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RIN ~共に生きる異世界生活~  作者: ジルコ
第四章:テンタクルの街より
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トレイン

「あー、いるね。」

「そうだニャ。」

(うわー、遅いね。)


 中級迷宮探索4日目。7階層の探索を終え、8階層の探索に進んだところ、見たことのある冒険者がちらほらと探索しているのがわかった。4日前に7階層を探索すると言っていたのにまだ8階層をうろうろしているのか。ルージュと同じように遅いなとも感じるが、マップも自転車もなくすみずみまで捜索しようとするとやはり日数がかかるのかもしれない。基本的に目視による確認が必要だし。

 7階層までの道程で1日、7階層の探索に2日、今日から8階層の探索といったところか?


(ヒナ、この階層は飛ばして9階層に行く階段を見つけてそっちを探索しよう。)

(なんで念話ニャ?)

(うまく気配を消しているみたいだけどこの階段を監視している冒険者がいるみたいだ。)

(あっ、本当だね。後方100メートルってところかな。)


 私やヒナの気配察知に気づかれないと言う事はそれなりに出来る冒険者と言う事だ。会話までは拾えていないとは思うが念には念を入れた方がいいだろう。

 ヒナもわかっているので後方を見たり、探ろうとはしていない。こういうことに関しては私よりヒナの方が判断が早いので注意することは無い。


(ルージュに乗るのは目をつけられないかニャ?)

(まあ目立ちはするだろうけどこれから何回もすれ違うだろうしね。その度に乗らないようにするのは逆に目立つよ。街中でもルージュには乗っているし。)

(まあそれもそうニャ。)


 ルージュに乗り2人で並走しながら北に向かって進んでいく。今のところ各階層ごとの階段は東西のずれはあるにしても南と北を交互に繰り返しているため運が悪くない限り8階層は北にあるはずだ。北の端の方まで着いたらそこから東西を確認すればいいだろう。


「一緒に進むならタイチに乗せてもらえば良かったニャ。」

(僕が光っちゃうからね。)

「仕方がないでしょ。」


 ヒナはクロスバイクの荷台に座ってプラプラしているのが好きだ。こがなくても進むし、魔物が現れた時に直ぐに倒しに行けるのがいいそうだ。今回自転車に乗ることが多くなるので魅力にはまってくれるかなとも思ったのだがそうそう簡単にはいかないらしい。


「そういえばもうすぐお昼だけど何か希望ある?」

「子供のフィールドディアでも狩るニャ。」

(やったー。)

「ルージュは後でね。」

(えー!!)


 誰が見ているかわからない場所で人化するのはさすがに無理だ。

 迷宮の6階層から何種類かの魔物が増えた。ちなみに


<フィールドディア>

 草原に生息する鹿の魔物。草食でこちらから攻撃しない限り襲ってこない。雄は立派な角を持っており、群れに対する脅威を追い払う。1匹に攻撃するとその集団がすべて敵対するため、群れの大きさには注意が必要。大きな群れでは100匹以上になることもある。

 個体クラス 8級 集団クラス 6級~5級

 子供の肉は柔らかくローストにすると絶品。血抜きに失敗すると味がものすごく落ちるので注意。


 階層が上がったのに草食の魔物が増えました。しかし集団のランクはフォレストウルフ以上という理不尽さ。まあ数は暴力ということだ。もちろん草食の魔物以外にもいろいろと増えてはいるが。


「じゃあ適当な群れを見つけたら狩って昼ご飯にしよう。マタリさんのお弁当は9階層で各自食べる感じでいいかな。」

「そうだニャ。」

(ぶ-ぶ-。)


 人化できるようになってからルージュの食べ物に関する欲求がだんだん大きくなってきているんだよな。機嫌も悪くなるし。いっそのことルージュも市民として登録できれば普段から人化して食べ歩いたり出来るのだが判定の水晶がどんな反応をするのかわからないから無理だ。市民証が無い状態で町に不法滞在していることがわかると良くて追放、悪いと奴隷落ちだからな。慎重にならざるを得ない。


「ルージュが市民証をとれれば一緒に食べ歩きが出来るのにニャ。」

「まあ仕方がないよ。」

(・・・。)


