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RIN ~共に生きる異世界生活~  作者: ジルコ
第一章:イーリスの街にて
28/181

原点

昨日はいろいろな記念に二話投稿しています。

ご注意下さい。

「あらあら、お友達が二人に増えましたか?」

「友達じゃないわよ!!ジテンシャの研究に来ただけよ。それに私の方がかなり年上よ。」

「冗談ですよ。ワクコーリアルさん。その節はすばらしいダートを納品いただきありがとうございました。」


 アンさんが、にこにこ笑いながらワクコを迎える。


「どういたしまして。それでジテンシャはどこにあるの?」

「玄関の奥に置いてありますから持ってきます。それとメイド長、カイが斧を試したいらしいので裏庭にあった薪を割ってもいいですか?」

「冬までは使う予定もありませんが、こちらとしても助かります。どうぞお使いください。」

「助かります。」


 カイが斧を持って裏庭に進もうとする。


「あっ、カイ。そっちは駄目。」

「なん・・・」


 忠告するも間に合わず、カイの姿が消える。慌てて落とし穴へ走っていきカイを引き上げる。


「なんだ、これは?」

「落とし穴だよ。訓練で使うんだ。他にもあるからついてきて。」

「あ、あぁ。」


 若干カイが引いている気がするが、冒険者の訓練を見たのが初めてなのかもしれない。

 裏庭の薪割り場へカイを案内し、玄関へ戻ってくるとすでにワクコはルージュを見ているところだった。本当にマイペースだな。

 アンさんが見ていてくれるので無茶なことはしないだろうと考え、ルージュに(よろしく)と念話で伝え訓練を始めた。


 いつも通り外周を走り、庭の罠を回避しながら的に向かって投擲していく。外周の目印は小さくわかりにくくなっており、数も倍の20ほどになっていた。

 しかしあまり変化を感じない。ただ、数が増えているだけの印象だ。アンさんに言って変更してもらおう。

 庭は、グローブを着けるようになってから急激に投擲の精度が上がったため、的が多少遠くても、罠のない場所で投擲することで罠を回避できることが多くなった。

 それでも引っかかってしまうことがあるのが恐ろしいところだ。一部の罠は発動後に避けられるようになったので土まみれになる回数は減った。


 いつも通りに10周を終え、玄関へ戻るとカイとワクコが唖然とした表情で私を見ていた。


「カイ、斧の調子はどうだった、あと、ワクコはもういいの?」

「あぁ、斧は素晴らしい切れ味だ。手にもなじむ。」

「ジテンシャはまだまだよ・・・。というか何よ、今の訓練?」


 カイも同意とでも言うように頷いている。


「メイド長の訓練メニューのランニングだよ。」

「ランニングってあんた、トラップだらけの庭を走りながらダートを投擲するってランニングとは言わないわよ。」

「あぁ、庭は追加のコースだから。外周を2kmくらい走っているしその間は目印を見つけるくらいしかしていないよ。」

「それもランニングじゃないでしょ!!」


 何を怒っているんだろう。カルシウムが足らないのか。


「ワクコ、牛乳と小魚をしっかり食べた方がいいよ。」

「小さい時からいっぱい食べてるわよ!!」


 あっ、なんか古傷をえぐったようだ。身長を伸ばしたかったのかもしれない。


「ワクコは冒険者の訓練を見るのは初めてだろ。このぐらいしないと死んじゃうんだぞ。」

「なんか納得いかないわ。」


 何と言われようとも訓練をさぼるわけにはいかないのだ。旅をすると言う大きな目標もあるし。


「そういえば、アンさん。外周なんですが簡単なので何か変更できませんか?」

「そうですか、成長しましたね。また考えておきます。」

「じゃあ、次の訓練に行きますね。」

「そうか、それじゃあ俺はそろそろ帰る。」


 カイが斧を大事そうに包みながら屋敷の門の方へ向かおうとする。


「ごめんね、カイ。また今度森にでも遊びに行くよ。」

「ああ、待っている。」


 二人で拳をぶつけ再開を約束した。



 ダート、開錠の訓練を終えたが、まだワクコはルージュを観察してパーツの幅や組み合わせなどを確認しているようだ。


「ワクコ、何かわからないことでもある?」

「とりあえず、構造は理解したわ。この滑車の連結部分を作るのがネックになりそうね。後は馬車とかの応用で何とかなると思うけれど。」

「チェーンの部分か。確かにこれを金属で加工しようとすると時間と手間が掛かるだろうね。ちょっとそのあたりは案があるから後で話を聞いてほしい。」

