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RIN ~共に生きる異世界生活~  作者: ジルコ
第一章:イーリスの街にて
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魔法の源

昨日は初レビュー記念投稿で二話投稿しています。

ご注意下さい。

「というわけで早朝のギルドの仕事が減りました。」

(週3日勤務なんてリタイヤした人みたいだね。)

「言ってくれるなよ、ルージュさん。自分でもちょっとそう思っているんだから。」

(元々、朝の数時間しか働いていなかったんだから、あまり変わらないんじゃない?)

「まあ、それはそうだけれどさ。」


 ギルドの図書室の本もすべて読み終わってしまったので、午前中の予定がぽっかり空いてしまった。


「それで今後の午前の予定を考えているんだけれど、ルージュは何かしたいことはある?」

(僕はタイチと一緒なら何でもいいよ。)

「そっか、一応いくつか案はあるんだ。1つは魔法の訓練をすること。せっかく土魔法が使えるんだから今後のことも考えて、ルージュだけじゃなくて自分でも使えるようにした方がいいと思う。」

(確かに戦える手段が増えるのはいいことだね。)

「次は採取の依頼を受けること。本で読んで知識はあるけれど、実際に採取はしていないからその経験が必要だと思う。ルージュを走らせることも出来るしね。」

(そうだねー。)

「最後がアンさんの訓練時間を増やすって言う案だけれど。強くなるためにはこれが一番いいのかもしれないけれどボロボロになりそうなんだよね。」

(とりあえず、アンさんにも相談してみたら?」

「そうしてみるか。」


 二人で考えても決め手に欠けるためアンさんの意見を聞いてみよう。



「そうね、その中なら魔法の訓練が今一番大事かしら。」

「そうなんですか?てっきり訓練時間を増やすかと思っていました。」

「タイチもだんだんと体力はついてきていますが、まだ一日中そちら方面の訓練をする状況ではありませんからね。」


 やっぱりあるんだ、そんな訓練。体力はついてきたとちょっと自信があったんだけれど、これでも無理なのか。


「魔法の指導ができればいいのですが、少し思うところもありますので、ひとまず自分で考えてみなさい。」

「わかりました。」


 ルージュがすでに使えているから何とかなるとは思うけれどちょっと不安だな。


「少し手助けを。魔法は同じ土魔法のスキルでも各国によって使える魔法が違います。石の弾だったり、土の壁だったり、地面をへこませたり、ですね。また、その魔力の出どころも各国によって違う場所と考えられています。頭、心臓、腹が多いでしょうか。ヒントはここまでです。後は自分で考えなさい。」

「ありがとうございました。いろいろと試行錯誤してみます。」


 ヒントはもらった。とりあえず自分で出来ることを考えてみますか。


「前にも聞いたかもしれないけれど、ルージュはどうやって魔法を使っているの?」

(なんとなく使えるなーってわかるから、僕の場合は地面よ平らになれーって感じに命令すると使えるかな。)


 うわぁ、やっぱりアバウトだな。天才肌の感覚派と言ったところか。指導者には向いていないな。


(わかった?)

「わからないことがわかった。とりあえずルージュの言う、なんとなく使えるなーと言う感覚を見つけないとな。」


 アンさんのヒントから考えると魔力の出どころは体内に在りそうだけれど、どこっていうのが決まっているわけではないんだよな。とりあえず自分自身と向き合う方法を考えるか。


「ルージュ、ちょっと座禅してみるよ。」

(りょーかーい、終わったら呼んでね。)


