが間違っている気がしたが、ただなので突っ込まなかった。普通に美味しかったがアンさんの料理には負けていた。


 裏の井戸で水浴びしようとしたが衝立があったとしても下半身が隠れるだけで上半身は丸見えだ。男ならいいが女の人はどうするんだろうなとちょっと不思議に思った。

 ちなみに普通に道から見えていたのでそそくさと水浴びした。露出の癖はない。


 部屋に帰ってもう眠りたいところだがアンさんの指示が残っている。


(今日は何の日?)

(今日は毒草の日だね。)


 アンさんの指示は毎日種類を変えて、ステータス異常を引き起こす草などを食べることだった。ご丁寧にレベルによる食べる量なども指示されている。

 これを続けることで耐性系のスキルが上がるらしい。実際に成果は出ているしな。

 今までは料理に少しずつ混ぜられていたようだ。種類を変えるのは同じ種類ばかり食べると耐性が付く前に蓄積してしまって症状が出てしまうかららしい。


 自分が採取した毒草を自分で食べる。すごく青苦くて食べられたものじゃないが何とか飲みこむ。


(うわっ、まずそう。)

(むしろこのまずさを料理に混ぜて美味しくしていたアンさんがおかしいと思うんだ。)


 一応症状が出てしまったとき用に解毒ポーションも用意してある。少しは我慢したほうがいいらしいが。


(さてっと、それじゃあ光魔法の訓練でもしようか。)

(りょーかーい、じゃあ変身するね。)


 ルージュがシティサイクルに変身する。これで光魔法が使えるようになる。


(ライト)


 自転車のライトをイメージして前方を照らす。ランプの明かりしかなかった部屋に明かりが灯る。消費するMPはそこまで多くはないが維持するとなるともっと調整が必要だ。


(やっぱり明るくしようとするとMPを多く使うね。)

(でもMP少なくすると見えなくなっちゃうよ。)

(そこなんだよな。問題は。)


 どうしても放出する関係上、MPの消費量と光量が比例してしまうのだ。時と場合によって使い分けるか、ほかの方法を探すか考えないとな。


 じゃあ次は攻撃系を試してみるか。アイテムボックスから土の塊を取り出し床に置く。それに狙いをつける。


(レーザー)


 土の壁に赤い光が一点に灯る。イメージを変えていくと色が変わるので面白い。

 この魔法はもしかしたら出来るかなと思って試してみたら出来てしまった魔法だ。前世の知識で光が波であること、波の進行方向と波長とその波の山と谷を同一にすることが出来ればレーザーになることは知っていた。しかし原子を励起させる方法などわからないし、そもそも元となる素材も無い。でも魔法なら出来るんじゃないかと試してみたら出来てしまった。


 今は土の壁に当てているがほとんど威力はない。普通に殴った方がダメージは大きいだろう。しかし一つ有効だろう手段がある。目を狙うのだ。

 レーザーを扱うときに一番注意しなければいけないのはレーザーを目に入れないことだ。大学でも過去に失明した人の話を聞いたことがある。そしてその失明した視力は2度と戻ることはない。


 もちろん人間に向けて使うつもりはない。いざというとき用の奥の手だ。しかし使えないことと使わないことは同じではない。練習はこのまま続けていこうと思う。


(ねえ、ルージュ。なんだかいけない方向に進んでいるような気がするけどどう思う?)

(まあ、いいんじゃない。攻撃手段が増えるのはいいことだよ。)


 いつか聞いたようなセリフだ。

 光魔法で回復魔法も使えるらしいが、イメージが出来ないため使えない。今度けがをした時にでも使える人を探して使ってみてもらおう。

 見た目はとてもきれいなレーザーを見ながらそう決意した。

いよいよ迷宮都市メルリスに向かいます。

レーザーは本当に目に入ると本当にまずいです。大学の研究室で散々怖い話を聞きました。いたずら、ダメ絶対。

読んでくださりありがとうございます。


無駄知識をあなたに

(励起)

原子にエネルギーを与えて上準位(高エネルギー状態)にすること。この状態は非常に不安定なのですぐに安定状態へ戻ろうとする。この戻るときに発光したりするのでこの原理を利用してレーザーなどを作っている。イメージ的には三角形の山の頂上に球を置いたら転がり落ちて下まで行くような感じが近い。

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RINの外伝の小説を書いています。次のリンクから読もうのページに行くことが出来ます。 「お仕事ですよ、メイド様!!」(飛びます) 少しでも気になった方は読んでみてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] シティサイクルのイメージがピント来ない。光魔法を使うということはハブダイナモ付きか電動サポート車でライトがあるという感じなのだろうか。元々が通勤用の魔改造クロスバイクならライトは必須だ…
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