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RIN ~共に生きる異世界生活~  作者: ジルコ
第三章:猫人族の里にて
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イカ

ブックマーク、評価、感想などたくさんいただきました。

本当にありがとうございます。

「うーん、いいアイディアが浮かばない。」

(どうしたの、タイチ?)

「森の探索でだんだん魔物との遭遇率が高くなってきたからなんとか自転車に乗ったまま撃退する方法は無いかなと思って。」

(魔法じゃだめなの?)

「森の中であんまり火魔法を使うわけにはいかんでしょ。」

(そういえば火事になりかけたしね。)


 あの時は危なかった。なんとかアイテムボックスから水瓶を取り出して割って何とか消したからな。土魔法でふさいでしまえばよかったと後から気づいてと後悔したっけ。


(なんか迷宮でも同じことを言ってた気がするけど。)

「まあね。」


 結局迷宮では土魔法で対処するのが一番効率的だとわかったくらいだからな。あの検証してから増えた手札と言えば、魔板と火魔法くらいか。なんとかそれを含めて効率のいい方法は無い物だろうか?


「うーん・・・」

(まあ部屋で悩んでいても仕方がないから気分転換に里でも走ったら?)

「そうだな、そうするか。」


 ルージュの思惑にはまったような気もするがせっかくの休みに部屋に閉じこもっていても健康的じゃないしな。軽い運動がてら気分転換するか。


(相変わらずのどかだね。)

「そうだな。」


 町を抜けて田畑の地域に行くと人もあまりおらず、のどかな風景が広がっている。小川では子供たちが釣りをして遊んでいる。そこに見知った顔が居たので声をかけてみる。


「レー君、こんにちは。」

「あっ、タイチ兄ちゃんじゃん。こんな時間にいるなんて珍しいね。さぼり?」

「いや、今日はお休みだよ。」


 レー君というのは黒髪の13歳くらいの少年でこの里のガキ大将のような存在だ。会ってしょっぱなに、「兄ちゃん、タイチって言うんだよな。俺の事はレーって呼んでくれ。よろしくな。」とフレンドリーに話しかけてくれた。調査が終わって帰る途中に遊びに誘われて一緒に鬼ごっこをしたり、森からとってきた果物をあげているうちにレー君ともかなり仲良くなった。顔が広いようで味噌蔵や刀鍛冶の家の子供とも知り合いらしく、見学に行ってもいいように取り計らってくれたのも実はレー君だ。


「タイチ兄ちゃんも暇ならイカ上げする?」

「イカあげ?」


 こんな内陸部にイカがいるのか?いるとしても「あげ」とはどういうことだ、フライの事か?


「やっぱり外にはない遊びなのか?タイチ兄ちゃんなら知ってるかなって思ったけど。あっちでやってるから行こうぜ。」

「わかった、わかった。あんまり引っ張らないでね。」


 レー君に腕をひかれて川から少し離れた原っぱに連れて行かれた。そこには数人の子供が空を見上げながら手に持った紐で飛行物を操っている。


「凧か。」

「あっ、駄目だよ兄ちゃん。その言葉は禁句だよ。」


 えっ、でも見た限り凧だが、というか禁句ってなんだろう?


「この遊びを大昔教えてくれた人がこれはイカでタコじゃないからって、タコって言う人がいたら訂正するようにって伝わってるんだ。」

「そっか、わかったよ。じゃあイカ上げでもしようかな。」


 休んでいる子から凧を借りてレー君に持ってもらい、糸をぴんと張ってから風上に向かって走る。ぐんぐんと空を登っていく凧、いやイカか。ていうかイカってなんだ?明らかに凧だろ。どこかの方言か?それとも果物の梨の実を有の実って言う感じのゲンを担いだ言い方なのか?どちらにしろ日本人っぽいな。


「うまいじゃん。」

「まあね。」


 子供のころは凧あげ大会とかあったしな。自分で凧を作るところから始めるからなかなか苦労した覚えがある。

 ときおり糸を緩めてわざと落としたりして遊びながら、久しぶりの凧揚げを満喫する。風を受けて凧がゆらゆらと空を飛んでいる。あっ!!


「レー君。ちょっと用事を思い出した!!また今度ね。」

「またねー。」


 凧を借りた子にありがとうとお礼を言いながら屋敷への道のりを急ぐ。なんとなくいけそうな予感がする。

 屋敷に着くとゴブリンナイトの剣の刀身の柄に近い方の半分に魔術式をレーザーで刻んだ後、スライム液につけて乾燥させる。その時にあらかじめ作っておいたスライム糸とくっつけておくのを忘れない。


「よし、試作品第一号完成だ!!」

(おめでとー、というかいきなり帰ったかと思ったらすぐに作り出しちゃうし、なんなのそれ?)