 やはり、ルージュは慣れているな。前の世界でも悩んだり自分自身と向き合いたいときは座禅していたしな。

 座禅と出会ったのは大学生のころだ。

 自転車で旅行に行こうと考えたのだが、時間はあるがお金はそこまで無い。ホテルに泊まったりすれば旅行期間が短くなってしまう。

 苦肉の策で考えたのが一人用のテントと寝袋を持って野宿することだった。


 最初は堤防などで寝ていたのだが、夏なので寒くはなかったが、蛇、ムカデ、蚊と散々な目にあった。

 仕方がないので公園の隅にテントを張って寝ようとしたときに出会ったのがお寺の住職であった。

 住職は夏休みの非行防止のために見回りをしていたそうだが、事情を聞くと寺の境内を使っても良いと許可をくれた。その日は久しぶりに安心して寝ることが出来た。

 翌朝4時半ごろに目を覚ますと住職が境内の掃除をしていたので手伝った。その後、朝の勤行があると言うので興味本位で参加した。

 住職の読経が朝のお堂に朗々と響く中、正座をして住職と縁が出来たことに感謝していた。


 勤行後、足がしびれて動けない私に対して微笑みながら朝食に誘ってくれた。とても質素な朝食であったがなぜか心が洗われるような気がした。

 この後、お堂の横にある墓地の掃除をすると言ったので一緒に草むしりをして過ごした。2時間ほど続け日も高くなってきたころに、住職から座禅をしてみないかと誘われた。

 なんとなくわびさび、渋いと思った私は二つ返事でお願いした。


「座禅の目的にもいろいろあります。それぞれの宗派によっても違いますし。ただ私としては太一君のような一般の人は難しいことを考えなくてもいいと思います。無になると言いますが、それは日々修行している私たちでも難しいものです。太一君が座禅するときはひたすらに自分自身と向き合う時間だと考えるといいと思いますよ。」


 座禅に入る前に住職に心構えを教えてもらった。ただその後に、偉い人に知られたら怒られちゃうかもしれませんから内緒ですよ、とウインクされた。意外とお茶目な住職だった。


 足を組み座禅に入る。アドバイス通り自分の過去、現在、未来を思い、どうしたいのか、何がしたいのかを考えていく。最初はいつ「喝」みたいな感じで肩を叩かれるんだろうとちょっと思っていたのだが、考えに没頭するうちにそんな思いは消えてしまった。

 気温は高いのだが、風が吹いており気持ちがいい。蝉の鳴く声が聞こえる。自分の心臓が脈打っているのがわかる。なんだろう、うるさいのに静かだ。おもしろいな。


 肩をポンポンと叩かれ、はっと気が付く。住職が笑って立っていた。


「太一君は面白い子だね。」


 住職がなぜそう言ったのかはわからなかったが悪い気はしなかった。


 今後の予定を聞かれたので旅行を続けると伝えると、知り合いの寺を紹介してもらえた。向こうも人手が足りていないので手伝いをしてあげて欲しいと頼まれたのでこちらこそありがとうございますと返した。

 今回の出会いの記念にと言う事で住職から神社名の横に自転車の絵を墨で描いた半紙をいただいた。住職は達筆だった。

 その旅の後半はほぼ寺巡りと化した。泊めてもらい、手伝いをし、新しい寺を紹介してもらう。

 人のつながりの大切さを知った旅だった。


 帰ってから泊めていただいたお寺すべてにお礼の手紙を出し、一番初めの住職とは毎年年賀状をやり取りするようになった。

 2年前に来た年賀状に、「大病を患い、あやうく私が仏様になるところでした。」と相変わらずの達筆さで書いてあったときは思わず電話をかけてしまった。とても元気そうだった。

 住職間の鉄板ネタなのだろうか。それ笑えないから、住職。

 あっ、そういえば住職にお別れの手紙を出せなかったな。申し訳ないことをしてしまった。


 それはともかく座禅をしよう。床に座り体勢を整える。自分自身に問いかけていく。

 この世界に来てからのこと、これからのこと、なぜ魔法を使いたいのか、魔法とは何か、答えのわからない疑問もある。様々な問いかけとそしてその答え。浮かんでは消えていく。

 自分の体の中を見つめる。何か変わりはないか。わからない。なにかがあるような気もするがそれが掴めない。もどかしい時間が続く。


 一体どれだけの時間が経ったのだろうか。不意に指先から何か温かいものが流れ出る感覚がある。

 それを感じ取れた途端、全身を同じようなものが流れているのが感覚でわかる。血液ではない何かだ。

 心臓を大元として全身を駆け巡り、指先からルージュへと続いていることを認識できたとき、座禅を終わらせた。


(あっ終わったかい?)

「ああ、おそらくこの感覚が魔力なんだと思う。もしかしてルージュはさっき魔法を使った?」

(うん、何となく使った方がいい気がしたから。)


 やはりあの温かいものが魔力なんだろう。


「ありがとう、ルージュ。おかげで魔法が使えるようになりそうだ。」

(どういたしまして。)

「お礼にたっぷり整備してやろう。」

(おおー、太っ腹ー。)


 無邪気に喜んでいるルージュとのつながりを感じながら、相棒に恵まれた幸運に感謝した。

お寺は泊まる場所ではなく信仰する場所ですので無理やり押しかけて泊まるようなことはしないでください。そんな人は少ないと思いますが。

読んでくださってありがとうございます。


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RINの外伝の小説を書いています。次のリンクから読もうのページに行くことが出来ます。 「お仕事ですよ、メイド様!!」(飛びます) 少しでも気になった方は読んでみてください。
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