アイテムボックスの実験と検証
200ユニーク達成しました。ありがとうございます。
夜に時間があったら記念投稿するかもしれません。
家に着くとアンさんが昼食の準備をしているところだった。昨日の歓迎会の時に料理はしなくてもいいのですかと確認したのだが「料理を作るのは好きなので」とやんわり拒否されてしまった。
外見上、15歳という年齢なので料理ができないと思われたのかもしれない。
自分以外が作った料理をお店以外で食べるなんて、あまりなかったのでなんとなくこそばゆい感じがする。
あと5分くらいでできるとのことだったのでまず「仮説2:太陽がないため時計が止まった可能性」を確認するため腕時計を木の箱の中に入れて食事の後に確認するとしよう。
「タイチ、料理が出来上がりましたので運んでください。」
「はい、メイド長。」
食堂に5人分の食事を用意していく。今日のメインはナスと豚肉の炒め物だ。豚肉ではなくて魔物の肉らしいが、見た目が豚っぽいのでそう思っておいた。
取り合わせはサラダと黒パンだ。
黒パンはこの世界に来て初めて食べたのだが、多少の酸味はあり固いが、よく噛んで食べれば満腹感もあるいい主食だと思う。私は好きだ。
精製した白めのパンが高級品と聞いたが栄養的にもこちらの方がいいだろう。
全員がそろったところでいつも通りリイナさんの言葉と共に食事が始まる。
「そういえば、アンさん。明日から1か月くらい、依頼で街を離れます。」
「あらっ、長いわね。どこかへの護衛かしら?」
「そうなんだよ、メルリスの迷宮に潜りたいっていう物好きな貴族がいてな、その護衛兼迷宮の案内役なんだぜ。貴族なんてめんどくせぇのに報酬がいいからって受けやがって。」
「今この町で条件に合いそうなのって私たちぐらいでしょ。ギルドも困ったから頼んできたんだし。それに破格の条件だってジンも納得したでしょ。」
「まぁ、確かに一人金貨1枚は大きいな。素材についても別途報酬があるらしいからな。でも嫌いだ。」
迷宮か。あれかなRPGとかにあったダンジョン的なものかな。と考えていたらその表情から察したのかアンさんが補足してくれた。
「ここから一週間ほど北へ行ったところに迷宮都市メルリスという街があるの。」
「魔物が出たりする迷宮が街にあるのですか?」
「魔物は害でもあり、資源でもあるから。それに管理しない迷宮ほど危ないものは無いですしね。」
日本だったら即時に隔離されるような気がするがこの世界の人はたくましいな。
「今日一日かけて準備をして、明日の朝には出発する。」
「ジン、寝坊しないでよ。」
「しねぇよ、というか坊主除けば朝起きるのが一番早いの俺じゃねえか。」
三人のわいわいとしたやり取りを見ながら寂しさを感じる。ここに連れてきてくれた恩人であり、この世界で初めてできた友人?家族?何と言っていいかわからないが大切な人がいなくなってしまうから。
「まぁ、坊主は婆さんと一緒に勉強なり修行なりして、早く一人前になるように頑張れよ。」
「はい、頑張ります。」
ジンさんはふざけたり、抜けているところもあるが、こうやって人の心にすっと入って来ることのできるすごい人だと思う。
発言後すぐにアンさんに叩きのめされ、食堂の隅に捨てられたジンさんを視界に入れないようにしながら心の中で感謝した。
食事を終え、腕時計を見てみたが止まったりということはなく正常だった。というかよく考えれば朝の段階では時間が正しかったのだから検証するまでもなかったな。
洗い物を終え、倉庫の整理に行く前に腕時計をアイテムボックスへ入れ、だいたい2分程度経ってから取り出す。ちょっと時間を変え3回繰り返す。腕時計の時刻の変化は3回とも無かった。時間が早く流れている可能性も低い。
次は時間が遅くなっている可能性の検証のため、腕時計をとりあえずアイテムボックスに収納しておいた。
今日の使用人のお仕事を始める前にアンさんに適当な大きさの箱は無いか聞いてみると裏庭の小屋にいくつかあるとのことだったので回収してきた。
箱に剣などをまとめて入れてから収納してみる。特に問題なく収納ができた。同じように小物を箱に詰めて収納していく。
しばらく作業を続けた後、大きめの盾を収納しようとしたが収納ができなかった。何度か試してみるが全く駄目だ。収納出来なくなってしまったのか心配になり別の小さなボールのようなものを収納しようとすると普通に出来てしまった。
とりあえず考えられる可能性を挙げてみるか。
<可能性1>
