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RIN ~共に生きる異世界生活~  作者: ジルコ
第四章:テンタクルの街より
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中級迷宮の初ボス

 攻略5日目。いよいよ10階層のボスを相手にすることにした。本当は8階層の探索をしたいのだがいまだにあの冒険者たちがうようよしているのですっとばして来ている。

 ファイ達に聞いたところ7日間迷宮を探索して地上で2日休みというスケジュールで探索しているらしいので後2日もすればいなくなるはずなのでその時に探索するつもりだ。

 今回は二手に分かれる必要がないのでヒナを荷台に乗せて走ってきた。大体1時間半程度で10階層まで来ることができた。やはり20階層ぐらいまではマップとルージュのコンビであれば日帰り攻略が可能そうだ。


 10階層のボス部屋の前で装備の確認を行う。特に問題はないようだ。初級迷宮は扉が土を削り出したようなものだったのに比べ、中級迷宮は鉄の扉だった。そして相変わらず非常に繊細な模様の彫刻が刻まれている。扉に刻まれているのは蛇のような魔物がとぐろを巻いて人を締め付けている絵だ。まあ情報通りだな。


「じゃあヒナ、ルージュ行こうか。毒消しは各自持ってるよね。」

「大丈夫ニャ。」

「ぼくもー。」


 すでにルージュは人化済みだ。今までみたいに中まで押していく手間がなくなりその分戦いが楽になる。

 扉に手を触れると、今までと同じようにゴゴゴゴッと音を立てながら扉がスライドしていく。鉄になっても開き方は変わらないんだな。

 部屋に一歩踏み込むとあたりからジジジジっという何かが擦れるような音が響く。

 黄色い瞳に一本縦線が引かれたような目と目が合う。真っ赤な口を大きく開け、その鋭い牙の先からは液体が滴っている。体表は緑のウロコに覆われ、光沢を持ちながらも体の動きに合わせて動いている。


<ポイズンスネークヘッド>

 ポイズンスネークの進化種。ポイズンスネーク同様その牙から神経毒を流し、動けなくなった獲物を丸呑みにする。大きい者では体長20メートルにもなり、体を絡ませて締め付けることもある。

 個体クラス 6級

 肉質は弾力があり、鶏肉のように淡白な味。から揚げや下味をつけたあと焼くのがおすすめ。


 ここにいるのは体長15メートルほどの大きさだ。6階層からポイズンスネークも出てきていたのだがこちらは体長4メートルほどの普通の蛇よりちょっと太いやつだった。遠くから発見できれば対処は簡単だが森などで木の上から落ちてくることもあるので注意が必要な魔物だ。まあマップがあるのでそんな不意打ちは受けようが無いのだが。


 それにしてもさすがは中級迷宮というべきか。今までのボスとは貫禄が違う。というかこれまでの階層の魔物と比べてもひとつレベルが違う相手だな。


「それで本当にヒナ1人で相手するの?」

「ここまで運んでもらったからそのくらい大丈夫ニャ。」

「じゃあ僕たちはあっちの相手をするね。」


 地面や天井にあいている穴からポイズンスネークがにょきにょき生えてくる。うん間違っているかもしれないが生えてくるという表現が似合う出現方法だ。ポイズンスネークヘッドがしっぽを震わせて音を出しているのは警戒しているだけでなく、配下のポイズンスネークを呼び出す合図になっているのだ。

 呼び出されたポイズンスネークは30匹程度。特に危ない数ではない。


「じゃあルージュは右、私が左で。」

「りょーかーい。どっちが早いか勝負ね。」

「じやあ、行くニャ。」

「「ファイヤーウォール。」」


 開始早々ルージュと二人で唱えて高さ1メートルほどの火の壁を作り完全に分断する。パーティ戦ではなく完全に個人戦になるがまあ見えないわけではないのでフォローは出来る。その必要はないと思うが。

 ルージュはフェザーと火魔法で戦っているようだ。自由自在にいろいろな方向から放たれる魔法、そして飛んでいく杭型のフェザー。ポイズンスネークはルージュに近づけもしていない。よく糸を絡ませずにあれだけ操れるなと思うがルージュの才能なんだろう。

 私はといえば、ダートを使わず杖でポイズンスネークの胴体を叩き潰して瀕死にさせ続けている。殺してしまうとちょっと面倒なのだ。多少動いている個体もいるが、まあ噛まれても毒耐性のおかげでちょっと気持ち悪くなるだけでしばらくすれば治ってしまうことはすでに確認済みだ。まあ確認できたのはちょっとした事故のおかげなのだが。


 18匹倒したところで元気な奴がいなくなったのでファイヤーウォールを消す。ルージュの方はもう消えているから勝負は負けたみたいだ。

 ヒナはまだポイズンスネークヘッドと戦っている。戦っていると言うか首を持ち上げて鞭のようにしなりながら猛烈な速さで噛みつこうとするのをちょっと横にずれて避けるのを繰り返している。


