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RIN ~共に生きる異世界生活~  作者: ジルコ
第五章:それぞれの戦い
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街道での戦い(1)

「ねーねー、ヒナねえ。それでどこまでいったの?」


 レインスが襲ってくるフォレストウルフを殴りつけながらニヤニヤ顔で尋ねる。鼻っ柱を強打されたフォレストウルフがキャンと悲鳴をあげながら地面を転がる。


「うるさいニャ。タイチとはそういう関係じゃないニャ!」


 久々の刀の試し斬りがてらいつもとは違う胴体を斬ったり、のど元に突きを放っていたヒナが面倒くさそうに答える。刀を振るうときは神経を使わなければ駄目なのだ。力の掛ける方向と刃筋が違うと刀が折れたりして駄目になってしまうし、骨などの硬さの違う部分で刃が流れてしまい思わぬ方向に行ってしまう事もある。まさしく斬る武器というのが刀の長所であり短所でもあるのだから。


「え~、俺は別にタイチ兄ちゃんとは一言も言ってないけど~。どうしてヒナねえはタイチ兄ちゃんの事だと思ったの~?」


 飛び込んできたフォレストウルフの顎下を殴る。ゴキっと言う骨が折れる音がし、地面に崩れ落ちたフォレストウルフはピクピクと動いていたがしばらくして動かなくなった。

 その様子を満足げに眺めていたレインスだったが、いつの間にか自分の首筋1センチのところに刃があることに気づき戦慄する。


「冗談はほどほどにしたほうがいいニャ。」


 うわー、ちょっとやりすぎたとレインスは後悔した。ヒナねえのここまで冷めた声は久しぶりに聞いた。確か前はヒナねえを生け贅にして母さんの訓練から逃げて遊びに行ったときだったはずだと思い出す。


「はい。ごめんなさい。」


 素直に従うことにしたレインスであった。


 現在2人がいるのは猫人族の里のあるネルタ大森林中心部の迷宮の10階層だ。ヒナの訓練のためと言う事もあるが1番の理由はレインスが強く希望したからだった。


「この方法ってLvは結構上がるけど戦い方が広がらないよね。」

「そうだニャ。手っ取り早く強くはなれるけど経験は積めないから訓練するなりしないとスカスカの強さになるニャ。」

「まあそんなに簡単じゃないってことだね。」

「そうだニャ。」


 どうせ戻るのだからとメルリスでたくさん買ってきたマジックバッグに、解体しないまま詰め込んでいく。マジックバッグ代は必要経費として里からお金が出ているのでヒナの損は無い。


「じゃあそろそろ帰るかニャ。」

「マジックバッグもいっぱいになってきたしね。」


 2人が去った10階層には血の匂いの他は何も残っていなかった。


「ただいま、レオノール!」

「GRUUU。」


 レインスが寝そべっていたレッドドラゴンのレオノールに駆け寄っていく。レオノールも起き上がり咽を鳴らして歓迎しているようだった。


「行きも思ったけどいつの間にそんなに仲良くなったニャ?」

「ん-と、ヒナねえ達が出ていくちょっと前に夜にルージュと会ってさ、遊びに行ってほしいって言われたから通ってたら仲良くなった。」

「KRU!」


 そうだ、と言わんばかりにレオノールが吠える。レインスはそれを聞いて笑いながら今日の戦利品であるフォレストウルフをレオノールの前に並べていく。


「食べていいよ。」

「KRUUU!!」


 バキゴキといい音をさせながら骨ごと噛み砕いてレオノールが食べていく。山積みにされていたフォレストウルフはしばらくしてすべて胃の中へ消えた。


「じゃあまた明日ねー。」

「KRUKRU。」


 レインスが大きく手を振るとレオノールも尻尾を振った。尻尾は途中で切れてしまっているがそれでもその威力で周囲の草がなぎ倒される。その桁違いの威力を見てヒナは考える。はたして自分にレオノールの尻尾を斬ることは出来るだろうかと。

 ヒナ自身の戦いのスタイルは相手の心理を読む共感と圧倒的なスピードによる弱点への一閃だ。それが合っていると思っているし今まではそれで戦い抜くことが出来た。しかしドラゴンのようなはるかに格上の相手に対して今のままで通じるかと言えば否と言わざるを得ないだろう。タイチと同じことが出来たとは思えない。

