平和的解決
ちょっとリアルが落ち着きました。
スパート頑張ります。
「ありがとう。それでこれからレオノールはどうしたい?」
「どういうこと?」
首をかしげてこちらを見るレオノール。前は恐ろしかっただろうが今は可愛く見える。不思議なものだ。
「私がここに来たのは猫人族の里からこの森の異変の調査を依頼されたからなんだ。たぶんそこにある迷宮が原因だけど。そして被害を減らすためにはこの迷宮に定期的に人が入らなくてはいけない。そうするとレオノールの話もしないといけないんだ。」
「うん。」
「もしレオノールがここに居たいなら一度猫人族の代表者に会ってほしい。」
「ぼくは・・・。」
レオノールの言葉が続かない。そうだよな。今まで散々攻撃されてきたんだもんな。やっと見つけた休める場所をまた追い出されるのも嫌だよな。
「ぼくは・・・ぼくはここにいたい。このばしょはなんかおちつくんだ。」
「わかった。じゃあ近いうちに代表者を連れてくる。私の知り合いだからレオノールを傷つけることは無いって保障するよ。」
「怪我させたタイチが言うなって感じだけどね。」
それは言わない約束でしょう。
「じゃあ明日にでも連れてくるよ。ちょっと待っててね。」
「またねー。」
レオノールが翼をバタバタさせて見送ってくれる。やっぱりいい子や。
ルージュはもうクロスバイクに戻っている。人化のことをレオノールが驚かないので聞いてみたらドラゴンにも人化できる者がいるらしい。レオノールの祖父も出来るそうだ。尻尾と牙はいらないとのことだったのでありがたく頂戴した。ドラゴンの素材は高いらしいし何かしらの使い道があるだろう。
「それにしてもレッドドラゴンは凶暴かつ残忍と言う情報だったけど全然違ったな。」
(やっぱり人によるんじゃない。あっ、この場合は竜によるか。)
まあそうだよな。人化して人里におりてくる者もいるのに、そんな性格の者ばっかりのはずがないし。
「とりあえずはラージュさんに説明か。」
(そうだねー。レオノールに害がないといいけど。)
「大丈夫でしょ。」
ラージュさんがいきなり襲うなんて考えられないしな。
屋敷に着くとちょうどこちらに向かってくるヒナと会った。
「ただいまー。」
「お帰りニャ。大丈夫かニャ。なんか焦げ臭いし、血の匂いもするニャ。」
「あー、うん。今は何ともない。それよりラージュさんとミーシャさんに原因がわかったって伝えてくれる?」
「わかったニャ。それじゃあタイチは初日に行った奥の部屋で待っていて欲しいニャ。」
「了解。」
あー、やっぱり焦げ臭いのか。ポーションでやけどは回復したし隠し部屋で見つけた防具は何ともなかったけど普通の服は焦げてしまったから着替えたんだけどな。
奥の部屋で待っているとヒナが2人を連れてやってきた。なんか初日を思い出すな。
「それでタイチ君、原因が見つかったということだニャ?」
「はい、魔物が増えた原因は森の中心に迷宮が出来ていたためです。」
「「迷宮ニャ!」」
「あらまあ。」
3人が驚愕の表情を浮かべる。まあ身近に迷宮が出来るのはいいこともあるけど悪いことも多いからな。
「とりあえず1階層だけ探索してきましたが森で出現した魔物がそのままいるような感じでした。洞窟型の迷宮でしたね。」
「情報感謝するニャ。さっそく里の主だったものを集めて会議をするニャ。」
「ちょっと待ってください。」
立ち上がろうとしたラージュさんを制する。
「まだなにかあるのかニャ?」
「はい、迷宮とは別ですが、入り口にレッドドラゴンがいました。」
「レッドドラゴンだとニャ!!」
「あらあら、それはまずいわね。」
迷宮があると言った時と比較にならないぐらい深刻な表情で顔を見合わせる2人。それに比べてヒナは普通にしている。
「それでタイチが倒したのかニャ?」
「まさかそんなわけ・・・そうなのかニャ?」
「どうしてそう思ったの?」
「タイチが全然焦ってないニャ。あと焦げ臭かったから多分戦ったはずニャ。」
さすがヒナ。よくわかってるな。
「半分正解かな。戦ったことは戦ったけど私の負けだったね。」
「まあまあ、よく生きて帰れたわね。」
「そうですね。たまたまそのドラゴンと会話することが出来て平和的に解決した感じです。」
「やっぱりタイチは変な奴ニャ。」
「その評価はちょっと遠慮したいね。」
