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RIN ~共に生きる異世界生活~  作者: ジルコ
第四章:テンタクルの街より
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港湾都市テンタクル

10万PV達成記念第3弾です。

 ギルドカードを提示し今までで一番低い防壁を抜けると目の前に赤や黄色などのカラフルな街並みが広がっている。同じような形の四角い建物に屋根は赤茶色なのだが壁面の色が自己主張をするようにいろいろな色をしているのだ。慣れるまで目がチカチカしそうだ。

 2階建ての家がごちゃごちゃっと建っていて大通りから裏通りに抜ける細い道が何本も走っている。油断すると迷子になりそうだ。

 海風に乗って磯の匂いが漂っている。これは自転車にはあまりよくない環境かもしれない。雰囲気は好きなのだが。


「いやー、ついに来たニャ。」

「そうだね。とりあえずはギルドへ行く?」

「・・・そうだニャ。」


 ヒナがさっそく露店で売られていた焼き魚に向かおうとしていたのを防いだ。さっき昼ご飯を食べたばっかりでしょうが。

 街を歩いていると昼間から酒盛りをしている船員風の男たちが多いことに気づく。たまに陸に上がるときぐらいは羽目を外したいのだろう。

 街の人に聞いてギルドへと向かったのだがものすごくわかりやすかった。他の建物と様式が全く違い、イーリスやメルリスと同じように木で作られた酒場のような外観だった。潮風で劣化しないのか?中に入ると作りもほぼ同じだ。もしかしたら移動することの多い冒険者の利便性を考えて規格があるのかもしれないな。


 メルリスで受けたギルドの手紙の配達依頼の完了報告をし、依頼掲示板を見に行く。今までは無かった海の魔物の討伐依頼や船の護衛などこの街ならではの依頼が沢山ある。

 その依頼の中の1つに目が留まる。シーサイドベアーの討伐。それ自体は特に不自然ではない。シーサイドベアー自体は強い魔物ではあるのだが単独で行動することが多く私やヒナなら特に苦も無く倒せるくらいの魔物のはずだ。問題はこの依頼が5級以上の冒険者に対する依頼であることと領主のテンタクル家直々の依頼であり、しかも討伐の確認のため直属の騎士が同行するという特殊な条件がついている。


「ヒナ、これあからさまに怪しいよね。」

「そうだニャ。報酬も高いし、他の冒険者も受けているはずなのに依頼がそのまま出続けているのは何かしらありそうニャ。」

「とりあえず保留にして、まずは街の把握をしますか。」

「そうだニャ。」

「よし、じゃあ私は配達系の依頼を受けて街のマップを完成させておく。ヒナは?」

「私は調査に入るニャ。」


 ヒナの目がキラーンと光る。


「言わなくてもなんとなくわかるけど何の?」

「もちろん美味しい店やいい宿のニャ。」

「やっぱりか。じゃあそっちはまかせた。あんまり食べ過ぎないようにね。」


 掲示板から荷物の配達依頼をいくつか取り、窓口にもっていって依頼を受注した。奥の部屋で運ぶ荷物を受け取りヒナと別れてルージュに乗って走り出す。

 テンタクルはイーリスやメルリスに比べて狭い。沿岸部に沿って家が立ち並び、家の前にはすぐ海がありボートがいくつも繋がれている。町の中にも水路が引かれており、その水路を使ってボートで荷物や人を乗せて運んでいる。だから橋が多いのが特徴だ。


「うーん、走りにくいな。」

(そうだねー。)


 今はシティサイクルモードなのだが、大通り以外の道は細く、しかもごちゃごちゃしていてわかりにくい。マップが無ければたぶんすぐに迷子だ。歩行者とすれ違うことも多いし、橋は手前が階段になっているものも多いからいちいち担いで渡らないといけない。

 アレを買うことも検討しないといけないか。うーん、でも最近散財したばっかりだしな。


(あっ、タイチ見てよ。おっきい船。)


 ちょっと考え込んでいたら港へと着いたようだ。ここにも配達依頼がある。


「ああ、あれはバーケンチンだな。」

(バー・・・、なにそれ?)