「わかったわ。アンさんに夕食にも誘われているからその時にでも話しましょ。」


 また紙に何かを書く作業に戻ってしまったワクコを置いてアイテムボックスの訓練に向かった。すぐに気絶した。


 ルージュの念話で起こされ、食堂に向かうとすでにアンさんとワクコが席に座っていた。

 三人そろったので食事をはじめる。


「そういえば滑車の連結部分で話があるって言っていたけれど何?」

「その前に、ワクコって木馬を作ったことある?」

「それは子供が揺らして遊ぶ用、それとも大人用?」

「大人用って?」

「さんかく・・・」

「ちょっ、ちょっとストップ。」


 見た目が子供のワクコに言われるとショックが大きすぎる危険なワードだ。


「そんなの注文する人がいるの!?」

「貴族にお得意様がいるのよ。毎回いい値段で買ってくれるから助かっているわ。」


 何のことでもないような言い方だが、女性をそんな風に扱うなんて、ジンさんの言うとおりやはり貴族は危険だな。


「たまに工房まで来て、乗り心地を確かめていくから好きなんでしょうね。」

「えっ、自分で乗るの?」

「乗るみたいよ。」


 うん、違う方面で貴族は危険だな。


「作ったことがあるならちょうど良かった。木馬の足の部分に二つ車輪を付けたものを作ってほしいんだ。もちろん子供用の方ね。」

「いいけれど、それジテンシャに関係あるの?」

「あるある。とても重要なことなんだ。」


 ワクコに作る理由を説明していく。

 ワクコが初めて来襲した後、私とルージュが相談した結果、自転車を普及させる前に2輪で走ることに慣れさせることが必要だろうという結論になった。

 そこで自転車の原点ともいえる「ホビーホース」を作って子供や大人に遊んでもらおうということになったのだ。

「ホビーホース」とはその名の通り木馬に車輪がついたもので、地面を蹴って進む遊びだ。

自転車に乗るために必須のバランス感覚を養うことが出来るし、この世界では馬に乗ることが多いが、初心者の落馬事故も多いらしいのでその練習方法として提供すれば子供にも大人にも売れると考えたのだ。


「作れるけれど、私はジテンシャが作りたいのよ!!」

「でも最初から自転車を作っても普及しないと思う。すぐに乗ることが出来るものじゃないからね。普通の人のためにならない物になると思うよ。」

「うぐっ。わかったわよ。それで滑車の方はの話は?」

「とりあえず案はあるんだけど、まずはホビーホースの方かな。木材はケイルさんに言えば安く都合してくれると思うけれど。」

「早くジテンシャ作りたいから速攻で作るわよ!!」


 そういってすぐに帰ってしまった。工房まで送ろうかと言ったが必要ないと言われてしまったので玄関まで見送った。ごはんはしっかりと完食していった。


 翌日、ギルドから屋敷に帰るとワクコがホビーホースの試作品を持って待っていた。


「作ったわよ、これでいいでしょ!!」

「早いね。」

「昨日帰って速攻作ったわよ!!」


 写真では見たことはあったが、乗ったことは無いため、実際に乗せてもらったがルージュとは違い、地面からダイレクトに振動が来るためお尻が痛い。

 ハンドルがないため方向転換が出来ない。


「これ、乗り心地最悪だよ。とりあえず座るところにクッションつけた方がいいと思う。あと馬の首に持つ部分をつけて、車輪の部分を胴体から三角形の支柱を出して支えるようにして左右に動くようにすることはできる?」

「注文が多いわね。すぐに直してくるから待ってなさい。」



 そこからワクコが試作品を持ってきては駄目だしして、ホビーホースを改良していった。

 最初は怒っていたワクコだったが次第に職人魂に火がついたのか私の指摘以上の改良をしてくるようになった。

 そして3日後


「うん、これなら十分商品になると思う。」

「ならなかったら怒るわよ!!どんだけ直したと思ってるの。」


「ホビーホース Mk7」

 ついにこの世界の自転車の原点が出来上がったのだった。

すぐに自転車を開発すると思ったでしょ。それは罠だ。

ちなみに自転車の発明は2~300年前です。意外と最近です。

それはさておき読んでいただいてありがとうございます。

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RINの外伝の小説を書いています。次のリンクから読もうのページに行くことが出来ます。 「お仕事ですよ、メイド様!!」(飛びます) 少しでも気になった方は読んでみてください。
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