まあ自分で考えてもあと少しルージュの登場が遅かったら死んでいただろうし。奇跡的に生き残れたというのが正直なところだ。
「それでそのドラゴンの要望はなんだニャ?」
「どういうことニャ?」
「タイチ君は平和的に解決と言ったニャ。つまり何かしらの妥協があったと考えるべきニャ。」
「そうですね、それについてお願いしたいことがあります。明日ラージュさんにレオノール、いえ、レッドドラゴンの所まで行って話してもらいたいのです。私が通訳しますので。」
「でもそれは・・・。」
慌ててその要望を拒否しようとしたミーシャさんをラージュさんが手で制する。
「危険は無いと判断したんだニャ?」
「はい、レオノールと言う名前なのですがとても大人しく理性的です。」
しばらくの間、ラージュさんは目を閉じ、腕を組んで考えこんだ。そして
「わかった。タイチ君を信用するニャ。」
レオノールに会う決意をしたのだった。
「いやー、タイチと冒険するのも久しぶりニャ。」
「そうだね。」
翌朝、私、ルージュ、ラージュさんとヒナというメンバーでレオノールの所まで行くことになった。ミーシャさんはもしものことがあった時ために里で待機することになった。かなりもめたけれどラージュさんが奥の部屋に連れて行ってしばらくしたら大人しくなっていた。帰ってきたミーシャさんはとろんとした顔をしていた。そこはかとなく大人な匂いがしたが16歳だからワカラナイな。
「そういえばタイチ君はシーフだったかニャ。」
「そうですね。師匠にシーフが向いていると言われましたので。」
「タイチの職業はタイチって感じニャ。」
相変わらず失礼な。
一直線に進んだし、体力もある3人なので3時間かからずに到着することが出来た。レオノールが昨日と同じ格好で寝ているのが見える。
「「本当にレッドドラゴンニャ。」」
さすが親子、息がぴったりだ。しかも2人とも同じびっくりした表情で固まるのでちょっと笑いを誘う。止まっていても時間の無駄なのでさっさと近寄ることにした。
「レオノール起きてる?」
「ああ、たいち。おはよう。」
レオノールが首を持ち上げてこちらを見る。私には意味が通じているがヒナたちにはただ「クルルルル」ってうなっているようにしか聞こえないから2人とも尻尾を逆立たせて臨戦態勢に入っている。
「ヒナもラージュさんも落ち着いてください。ただおはようって言われただけです。」
「そっ、そうなのかニャ。」
「わ、私にはわたっていたニャ。共感があるしニャ。」
いや、思いっきり剣を抜く直前だったじゃないか。しかも噛んでるし。突っ込みたいけど突っ込んだら駄目なんだろうな。
「レオノール、こちらが猫人族の里の長のラージュさん。そしてこっちが娘のヒナ。ヒナは私の冒険者仲間でもあるね。」
「よろしくおねがいします。」
「よろしくお願いします、だって。」
「いや、こちらこそよろしくお願いしますニャ。」
「よろしくニャ。」
なんとか普通に会話は出来そうだな。
「とりあえずレオノールの希望としてはここに住んでいたいんだよね。他には何か要望ってある?」
「とくにないかな。あっ、たべものがあったらわけてほしいかも。」
「要望は特にないけど食べ物をわけてくれたら嬉しいそうです。」
「そのくらいなら構わないニャ。」
その後ラージュさんとレオノールの間に立って交渉をまとめて行った。最終的には決まったことは
・レオノールはこのままここに住む。
・迷宮の討伐は自由にしてよい。ただし肉などの一部はレオノールにあげること。
・1か月に数回レオノールに里の食べ物をあげること。
・猫人族から要望があればレオノールが出来る範囲で里を助けること。
・迷宮から魔物があふれた時はレオノールが食べること。
この5点で決着がついた。特に双方ともに重大な損失が出るわけでもないし利益もあるある意味WIN―WINな取引になった。それにしてもいちいち仲介をしなければいけないのは大変だ。私がいなくなってもレオノールの言葉がわかるように何かしら作っておこう。
ヒナはどうしてたのかって。もちろん途中で飽きて迷宮探索に行っていたよ。後で耳をもふってやる!!
これで解決のような気もしますがもうしばらく続きます。
お付き合いください。
読んでくださってありがとうございます。