「ルージュの勝ちニャ。」

「いえーい。」

「はいはい。」

「賞品は好きなメニュー食べ放題権ニャ。」

「わーい。」

「いや、作るのは私でしょ。」


 いつの間にやら賞品がついていた。ヒナもおこぼれにあずかる気満々そうだ。というかそれを狙ってその賞品にしたでしょ。たぶんねだられるのはローストディアだ。かなり気に入っていたみたいだし。食べ放題ならまた狩りをしないといけなくなりそうだな。

 なんだかんだ作る算段を考えつつ、瀕死のポイズンスネークに近づき、口を開かせて瓶のふたの上に布を張ったものに牙を突き立てていく。黄色い液体が瓶にしたたり落ち、溜まっていく。出が悪くなったら首をはねて殺し、魔石を回収したらそこらに放置していく。皮はバックや装備に使えるらしいし肉も食べられるようだがそこまで買取価格が高いわけではないし解体する時間がもったいないので放置だ。


 溜まっている液体はポイズンスネークの神経毒だ。アンさんの教えで毒などの状態異常になる草や魔物の素材はなるべく採取するようにしている。いつか使える機会が来るかもしれないからだそうだ。肉が食べられる魔物に使うと汚染されてしまうので、今のところあまり使い道がないまま、ただただ溜まっていっている。大量の毒薬を持ったシーフか。もはやシーフじゃなくて暗殺者だな。

 ちなみに6階層でこの作業をしているときに油断して指を噛まれた。まあまあ痛かったのでもう油断はしない。


「それで、ヒナは倒さないの?」


 ポイズンスネークヘッドの噛みつきやしっぼの足払いをかわしながら平然とこちらと会話しているヒナをあきれた感じで見る。


「厳正な審査のための審判をしていただけニャ。それじゃあ殺るニャ」


 ヒナさん、やるが殺るに聞こえましたが聞き間違いでしょうか?

 ヒナが剣を引き抜き構える。

 初めて敵対行動をとったヒナにポイズンスネークヘッドは警戒心を抱いたようだ。首を持ち上げ、赤い舌をチロチロと出しながら隙をうかがっている。

 ヒナは動かない。

 当たり前だ、近づけば周りでうねっている胴体部分に絡め取られるかもしれないし、跳んで首をはねようとすればそれは隙になる。空中を自由に動けない限り跳ぶのは上策ではない。おそらく噛みつきが来た時に首をはねるつもりだろう。


 じりじりとポイズンスネークヘッドが位置を変え側面に回ろうとするが、ヒナも体の向きを変えそうはさせまいとしている。

 なんというかじれったい状況だ。


「飽きた。早く攻撃してきなよ。」


 あっ、ルージュが早々に飽きたみたいだ。丸焦げのポイズンスネークの頭部を投げだした。私の投榔のスキルもルージュに反映されるから狙いを外さず、ポイズンスネークヘッドの頭にこつんという間抜けな音と共に命中する。

 ダメージは全くないようだ。後で叱っておこう。子供の教育は私の責任だ。


 ポイズンスネークヘッドは一瞬ルージュの方をキッとにらんだが、目の前の脅威であるヒナを先に排除することに決めたのか、今まで見た中で一番高く首を伸ばし6メートルほど上からヒナへと一直線に噛みこうとした。

 ヒナはその最大速度の噛みつきさえ余裕で回避し、そのまま剣を振り下ろす。いつもどおりの一刀両断コースだ、ってまずい!


「ヒナ、すぐに退避!!」

「!!」


 私の声に反応し、ヒナが縮地を使い一瞬で距離をとる。

 切断されたポイズンスネークヘッドの首から黄色い液体が周囲に向かって吹き出し、霧のようになっている。


「おおう、危なかったニャ。助かったニャ。」


 ヒナが剣に付いた液体を布でふき取りながら応える。うん、全く危なかったように見えない。あの飛び散ったのは神経毒だ。ポイズンスネークヘッドの毒は強力で皮膚の上からでも吸収される。毒耐性か解毒薬を持っていなければ数時間後にはお陀仏だ。


「毒腺を斬っちゃったね。もう1メートル下の辺りを斬れば大丈夫なはずだよ。」

「うーん、残念だけどお肉はまた今度だね。」


 やっぱり食べる気でしたか。そうなると料理するのは必然的に私になるんだが、気にしてないよね。


「まあこれから何回も倒す羽目になるから大丈夫ニャ。」


 やっぱりヒナも気にしてないよね。まあいいけどね。おすすめどおりから揚げにでもしてみよう。

 魔石と毒のかかっていない皮の部分を剥いでマジックバッグに収納する。ついでに頭もそのまま収納する。たしかギルドで買い取りがあったはずだ。

 軽くご飯を食べたら11階層へ突入だ。


 次は魔の階層と言われる砂漠のステージだ。


昔は良くあったハブとマングースの戦いのショーですが最近はとんと見なくなりました。

やっぱり時代ですかね。

読んでくださってありがとうございます。

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RINの外伝の小説を書いています。次のリンクから読もうのページに行くことが出来ます。 「お仕事ですよ、メイド様!!」(飛びます) 少しでも気になった方は読んでみてください。
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