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RIN ~共に生きる異世界生活~  作者: ジルコ
第三章:猫人族の里にて
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不思議な実

 調査も終わり、今日見つけた実について確認するためヒナの部屋を訪ねることにした。


「ヒナー、入っていい?」

「どうぞニャ。」


 扉を開けるとくしゃくしゃに丸められた紙がそこらに転がっており、その中でヒナが寝転んでいた。部屋の中も少しずつ乱雑になってきている。初めて来たときはすごく整頓されていたのに。


「部屋、掃除したら?」

「まだ大丈夫ニャ。」


 ヒナ基準では大丈夫らしい。こうして腐海が広がっていくのか。

 しげしげと部屋を見ていたらさすがに居心地が悪くなったようだ。


「それでタイチは何の用ニャ。」

「ああ、そうだ。森でこんなの見つけたんだけどヒナは知ってる?」


 今日見つけた実が入った袋を取り出す。きれいなのとぼこぼこなのを分けてないけどまあいいか。ヒナが興味深そうにこちらを見上げている。


「これなんだけど。」


 寝転んだままのヒナの横で袋を広げて、緑の実を1つ見やすいように持ち上げる。


「ちょうどトレントの近くにあった木になってたんだけど食べられるかな。割ってみた感じは食べられそうな気がしたんだけど。」

「・・・。」

「さすがにその場では食べられなくて、捨てたらトレントが攻撃だと勘違いしてね・・・って聞いてる?」

「・・・。」


 ヒナは横を向いて開かれた袋からこぼれた実を見たまま動かない。


「お-い、ヒナ?」

「・・・。」


 不審に思いヒナの顔を覗き込むと人にはお見せできない顔をしていた。俗にいうイッちゃってる顔というやつだ。


「うわっ、ヒナ、ヒナ!!正気に戻って!!」

「うへへへへへ。」


 やばい、笑いながらよだれまで垂らし始めた。体をくねくねさせて気持ちよさそうにしているが絶対にまずいやつだ。

 私の鬼気迫る声に気が付いたのかドタドタという足音が近づいてきて、スパンっと扉が開かれる。


「どうしたニャ。・・・なんだタイチ君かニャ。ベタベタするのは構わないが場所を考えるニャ。」

「そんな冗談を言っている場合じゃないんです。ヒナが!」


 こんな状況で冗談を飛ばしてきたラージュさんをにらむと、さすがにまずい状況と理解したのかヒナに駆け寄る。


「ヒナ!だいじ・・・。」


 ヒナの顔を覗き込み、肩を揺すろうとした体勢でラージュさんの動きが止まる。


「ラージュさん?」

「・・・うへへへ。」


 うわっ、増えた。ラージュさんもヒナと同じようにトリップした表情のまま床をゴロゴロし始めた。やはり親子だ。こんなことで再確認したくないが。


「あなた、そんな風に廊下を走っては・・・あらあら。」

「あっ、ミーシャさん。ここに近づかないでください。2人ともなんかおかしくなったんです。」


 遅れてやってきたミーシャさんに注意する。これ以上増えてはたまらない。ミーシャさんは2人の様子とその間に置かれている木の実をじっと見つめると得心したような表情でポンッと手を打った。


「そういうことですか。タイチさん、とりあえずあの実を回収してください。」

「はい!」


 床をグネグネと動くヒナとラージュさんを踏まないように気を付けながら手早く袋を回収しアイテムボックスへ収納する。収納はしたが2人はグネグネを続けている。


「しばらくすれば元に戻りますから大丈夫ですよ。」


 ミーシャさんは私を安心させるようににこやかに笑っている。


「なんですか、この実が原因ですか?」

「そうね。タイチさんが持ってきたのはマタタビの実ね。猫人族にとってはし好品であるとともに麻薬のようなものね。」

「マタタビですか。」


 ねこにマタタビということわざで存在は知っているが実物を見たのは初めてだ。それにしてもなんで2種類あるんだろう?成長過程で何らかの要因で変化するのか?