 ルージュさん。その沈黙が怖いです。なんか企んでないよね。


 フィールドディアを探しはじめてはや20分。マップのLvが上がったことで索敵範囲が広がり探すのが楽になっているはずなのだが見つからない。7階層ではこんなことは無かったし、もしかして冒険者に食べ尽くされたとかでは無いよな。


「見つからないね。もうグリーンラビットとかで・・」

「嫌ニャ。もう口の中がフィールドディアになっているニャ。」

「ソウデスカ。」


 ヒナが本気だ。まあ確かに6階層で初めて食べたときは美味しくてびっくりしたからな。


(ねえ、あれなんだと思う?)

「えっ、どこのこと?」

「あの黒い豆粒みたいなやつニャ?」


 ヒナに指さされた方向をじっと見ると確かに遠くに小さい豆粒みたいなものがたくさん動いているのが見える。まだマップには表示されていないから1キロ以上離れているのに良く気付いたな。

 黒い豆粒は徐々に大きくなってくる。こちらに近づいて来るようだ。嫌な予感しかしない。


「どうする?逃げる?」

「でも進路上だしニャー。」


 最悪マップで確認した後に逃げればいいかと半ば思考を放棄して進んでいく。徐々に私の目にもはっきり何が近づいてきているのかわかるようになった。


(追いかけられてるね。)

「そうだニャ。」

「何をしたんだろう?」


 3人の冒険者が大群のフィールドディアに追いかけられている。マップの範囲に入った途端、赤い塊として表示されてしまい正確な数はわからない。少なくとも200匹以上はいそうだ。思わず立ち止まり様子を見る。


「肉ニャ。」

「いや、肉、じゃないよ。さすがにこの数の相手はきついって。」


 ヒナがかぶりを振り、私の肩を手でがしっと掴む。力がこもっていて結構痛い。


「それを考えるのがタイチの役目ニャ。」

「結局人任せかよ!」

(まあ、タイチも諦めたら。今からだと元の道を戻るくらいしか逃げようがないよ。)


 ヒナと話しているうちにいつの間にか500メートルくらいまで近づかれた。冒険者の顔がだんだんはっきり見える。必死だ。そしてもうすぐ限界のようだ。口からはよだれを垂らし、顔は真っ青だ。そして3人ともモヒカンだ。惜しむべくは装備が普通すぎる。トゲトゲに露出の多いベルト装備でヒャッハーとか叫んでほしい。やっぱりやられるときはアべシっとか言うんだろうか。いや、それを言ったら死んでしまうから駄目だ。

 はあ、仕方がない。ヒナの希望もあるし、彼らは依頼を受けた腕のいい冒険者ではないだろう。人助けも大事だしな。


「そこの嬢ちゃん達、逃げろ!!」


 モヒカンの1人が叫ぶ。モヒカンの中でも体が大きくまだ他の2人に比べて余裕がありそうだ。うん、悪い人では無さそうだ。


「ヒナ、地面を凹まして落とす。飛び越えてきたやつを各自対応でいい?」

「了解ニャ。小鹿は最後に残すニャ。」

「ルージュは穴に落ちた奴を頼む。くれぐれもわからないようにね。」

(りょーかーい。)

「じゃあ行きますか。」


 モヒカンたちが進路を変えようとして曲がっていく。一部はそちらについていくがこちらに向かってきている奴もいる。分離すると手間が増えるな。


「そのままこっちに来い!!」


 ドドドドドっというフィールドディアの足音に負けないように大声で叫ぶ。モヒカンたちは驚き、迷ったようだが臨戦態勢のこちらを見て覚悟を決めたようだ。こちらに向かって走ってくる。


「巻き込んですまん!」

オンラインゲームをしたことがないのでトレインに遭遇したことはありません。

往年のゲームでニワトリに追いかけられたことはあります。ニワトリ超怖い。

読んでくださってありがとうございます。

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RINの外伝の小説を書いています。次のリンクから読もうのページに行くことが出来ます。 「お仕事ですよ、メイド様!!」(飛びます) 少しでも気になった方は読んでみてください。
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