 ルージュがゴブリンナイトの剣(ひも付き)を見ながら?聞いてくる。


「うん、コンセプトは遠隔操作できる剣かな。ちょっと見てみて。」


 スライムの糸を通じて剣に魔力を流す。すると剣がふわっと宙に浮いた。


(おぉー、かっこいい!!)

「でしょ。しかもね、いけっ!!」


 魔力の波を作ると剣が50キロくらいのスピードで飛び出し庭の地面に突き刺さる。剣先だけしか刺さっていないので魔術式の部分には影響はない。


(おぉー!!)

「さらに、戻れ!!」


 魔力の波を二つ作ると剣が地面から抜け元の場所へ戻ってくる。


(おぉー!!)

「どう、この機能。まだまだ研究し始めだから前進と後進しか出来ないけど研究次第でもっと自由に動けるような機能がつけられると思う。」

(タイチ、すごいよ。これがあれば僕でも攻撃できる。)

「それだけじゃないぞ、研究が成功して完璧に制御できるようになればたくさんの剣で空を飛べるようになるかもしれない。」

(あの映画みたいに?)

「そう、あの映画みたいに。」


 少年と宇宙人の心通わすあの映画の超有名シーンのごとく、ルージュに乗りながら空を飛ぶ日が来るのかもしれない。


(タイチ、指一本をハンドルに置いて!!)

「何で?」

(いいから早く!!)


 言われた通りハンドルに指を置くと、ルージュが光魔法で指先を光らせる。どんだけ好きなんだあの映画。


(フレーンド。)

「満足した?」

(うん。それで名前はどうするの?)


 名前かー。ネーミングセンスが絶望的にないからな。さすがに猫に猫ってつけるようなことはしないが、タマ、タマ2号とか野良猫につけていたら幼馴染にドン引きされたからな。同じように丸かったからつけただけなのになぜだ?


「うーん、ルージュはいい考えある?」

(タイチは無いの?)

「最初に思いついたのが、イカロス。」

(縁起悪いね。)

「ああ、墜落しそうだ。というわけでルージュ先生お願いします。」

(うーん、じゃあフェザーで。)

「ルージュも大概だよね。」

(目標がわかりやすい方がいいじゃん。)

「まあそうだけどね。」


 とりあえずはフェザーで行こう。まずはフェザー第一号機の問題点の洗い出しだな。フェザーの機能として欲しいのは思ったところへ飛んでいき、そして刺さった状態から戻ってくること。そして空中で自在に動けると言うところか。

 現状は前進と後進しか出来ない。これは魔術式を増やして条件分岐をしていけばある程度は解決できるはずだ。一番いいのは自動的に敵を狙う事だけどそんな魔術式は知らないからな。存在するかもわからないけれど。

 あとは武器の形状も考えないと。ゴブリンナイトの剣なら腐るほどあるけれど、もっとフェザーに適した形があるだろうし。というか今の前進と後進しかできないなら杭のような形の方がいいだろうしな。


「よし、じゃあまずは魔術式でどこまで操作できるようになるか研究だ。その試作品を明日の捜索で使ってみて問題点の洗い出し。で、また改良って感じかな。」

(タイチ、本当に頑張ってね!!)

「おっ、おう。」


 若干ルージュの意気込みに気圧されながらも魔術式の研究をしていった。やはり問題になるのは動きのパターン化だ。回転や、ひねりなど三次元の動きをパターン化しようとしても無限にありすぎて無理だ。魔術式は回路だからこればっかりはイメージではどうにもならない。いくつかパターンを絞って組み合わせてみて最適なものを選ぶしかない。

 夕食をはさみつつ試作を繰り返し、試作品30号まで完成した。それぞれ曲がる角度が違ったり、ドリルのような回転機能があったりとバリエーション豊かだ。さあ明日は楽しい楽しい実験だ。

今回の浮かぶ剣は金色の王さんのものがモチーフではなく、どちらかと言うとガンダ〇に出てきたインコ〇のイメージです。

特別な才能のない人に使えるような武器の開発っていいですよね。

読んでくださってありがとうございます。

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RINの外伝の小説を書いています。次のリンクから読もうのページに行くことが出来ます。 「お仕事ですよ、メイド様!!」(飛びます) 少しでも気になった方は読んでみてください。
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