「すみません。なんかとんでもないものを持ってきちゃって。」

「大丈夫ですよ。誰もかれもが2人のようになるわけではありません。特にこの2人が酔いやすいだけですから。私ならちょっと気持ちよくなって少し濡れるぐらいですみます。」

「あっ、そうなんですか。」


 親子だから体質が似ているってことか。ヒナの家系は酔いやすいと。そして多分直系ではなく嫁入りしたミーシャさんは濡れるくらいですむっと。濡れるくらい・・・。


「何を言ってるんですか!!」


 顔が熱い。絶対に今顔は真っ赤になっている。頭から湯気が出そうだ。


「あらあら、タイチさんにはまだ早かったかしら。」


 ミーシャさんが面白そうにコロコロと笑う。しかしまともに顔が見れない。


「確かめてみます?」


 スッと着物の間から白磁のような白くて長い脚をちらりと見せつける。その表情は妖艶と言った言葉が似あう大人の色気にあふれていた。


「っ!!」


 首がぐきっと鳴りそうな勢いであさっての方を向く。これはいけない。見つめたが最後目を離せなくなるような魔力がある。


「あらあら。冗談ですよ、冗談。でもタイチさんみたいな若い子にそんな風にしてもらえるとうれしいわね。」


 いや、お世辞抜きに20代にしか見えないから。ちらっと見えた肌もすごくきれいだったし。・・・いやいやこの思考はまずい。というかこの状況はまずいぞ。悪い方向へしか進まない気がする。


「うっ、ん・・。」

「ヒナ、気が付いた?」


 タイミングよくヒナが正気に戻った。助かったよ、ヒナ。今度ヒナが好きな魚のフライ作ってあげるからね。


「あー・・・。」


 ヒナが周りの状況を首を回して確認している。倒れている父親、足を着物から見せて色っぽい表情をしている母親、その前に立って首だけヒナに向けている私。


「略奪愛かニャ?」

「どこをどう見たらそうなる!!」

「タイチがお父さんを倒してお母さんと蜜月の時間を過ごそうとしたのを娘の私が見てしまったニャ。なんていうかドロドロニャ。」

「あらあら。」


 うん、ヒナは元に戻ったみたいだ。目がいつものからかう時のキラッとした目をしている。


「はいはい、もう大丈夫みたいだね。」

「タイチ、のりが悪いニャ。」

「そうねえ。」

「そういうのもういいですから。」


 からかう方は楽しいかもしれないけど、からかわれるほうは疲れるんだ。


「でも悪かったね。まさかマタタビだとは思わなかった。こうなるとは知らなかったし。」

「別にいいニャ。それにマタタビの実はマタタビ酒に出来るニャ。あればあるだけ欲しいニャ。」

「わかった。お詫びに必要な数を明日取ってくるよ。」

「やったニャ。これで飲み放題ニャ。」


 マタタビを持ってきてもお酒にする段階で酔って駄目なんじゃないかと思ったが、マタタビ酔いに強い人が鼻に布を巻いて作業すれば大丈夫らしい。そこまで飲みたいのかマタタビ酒。


「というかお酒にすれば大丈夫なの?」

「まああんまり大丈夫じゃないけど大丈夫ニャ。」


 絶対に大丈夫じゃなさそうだ。そばで見守っておこう。


「話もついたところでこの人は連れて行くわね。たぶんしばらく起きないと思うから。」


 ミーシャさんはラージュさんのそばに近寄ると、体の下に腕を通して持ち上げる。やだっ、男前!って冗談を言ってる場合じゃない。あの細腕で体格の良いラージュさんをお姫様抱っこしているのだ。しかも全く苦にもしていない。見えている光景のアンバランスさにちょっとめまいがする。しかしそんな私に構うことなくミーシャさんはすたすたと部屋を出て行った。


「ミーシャさんって強いよね。」

「そうだニャ。たぶんタイチと私とルージュが真剣に戦っていい勝負だと思うニャ。」


 ですよね。戦っている姿を見たことが無いから戦闘スタイルはわからないけどアンさんと似た匂いがする。


「じゃあ私もお風呂に入るからタイチは出ていくニャ。」

「早風呂なんて珍しいね。」

「ちょっと漏れたから気持ち悪いニャ。」

「アー、ソウデスカ。」


 ヒナ、冗談でも言っていいことと悪いことがあるからいつか気づいてね。そんな期待した目で見ても絶対に突っ込まないからね。

定番の猫にまたたび回です。

本当に狂ったように体をこすりつけますよね。

読んでくださってありがとうございます。

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RINの外伝の小説を書いています。次のリンクから読もうのページに行くことが出来ます。 「お仕事ですよ、メイド様!!」(飛びます) 少しでも気になった方は読んでみてください。
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