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RIN ~共に生きる異世界生活~  作者: ジルコ
序章:地球ではないどこかにて
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天使との遭遇?

一日1話くらい投稿できたらなーと考えています。

「おかえりなさいませ。お疲れ様でした。」


 制覇した喜びの瞬間に水を差されたが、誰かがいたと言う事に驚き、さらにその言葉が気になった。おかえりなさいませって、もしかして新しく宿でもできてその敷地に入ってしまったのだろうか。


「申し訳ありません。宿泊者ではないんです。」


とその白いスーツを着たボブカットの女性に不審者ではないアピールをする。きれいというよりはかわいいという表現が似合う20代前半と思われる女性だ。彼女は私を見てちょっと驚いた顔をした。


「姿を残したままここに来る方はめずらしいですね。認識番号はわかりますか?」

「・・・」


 姿を残したまま?認識番号?問いかけに対する疑問が多すぎて答えることができず黙ってしまう。


「うーん、とりあえず名前と生年月日教えてもらえますか?」

「永山 太一、1985年5月7日生まれです。」

「それではちょっとお調べしますのでお待ちください。」


 女性はいつの間にか取り出したタブレットを操作している。名前と生年月日から探しているのだろう。予約していないのでないと思うが。


「あれっ、ないなー。うーん・・・。」


 女性はだんだんと慌ててきたようで独り言をつぶやきながら操作を続けている。なんとなく罪悪感が・・・。


「あの、予約していませんからリストとかにはないと思いますよ。」

「いえいえ、今日ここに来られる方はすべてのっているはずなんですよー。住んでいた場所とかわかりますか?」


 話がかみ合っていないと思ったが、とりあえず住所を教えると、またタブレットを操作して探している。しかしやはり見つからないようで焦りからかだんだんと彼女の顔が赤くなっていく。


「待たせてしまって本当にごめんなさい。ちょっと先輩に聞きに行ってもいいですか?」


 だんだんと話し方がフランクになってきたがこれが地なのであろう。私が苦笑しながら了承すると奥の方にある建物へと歩き出した。

 たぶん彼女は新人なのだろう。お客以外が来るはずがないという先入観から私の話を聞かずに対応してしまっているのだろう。先輩ならすぐに誤解に気づくだろうなと思いつつ彼女の後をついて行った。

 向かった建物は四角い箱をコンクリートで作りましたという感じの何のデザイン性も感じられない建物で両開きの木の扉以外には窓さえないある種、異様ともいえるシンプルさだ。

 扉をくぐり中に入ってみるとカウンターがすらっと並んでおり、同じ制服を着た男女20人くらいが受付をしているようだ。そこまでは理解できた。理解できないのはふわふわした光がその受付に並んでいる光景だ。


「すみません、あの光って・・・」

「あっ、先輩。助けてください。全然リストに該当が無いんです。」


 私の問いかけに気づかなかったのか彼女は奥の方にいる男性へと駆け寄っていった。そのアフロヘアの男性は休憩にでも行くつもりだったのか、邪魔されてとても面倒くさそうだ。


「ワタシ、キュウケイイク・・・。ホカノヒト、アタル。オーケー?」

「なんで片言なんですか!!しかもオーケーだけすごく発音いいし。助けてくださいよー。」

「やだ、めんどくさい。」

「即答!?私の教育担当だったじゃないですかー。」

「3年前までな。」


 漫才のように話す二人を見ながらとりあえず待つことにした。ご飯に間に合わないかもしれないなー、同居人が怒らないといいけどな、と考えていると、結局説得されたのか男性がこちらにやってくる。


「あいつが面倒掛けてすまなかった。あいつの話だけだといまいちわからないから詳しく話してもらえるか?」

「ええ、いいですよ。」


 先輩さん(仮)の後をついていき「面談室」と書かれた小部屋に入り席に座る。

 とりあえず聞きたいことやつっこみたいことはいろいろあるが、名前などの個人情報から、ここに到着した経緯、女性との会話について説明していく。

 先輩さんはタブレットにメモを取りながらときおり質問し、私もそれに答えていく。説明が進んでいくにつれて、難しそうな、面倒くさそうな顔になっていった。そして一通り説明が終わった。


「後輩、全認識番号で一度検索しろ。」

「は、はいっ」


 ぼーっとしていたところに急に呼びかけられた後輩さんが慌ててタブレットを操作し始める。そしてしばらくして


「あっ、先輩ありましたよ。認識番号 96153258614221 の方です。」


 後輩さんが嬉しそうに報告する。その様子に若干あきれながら先輩さんが言葉を続ける。


「それでその認識番号の方がここに来る予定はいつになっている?」

「えーっと、47年後ですねー。えっ、これってどういうことですか?」

「イレギュラーってことだ。」

「でも、普通の人には道は開きませんし、開いたとしても一歩でも足を踏み入れたらいつの間にか戻ってしまうはずですよね。」

「そうだな。」

「それじゃあ、ありえないじゃないですか。エンジンも止まるから車やバイク対策も万全って研修で技術部の人が言っていましたよ。」

「お前、話を聞いていただろ。太一さんは自転車で一度も足をつかず登りきったんだよ。」

「えーと、つまり・・・」

「想定外だ。」


 先輩さんのしかめっつらと、後輩さんのあわあわした感じが対称的だなーと他人事のように見つめているとなんとか今後の対応策が決まったようだ。


「太一さん、すまんが俺は上司にことの次第を報告してくる。いろいろと疑問もあるだろうから後輩に事情を聞いてくれ。」

「えー、私案内業務があるから無理ですよー。ほらっ、私先輩と違って職務に忠実ですし。」

「元はお・ま・え・が俺の所に連れてきた厄介ごとだろうが。」

「痛い、痛いですー。わかりました、わかりましたから離してー。」


 おおっ、アイアンクロー。後輩さんがじたばたしているのに外れないとは先輩さんは意外と体育会系か?あっ、だんだん後輩さんが静かになり始めた。あれは泣いているんじゃないか?

