閑話:ルージュの友達
よし、タイチは寝たみたいだ。人化して一人で出歩けるようになったのでここ最近は夜の散歩が日課になっている。とはいっても里のみんなは夜が早いので里の中を散歩してもつまらない。だからいつもレオノールの所まで遊びに行くのだ。
「ふーん、ふふーん。」
壁を土魔法で乗り越えタイチと作った森の道を鼻歌交じりで歩いていく。2日で作ったにしてはなかなかの出来だと思う。
夜行性の魔物が活発に動くため昼よりも襲われる確率が高いが僕自身夜目が利くし、マップもあるから簡単に場所がわかる。場所さえわかってしまえば後は地面から槍を突き刺せばそれで終わりだ。アイテムボックスに収納してレオノールへのお土産にしよう。
「こんばんは、レオノール。」
「あっ、ルージュ。いらっしゃい。」
レオノールがこちらに気づいて近づいて来る。あんまり待っているとせっかく作った道が台無しになってしまうのでこちらも走って近づく。レオノールが歩くごとにちょっと地響きするから走りにくいけど。
「はい、これお土産。」
「わー、ありがとう。」
途中で倒したフォレストウルフたちを嬉しそうに食べ終わるのを待つ間にレオノールの背中に乗っかる。おとなしいときのレオノールの体はホカホカして気持ちがいい。
「おいしかったー。ごちそうさま。」
「どういたしまして。」
「きょうはなにしよう。きのうはルージュがおはなししてくれたから、きょうはぼくがはなすよ。なんでもきいて。」
うーん、なんでもか。そういわれると迷う。
「じゃあ、レオノールの家族について教えて。」
「おじいちゃんとおばあちゃんとおとうさんとおかあさん、あとはおにいちゃんとおねえちゃんの7にんかぞくだよ。おとうさんはぞくちょうだから、さとでいちばんえらいんだ。おじいちゃんのほうがつよいけど、おじいちゃんはにんげんにいちどまけてからいんたいしたっていってた。」
「そうなんだ、じゃあレオノールは次の族長候補なんだね。」
族長の息子をタイチは殺しかけたんだ。良かった、あの時止めて。もし本当にあの時レオノールを殺していたらこの辺りが焦土になってしまうところだったかもしれない。
「せいかくにはちがうよ。レッドドラゴンはいちばんつよいひとが、ぞくちょうになる。だからぜんいんがこうほ。ぼくはよわいから、たぶんぞくちょうにはならないよ。」
「へ-、あれだけ強くても弱い方なんだ。レッドドラゴンってすごいね。」
「うん、おじいちゃんのブレスで、やまがひとつきえたってきいた。」
スケールが違ったよ、タイチ。
「そういえばおじいちゃんが人化出来るって言ってたよね。」
「うん、おじいちゃんはたまににんげんのまちにいって、おもしろいものをかってきてくれたり、たびのはなしをしてくれるの。だからぼくもさとのそとにでたくなったんだ。」
うわっ、なんか今頃そのおじいちゃんがレオノールを探して各地を飛び回ってそうだ。後でタイチに注意しよう。レオノールに危害を加えたなんて知られた日には、ちりも残らないくらい焼却されそうだ。
それにしてもスケールが大きい話ばかりだ。でもタイチとレオノールの戦い方を見ていて思ったけど近接の素早い相手に対する攻撃手段が少ない気がする。普通の魔物とかならいいだろうけど強い冒険者とかに襲われたらレオノールは危ないんじゃないかな?
「レッドドラゴンって魔法は使えないの?」
「おじいちゃんはじんかすればつかえるっていってた。りゅうのときはえいしょうできないんだって。」
それなら大丈夫だ。イメージさえつかめればレオノールも魔法が使えるはず。
「ねえ、レオノールは魔法を使ってみたくない?」
「ぼくにもつかえるの?」
レオノールがキラキラした目で見つめてくる。鼻息も荒くなってるし。というかちょっと熱い。
「うん、僕が教えるよ。だからちょっと落ち着いてね。」
「おねがいします、ルージュせんせい。」
ちょっと先生と呼ばれて嬉しい。タイチに教えたときはわかりにくいって言われちゃったけど大丈夫かな?
「お腹の中になんかもやもやしたものがあるのわかる?」
「うん、ブレスをはくときにつかうやつ。」
ブレスってMP使うんだ。じゃあ一応吐ける回数は有限なんだな。
「そのもやもやをお腹の中でグルグルします。」
「うん、出来た。」
「最後にぐるぐるしたもやもやを外に出しながら燃えちゃえって強く思います。ということで燃えちゃえ!」
目の前に50センチほどの火の玉が出来る。それ以上はイメージしてないのでしばらくして消えた。
「すごいよ、ルージュ。じゃあやってみるね。もえちゃえ!」
レオノールの前に2メートル近い火の玉が現れる。その熱でちょっと髪が焦げそうだ。
「できた、できたよ。ルージュはおしえるのがうまいね。」
「でしょー。」
やっぱり僕の教え方は間違ってなかったんだ。たぶんタイチが変なんだよな。うんうん。
「じゃあ次はいろんな形にしてみよう。」
「はーい。」
「えっとそこは、シュバって感じでそのあとにょろーんって感じ。」
「シュバっとしたあとににょろーんね。」
「そうそう。そんな感じ。」
「ルージュ、ここがむずかしい。」
「うーんと、ここはギュってしてそのあとパーンって感じ。」
「ギュッとしてパーン。あっ、できた。」
レオノールはスポンジが水を吸うかのように自由に火魔法が扱えるようになっていた。
「はい、最後の試験も合格。もうレオノールに教えることは無いよ。」
「ありがとう、ルージュ。」
レオノールが鼻をこすりつけてくる。ふわふわの産毛がちょっとくすぐったい。夢中になってしまったけど今何時だろう。自転車に変身してサイコンを確認するともう午前3時半だ。タイチが起きるまでにちょっと間に合わないかもしれない。うーん、どうしようか?
「ぼくがおくっていこうか?」
「いいの?」
「うん。まほうをおしえてくれたおれい。」
レオノールに乗り空を飛ぶ。ビュンビュンと景色が流れていく。とは言っても周りは森ばかりなので真っ暗だ。でも空から見る景色は最高だった。そしてわずか10分ほどで里の付近まで着いてしまった。名残惜しいがこの辺りが限界だ。
「ありがとう、レオノール。またね。」
「じゃあね、ルージュ。」
別れの挨拶をすませる。そして思う。僕はたぶん世界で初めてドラゴンに乗った自転車になった。
ルージュのこっそりお出かけ会にしようとしたのですがそういえば猫耳ばっかりだったので普通のは無理でした。
結局レオノールとの友達話になりました。こうしてレオノールは最強のレッドドラゴンに・・・。
読んでくださってありがとうございます。