 おそらくタイチと今、1対1で本気で勝負すれば自分が圧勝できるだろう。しかし1か月後なら、1年後ならどうだろう?出会ったのは半年ほど前のはずだがその時はLv10にも満たなかったはずだ。タイチは急速に強くなる。まるで2人分成長しているかのように。いつか追い越される日が来るかもしれない、守ってもらう立場になってしまうかもしれない。


「そんなのは嫌だニャ。」


 ぼそりとつぶやかれたその言葉は誰にも聞かれることなく消えていった。





「ヒナ、レイシス、ルージュちゃん御飯よー。」


 ミーシャの声が響き、居間に5人が集まる。


「わーい、ミーシャのご飯だー。」

「あらあら。」


 ルージュがダダダダッと走り自分の席に着くと、手を合わせて今か今かと目をキラキラさせながら待っている。その様子を微笑ましくラージュとミーシャは見守っていた。


「では、いただきますニャ。」

「「「「いただきます」」」ニャ。」


 今日の夕食も特別なものではない。白米に大根の味噌汁、ミルオウルの肉野菜妙め、漬物、デザートにリンゴがカットされたものがついている。特別な料理でないからこそ料理人の力量がはっきりと出る料理だった。


「おいしーい。」

「ありがとう、ルージュちゃん。ほらお口にご飯粒がついているわ。」

「えっ、本当?とってとってー。」

「もう、しょうがないわねー。」


 ミーシャがルージュの口元についたご飯粒を取り自分の口へと運ぶ。


「ありがと、ミーシャ。」


 ルージュがニパッと笑い、それにミーシャが聖母のような笑顔で微笑み返す。


「ねえ、ヒナねえ。」

「なんニャ?」

「ルージュの方が親子っぽくないか?」

「レインス・・・」


 ヒナが悟りを開いたような表情でじっとレインスを見る。


「気にしたら負けニャ。」

「ああっ、なんかヒナねえがよくわかんないけど諦めてる!?」


 食事はいつも通りにぎやかに進んだ。





「あっ、そうそう。タイチから連絡でそろそろだって。」

「ああ、こちらにも先ほど情報が入ってきているニャ。街道を西進してくる騎士団がいるそうだニャ。数はおよそ二千。明日か明後日には1番近い街道を通過するはずニャ。」


 ルージュの言葉にラージュが付け加える。


「仲間同士で争うなんて馬鹿みたいじゃねえ?」

「それがわからない愚か者が多いニャ。」

「まあこの里とは違いますからね。」

「それで、本当に手助けは必要ないのかニャ?」


 ラージュの言葉には重みがあった。しかしそれにあっさりとルージュは答える。


「いらな-い。」

「タイチとも相談してお父さんたちが動けば猫人族全体に被害が及ぶ可能性があるからそれは無しと言う事に決まっているニャ。まあ私もわからないように姿は見せないつもりニャ。」

「そうそう、たぶん余裕だと思うし。」

「まあ、そうだニャ。」


 自信満々に答える2人を見てラージュもそれ以上は何も言わなかった。





 翌日。


「じゃあ行ってくるねー。」

「たぶん数日中には戻るニャ。」

「はい、行ってらっしゃい。帰ってきたらごちそう用意するわね。」


 全身に真っ黒なフードをかぶり、マジックバッグを2つ持った怪しげな2人が屋敷を出ていく。言うまでもなくヒナとルージュだ。

 2人はまるで散歩にでも行くかのように軽やかな足取りで森へと進んでいく。これから二千を超える騎士団の足止めをしに行くようには全く見えなかった。


「忘れ物は?」

「ないニャ。」

「心の準備は?」

「とっくに出来ているニャ。」

「お昼の準備は?」

「ああっ、忘れたニャ!!」

「後でタイチに頼んでおくね。」


 2人はとてつもなくいつも通りだった。

これから数話ヒナの戦いです。

ヒナの戦いかはちょっと微妙ですが。

読んでくださってありがとうございます。

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RINの外伝の小説を書いています。次のリンクから読もうのページに行くことが出来ます。 「お仕事ですよ、メイド様!!」(飛びます) 少しでも気になった方は読んでみてください。
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