 先輩さんは後輩さんをぽいっと投げ捨てると、アフロ頭をぼりぼりとかきながら面倒くさそうに部屋を出ていった。

「あの、大丈夫ですか?」


 心配になって声をかけたが床にふせったままえぐえぐしている。仕方がないのでしばらく待っているとだんだん落ち着いてきたようだ。


「お見苦しいところをお見せしてすみませんでした。とりあえず説明をさせていただきます。」


 目が赤くなっているがさすがに自分で職務に忠実というだけある。しっかりと切り替えている。


「今度頭に卵のっけてやる。」


 あっ、前言撤回。聞こえないように言ったつもりだろうけど聞こえてるからね。不満たらたらですね。


「えっと、まずこの場所の説明から始めますね。この場所は魂が生まれ変わる場所。分かりやすく言えば天国と地獄の手前って感じですね。まあ、天国、地獄なんて実際には無いですが。」

「ちょっと待ってください。つまりここは地球ではないと言う事ですか。」

「そうですね。」

「信じられません。」

「お気持ちはわかりますがとりあえず一度そうかもしれないと信じて話を聞いてもらえませんか。そうでないと話が進みません。」


 納得できないが確かに話が進みそうにないので了承しうなずいた。仕事モードの後輩さんはしっかりして見えるし。


「ありがとうございます。次にここで何が行われるかですが、この世界の管理者は5つの世界を管理しています。魂が生物として生まれ、そして死ぬとこの場所に戻ってきます。この時その生き方によってポイントが付与されます。ポイントを使って次の世界で生まれる条件を選び生まれ変わります。まあ、強制的な就職案内所みたいなものですね。」

「同じ世界に生まれ変わることは?」

「ありません。同じ場所にとどまると魂が淀んできてしまいますから。」

「ほかの4つの世界も同じような感じなのですか?」

「違いますね。世界ごとに様々なコンセプトがあります。たとえば太一さんが住んでいた世界は、助力控えめ、才能表示なし、外的脅威なしです。」

「つまり・・・」

「管理をあまりせず放置したらどうなるかというコンセプトです。もちろん絶滅するような状況は回避されますよ。才能表示がないためいろいろと模索するようになり科学が発展したのが特徴ですね。」

「外的脅威とはなんですか?」

「いわゆる魔王と呼ばれる存在ですね。ただこちらは管理しているところが違うため詳細はわかりません。魂の量の調整をしていると聞いています。」


 うわぁ、ファンタジーだ。同居人なら泣いて喜びそうだ。でも管理しているところが違うから分からないってなんか会社みたいだな。


「次に私たちについてですが、太一さん。私たちはどんな存在だと思います?」


 後輩さんがちょっと得意げに聞いてきた。当てられるものなら当ててみろって感じだ。


「話の流れからすると「天使」かと思いましたが、違うみたいですね。」

「えっ、なんで違うって分かったんですか?」

「いや、あなたの態度で・・・」

「そうですかー。びっくりさせようと思ったんですが、残念です。まあしていることは天使という概念と同じようなものですが。実は元々の私たちは太一さんたちと同じ魂です。」

「それにしては全然違うような気がしますが。」


 窓口に並んでいたのは光の玉だったし。


「さきほど生き方によってポイントが付与されると言いましたよね。それを一定のポイント貯めるとこの仕事に就けます。ちなみに私はこの仕事について10年目なのでまだまだ新人ですね。」


 10年仕事しているのに新人か。時間の尺度が違うのだろう。


「とりあえずこの場所の説明としては以上です。何か質問はありますか?」

「ちょっと考えることが多すぎるので、時間を貰えますか?」

「わかりました。だいぶ長く話しましたしちょっと休憩しましょう。なにか飲み物を持ってきますからリクエストは有りますか?」

「ありがとうございます。それでは緑茶で。」

「しぶいですね。了解です。」


 かるく敬礼しながら後輩さんが部屋から出ていく。今のうちに考えを整理しておこう。


 ケース1:宗教関係

 実はここは宗教の本部で信者にするために私をだましている。

 違うな。そもそもここに来たのは自分のせいだし、偶然来た人に対して勧誘するなら先輩さんと後輩さんの態度は明らかにおかしい。一人にして冷静にさせる必要はないし、偶然やってきたのに窓口に並んでいた光の説明がつかない。


 ケース2:素人びっくり番組

 テレビの企画でびっくり番組をとっていて自分はその騙され役。

 これもないな。そもそもこんな人気のない山の中で行うメリットがない。普通の人は来ないだろうし。


 ケース3:実はすべて真実

 後輩さんの説明の通りここは地球ではない。

 違うと思う、と言うか思いたい。常識的に考えてありえない。完全に否定できる材料はないが。


 ケース4・・・思いつかない、発想が貧困な自分が恨めしい。同居人に相談したい。あいつ発想だけは豊かだからなー。

 そうだ、電話すればいいのか。いままで怒涛の流れに流されまくり気がつかなかったが携帯があるんだから連絡が取れるじゃないか。

 カバンの中からスマートフォンをとりだし電話しようとしたが「圏外」表示。

 ため息をついて再度思考に没頭するのであった。


読んでいただいてありがとうございます。

感想、誤字指摘などお待ちしています。

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RINの外伝の小説を書いています。次のリンクから読もうのページに行くことが出来ます。 「お仕事ですよ、メイド様!!」(飛びます) 少しでも気になった方は読んでみてください。
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