(帆船の型のことだよ。確か少人数で操作可能で貨物の輸送に適している型だ。)


 なんでこんなことを知っているかと言えば完全に漫画の影響だ。知っている人は知っていると思うが黒い船の漫画だ。王の座を争うときに1人だけ主人公側についた船長の船がこれだったんだよな。あの船長は渋いよな。


「船に興味がおありですかの?」

「へっ?」


 いつの間にか私のそばに70代くらいの白髪のおじいさんが立っていた。顔のわりに背筋は伸びており体も筋肉で引き締まっている。顔には出さないように即座に警戒をMAXにする。街中でそこまで注意を払っていなかったとはいえ、マップも気配察知もある私に気づかれず半径2メートルまで近づくのは並大抵のものじゃない。


「ああ、急に話しかけて悪かったの。しばらく船を見ておったから興味があるのかと思ってのー。」

「昔、少し勉強しましたので。」


 うん、嘘ではないよ。調べたから。


「じゃああの船の利点はわかるかの?」

「確か少人数での操船が可能であり貨物の輸送に向いているでしたか。」

「そうじゃの。付け加えるなら横帆があるから長距離航行に向いており、縦帆があるから風上に向かっても進めるいい船じゃの。」


 この人は元船乗りか船大工かな。構造に詳しいし、一般人にそんな知識があるとは思えない。


「解説ありがとうございます。それはそうと、こちらにマストさんと言う方はおられますか。」

「あー、マストなら儂じゃの。」


 あっ、それならちょうどいいや。


「ギルドから配達の依頼でやってきましたタイチと言います。荷物の確認をお願いします。」


 預かった荷物をマジックバッグから取り出す。何かの書簡だ。


「ほほう、やっと来たかの。」


 マストさんが蝋を外して早速手紙を確認していく


「そうか・・・、ああ、すまんかったの。ほれ、受領証だの。」

「ありがとうございます。それでは失礼します。」

「ほっほっほ。船が見たくなったらまた来ると良いの。」


 マストさんに礼をして走り去る。これで配達依頼は終了だ。後はもう半周くらいしていけばこの街のマップも完成する。

 改めて今まで埋めたマップを見る。


「うーん、ごちゃごちゃしていて本当にわかりにくいな。」

(そうだねー。)


 水路がところどころにあるからいちいち橋を渡る必要があるし、大きさのわりに街の把握をするのが難しそうな街だ。とりあえず完成させてギルドに報告だな。


 4時間ほどかけてマップを埋め、ギルドに戻って来る。街が小さいわけが分かった。この街には農地がほとんどないのだ。イーリスもメルリスも街の中と一部の城壁の外に畑があったのだがそれが無い。ほとんど他の街からの入荷に頼っているのだろう。そのせいかもしれないが全般的に野菜などが高い。逆に魚や肉などは比較的安い。まあ魚は海が近いから当然か。

 ギルドで依頼完了の報告をすると6級へ上がる試験を受けられますがどうしますかと聞かれた。特に興味が無かったのでまたいつかと答えギルドを出た。ギルド的にはやはり高いランクの冒険者が多いほうが良いのだろうか?


(そういえばヒナとの集合場所決めて無かったよね。)

「あっ、そういえばそうだな。」


 いままでは拠点となる宿だったり家だったりが決まっていたので好き勝手に行動していたが今回はまだ決めていなかった。そういえばヒナと見知らぬ街に来るのはこれが初めてか。すっかり忘れていたな。


「仕方がない。食べ物関係が多い場所を探していけば見つかるだろ。」

(そうだねー。)


 私もお腹が少しすいたので露店でパンにカルパッチョを挟んだようなサンドイッチを買い、マップと実際の店を見ながらヒナを探していく。


(タイチ、美味しい?)

「美味しいよ。」

(じゃあ今度僕にも買ってね。)


 いつの間にかルージュがヒナに似て、食べるのが好きになってきた気がする。いいこと、なのか?

 ヒナを探しながらマップを見つつ散策していたが食べ物屋付近にはいなさそうだ。宿の方に行っているのかもしれないな。そんなことを考えているとマップに見たこともない黄色い点が現れた。

船が好きです。

いつかクルージングで海外旅行に行ってみたいものです。

読んでくださりありがとうございます。

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RINの外伝の小説を書いています。次のリンクから読もうのページに行くことが出来ます。 「お仕事ですよ、メイド様!!」(飛びます) 少しでも気になった方は読んでみてください。
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