盾にアイテムボックスなどへの収納を防ぐ機能がある
盗難防止などの対策としてアイテムボックスなどへ収納できないようにする魔法なり機能があってもおかしくはないだろう。見た目は普通の鉄の盾だが。
<可能性2>
アイテムボックスの収納限界
アイテムボックスに入れられる限界が何らかの基準で決まっており盾を入れることでその限界を超えてしまうため収納できないかもしれない。盾は入らなかったのにボールは入ったので収納した物の数ではないから、可能性として高いのは重さもしくは体積か。
とりあえずは実験だ。アイテムボックスが収納限界だと仮定して、まず大きめの箱をアイテムボックスから取り出す。その後、盾を収納と意識してみると普通に収納することが出来た。これで<可能性1>については否定された。
もう一度、盾を取り出し大きめの箱を収納する。同じくらいの大きさの木の盾があったのでこれを収納と意識してみたが収納はされない。木の盾より少し重くて小さいものは無いかと探すとちょうど丸い鉄の盾が条件に当てはまったので収納してみる。丸い鉄の盾は普通にアイテムボックスに収納された。何度か同じように実験してみたが同様の結果だった。
確定ではないがアイテムボックスには収納限界がありそれは体積によって決まっているのだと思う。アンさんに聞けば教えてくれるのかもしれないが何から何まで頼り切るのは人としてダメだしな。
アンさんにアイテムボックスがいっぱいになったことを伝えると隣の部屋に仮置きしておいてほしいとお願いされた。隣の部屋に行きアイテムボックスからものを取り出していく。半分ほど取り出したところで気分が悪くなり、立っていられなくなった。
横になると床が冷たくて気持ちよく、そのまま意識を失った。
「目が覚めましたか?」
目が覚めると目の前にアンさんが椅子に座ってなにかを編んでいた。気を失った私を部屋まで運んでくれたらしい。
「運んでいただいたんですね、ありがとうございます。」
「お礼ならニールに。倒れていたあなたを見つけたのはあの子ですから。」
ニールさんに心の中で感謝する。夕食には会えるだろうからその時にでもお礼を言おう。
「それでタイチ、なぜ倒れたのかわかる?」
状況としては昨日とほぼ同じだ。収納していたか取り出していたかの違いはあるがアイテムボックスを使用していた時に起こっている。
「アイテムボックスを多く使用したためですか?」
「そうとも言えるし、そうでないとも言えるわ。」
収納限界があるように使用回数にも限界がありそれを超えると気分が悪くなるかと思ったが違うのか?
「タイチはこれまでにあまりアイテムボックスを使用したり、そのスキルについて誰かに教えてもらったことは無いわよね。」
そのとおりなので頷く。
「この二日アイテムボックスを使用してみて、どのようなことがわかりましたか?」
「箱などの中に物を入れれば一度に収納できること、手で触れていれば大きさは問わないこと、収納に限界がありおそらく体積で限界が決まること、そして・・・」
腕時計をアイテムボックスから取り出す。時計の針は1分進んでいた。
「アイテムボックス内の時間の流れは現実と比べて遅いこと。おそらく100分の1程度だと思われます。」
「良く調べたわね。偉いわ。間違っているところもあるけれどその探究心は冒険者向きよ。」
その言葉を聞いてやはりと思った。ほとんど整理できている状態の倉庫を掃除すると言われた段階から何かしらの意図があるのではないかと思ったのだ。
「答え合わせをするわね。収納限界、時間の流れ、中に物を入れることについてはそのとおりよ。違うのは、そうね・・・」
アンさんが机に靴を当てると机が消える。
「このような感じで手でなくても収納はできるわ。訓練が必要ですけれどね。後は倒れてしまった原因だけどアイテムボックスは入れる時も出すときも「MP」を1使用するわ。「MP」が切れると気分が悪くなってしまい最悪気を失うわ。倒れてしまった原因はそれね。」
そういえば「MP」なんてあったな。なじみがないからステータス自体あることを忘れていた。
「これからタイチにはアイテムボックスの使い方と戦い方を教えていこうと思うのだけれどアイテムボックスもちのタイチに必ず知っておいてほしいことがあるの。」
「なにをですか?」
「アイテムボックスもちが死ぬと爆発するわ。」
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