鍛冶職人の仕事
10000ユニーク記念投稿ができませんでしたのでこっそり2話投稿します。
見学第2弾だよー。
カンカン、カンカン、カンカン・・・。
ファイスさんが火床の前に座り棒の先に熱された玉鋼が付いたものを持ち、お弟子さんがリズミカルに槌を振るう。阿吽の呼吸でその棒の縦横を入れ替え、打つ強さを変化させる。
縦に溝を入れ半分に折り、再び打ち延ばし今度は横に溝を入れ半分に折り返す。かれこれこれで10回目のはずだ。ファイスさんの額からは汗がしたたり落ちているが集中力が切れているような感じはしない。むしろ極限まで自分を削っているような凄みを感じる。
「すごいな。」
(そうだねー。)
思わずつぶやく。その言葉に応える人は誰もいない。
鍛冶場を見学に来て、お土産のトレントの木を渡した後、すでに1度、たたらを動かして作っていた玉鋼を使って刀を作るところを見せてくれるとのことだったのでありがたく見学することにした。
たたらで精製した玉鋼を熱して薄く打ち延ばし、水に入れて砕けた部分と残った部分を分別する。そして分別したうえで2から3センチほどに割り、きれいに割れた部分とそうでない部分にまた分けた。
そしてきれいに割れた方を板のついた棒に隙間が無いように乗せ、濡れた和紙で包み、藁灰と泥をまんべんなくかけ火床に入れる。しばらくして真っ赤に燃えた鋼を取り出し、お弟子さんが大きな槌で叩いていく。カンカンっという音と共に火花が飛ぶ。お弟子さんは両手に1本ずつ槌を持ちながら器用に振るっていく。ロンソさんはお弟子さんが打つのに合わせ、平面や側面を打たせていた。
そして現在がこの工程と言う訳である。
(これは無理だ。)
(かもね。)
はっきり言ってもっとファンタジーな方法かと思っていたが今のところ魔法が使われているような場所は見当たらない。ただただ職人芸だ。あわよくばロンソさんにコツを教えてもらってスキルを覚えれればと思っていたがスキルを覚えるだけで長時間かかりそうだ。調薬は大学の実験に似ているからある程度何とかなったが鍛冶については全くの素人、基礎が無い分厳しいだろう。
(ルージュはどう思う?)
(うーん、タイチが武器を作りたいなら鍛冶じゃなくて別のアプローチ方法しかないんじゃない?)
(例えば魔法とか?)
(そうだね。)
まあ今でも土魔法でダートを作っているし出来なくはないと思うんだけどな。あれっ、というか土魔法の土ってどういう物質なんだ?まえにジェネラルを閉じ込めるためにカルビンをイメージして作った檻はすごく硬くて表面もつるつるして普通の土魔法とは違ったんだよな。壊す時も土魔法で分解したんだけどかなりのMPを使ったし。ひょっとしたら土魔法って・・・。
(タイチ、タイチ。終わったみたいだよ。)
(えっ!!)
いつの間にかファイスさんが刀の形状をした金属を研ぎながら何かを確認している。たぶんひび割れがないかとか歪みが無いかなどの確認だろう。記憶にある形状は全然刀の形はしていなかったのでいくつか工程があったと思うのだが見ていたけれど頭には入っていかなかったようだ。とてつもなく申し訳ない。
「お待たせしました。これで刀の原型の出来上がりですね。あとは仕上げの砥ぎや目釘孔を入れたり銘を彫ったりするのですが見ますか?」
全身がすすでうっすらと汚れ、汗が乾いて塩がついたままロンソさんが出来たばかりの刀を持ってくる。
「ええ、ぜひ。」
せめて最後くらいはしっかりと見よう。
仕上げの終わった刀は芸術作品のようにきれいだ。広直刃のシンプルな一直線のラインがファイスさんの性格を表しているようだ。
「やはりきれいですね。」
「はい、鑑賞目的に買われる方も多いです。我が里の交易品の1つですね。ここはヤマト国とは離れていますから刀は珍しいですし。」
まあそうだよな。この国の剣術と刀を使った剣術は考え方自体が違うからな。この国の剣術を修めた人が刀を使ってその機能を十全に生かした戦い方が出来るのかは疑問だ。あれっ、でもヒナは普通の剣を使っていたな。
「そういえばヒナは刀を使ってないんですね。」
「ヒナ様はミーシャ様に刀の扱いをお師匠様に剣の扱いを習っていらっしゃいましたので両方使えるはずです。里を離れると刀の手入れが出来なくなりますから剣を使ってらっしゃるのでしょう。」
「そういうことでしたか。」
日本刀が実際に使われていたころは定期的に砥ぎに出していたらしいからな。斬ったり、打ち合ったりすればメンテナンスが必要なのは当然だ。自転車と一緒だな。
「さて次はたたら場へ行きましょうか。」
「よろしくお願いします。」
前回通った道を進み、たたら場へ着く。この前は静かだったたたら場は黄金色の炎をあげ、熱気が充満していた。
「タイチさんがいらっしゃると思い2日前から動かしています。」
「えっ、3日間も燃やし続けるんですか?」
「はい。だから普通の木炭も使いますが魔物製の木炭が必要なのです。昼も夜も交代で炎の様子を見ながら砂鉄を千回に分けて入れていきます。」
「千回ですか?」
「はい、千回です。」
単純にすごいなと感心する。というかファイスさんは2日たたらの作業をしてから刀を打っていたのか。職人の凄みを感じるな。
「たたらに近づいてみてください。鉄の音が聞こえるはずです。」
言われたとおり近づいてみると炎の燃える音や空気が送られる音にまぎれてジリジリジリという音が聞こえる。これが鉄の音か。
「もうしばらくしたら取り出します。私が修行していたころはたたら自体を壊して取り出していたんですが今のこのたたらになってその必要がなくなりました。便利なものです。」
しみじみと感想を漏らすファイスさん。いや、ということは昔はそのたたら作りからやっていたってことだよな。すごい手間だ。しかしそうしなければいい刀は打てないということか。
「そういえば今回も刀の材料にするんですか?」
「そうですね、注文はそこまで来ていませんからタイチさんが何か使いたければ使ってください。」
「えっ、私は刀なんて打てませんよ。」
「ああ、そういう意味ではなくて鋳型などのことですね。基本的なものは作ってありますのでその中から必要なものを選んでもらえれば作れますよと言う意味です。」
そっか。鉄だから刀を打つだけじゃないもんな。鋳型なら流し込むだけで大丈夫だし。あっ、そうだ。
「あの、自分で作ってもいいですか?」
「えっ、どうやってですか?」
「あの、土魔法で作れると思うんです。」
「そうなんですか、私は魔法のことはよくわかりませんがすごいんですね。」
ファイスさんがちょっとうらやましそうに私を見ている。たしかに鋳型を作るのも手間がかかるし、それを魔法で作れるなんて楽だと思われるだろう。でもちゃんと修行した成果だからそんなに簡単じゃないんだけどね。まあ魔法を使えない人には分からないとは思うけど。
とりあえずフェザー用に杭の形をしたものが数種類必要だな。あとは何が必要かな。この世界にないものか。うーん・・・、あっタイヤキと大判焼きの型とたこ焼き用の鉄板を作ろう。小豆もあるから作れるだろうし、たこ焼きは個人的に食べたい。1家に1台たこ焼き器と言うし。
「モールド。」
土魔法を発動し、それそれの鋳型を作っていく。ノノに指摘されたのでとりあえず魔法を使うときは何か言うことにした。ただ意味不明なことを言うと効率が悪くなることが分かったので、今からしたいことを考えてぱっと思い浮かぶことを言うことにしている。今回は成型するからモールドだ。
感心するファイスさんと鋳型について話しながら数時間が過ぎ、ついに取り出す時になった。
「ちょっと離れていてください。」
ファイスさんが先のとがった棒で蓋をふさいでいる部分を削って穴をあける。するとどろどろに溶けた赤い鉄が飛び出し、下に置いてある器に流れていった。しばらくして流れて冷えた鉄は黒くなった。
「これで一応たたらについては終わりです。鋳型についてはすぐには出来ませんので明後日あたりにタイチさんのところまでお持ちします。」
「ありがとうございます。とても勉強になりました。」
ファイスさんにお礼を言い、帰ることにした。まさに職人の世界だった。すぐに習得できるようなものではないから自分で作るという目標はすぐには無理そうだけどちょっと思いついたこともあるしすごく刺激になった。
それにしてもタイヤキ、たこ焼き、大判焼きを作って食べられる日が楽しみだ。
難産でした。
だいぶ省略していますし、実際とは違う点もあると思います。
まあファンタジー世界ですからご了承ください。(最強の逃げ道です。)
読んでくださってありがとうございます。




