ある日森の中
急にブックマークが増えてどうしたのかと思ったらレビューし直していただいたようです。
ありがとうございました。そして新しい方、自転車始めませんか?
「えっとここは薬草だったっけ?」
(そのはずだよ。でこっちがミルオウルと会ったところでしょ。)
「そうそう、あいつ結構速いよね。」
(うん、意外と大きいし。)
調査は順調だ。いや異常が見つかっていないから順調でもないのか?5周したが特に異常は見当たらない。特殊な魔物がいるわけでも、逆に空白地帯があるようなわけでもない。
今はルージュとマップでメモをつけておいた場所の内容確認して、紙に地図を描いてそこにメモの内容を記入している。コザの件もあるから異常を発見できなかったとしても何かしらの成果があったほうが良い。それならこの調査でわかった薬草など採取できる場所の書かれた地図があればこのネルタ大森林の中に住む猫人族の役には立つだろう。調査が失敗しても大丈夫だ。まあ保険の一種だが。
ちなみにミルオウルは調査初日に見たフクロウのような魔物だ。知識情報では
<ミルオウル>
フクロウによく似た魔物。フクロウとは違い夜行性ではなく昼に活動する。羽ばたきが聞こえないので不意打ちが得意。基本的に群れることは無い。
個体クラス:8級
大きく見えるがほどんどは羽で食べられる箇所は胴体部分のみ。淡白な味なので調味料で味付けをした後調理するのがおすすめ。
まあマップがあるから私には不意打ちは出来ないけどね。そして相変わらずの料理情報。淡白な味っていうからささみみたいな感じなのか?バンバンジーとかが出来そうだ。調査が終わったら狩って調理してみよう。
「ふぅ、こんなもんか。」
(おつかれー。明日も調査?)
「そうだね、明日は調査して、明後日は休みにしようかな。」
(りょーかーい。)
「じゃあ風呂行ってくる。」
(はーい。)
一仕事終えた後の風呂は格別だ。体の疲れが溶けて無くなっていく。里を出たらこんな風に毎日風呂に入ることも出来なくなってしまう。残念だが仕方がない。この文化がもっと広がればいいのに。お湯の中でふくらはぎをもみながらそんなことを考えた。
「これはまずいか?」
翌日、いつも通りにマウンテンバイクを楽しみながら森を走っていると前方に白い点が7個の赤い点に囲まれているのがわかった。赤い点を慌てて確認するとフォレストウルフだった。木こりか冒険者が囲まれたか?その白い点は全く動かない。
あっ、赤い点が一つ消えた。これなら大丈夫かもしれない。
(どうするの?)
「うーん。」
強い冒険者だったら大丈夫なのかもしれないが、そうでなかった場合は絶対に後悔するだろう。囲まれているのがわかっていたのに無視したのだから。
「とりあえずこっそり確認してみて危なさそうならフォレストウルフを始末しよう。もちろんこちらの存在は気づかれないように。」
「りょーかーい。」
100メートルほど離れた位置にルージュを置き足音を極力たてないように近づく。フォレストウルフたちのいる位置はちょうどくぼみになっていてもっと近づかないと見るのは難しい。
近づく間にもフォレストウルフは4匹まで数を減らしている。無駄足っぽいな。
ザッザッ。落ち葉が多いため少し音がするが無事にくぼみの上まで着くことが出来た。
「・・・。」
そこで見た光景は想像を超えていた。マップのLvアップしたから白い点の種族までわかるようになったのにそれを調べなかったのは私の落ち度だ。魔物に囲まれているんだから人だろうという思い込みもあった。
目の前で繰り広げられていたのは右目に傷跡の残る、体長3メートルを超えた熊が跳びかかってくるフォレストウルフを鋭い爪や牙で蹂躙する光景だった。フォレストウルフも馬鹿ではない。連携して四方から囲んで一斉に攻撃し熊の体に傷をつけている。 しかしその熊は右腕にかじりついていた一匹をそのまま左足に噛みついていた一匹に叩きつけるとそのまま鋭い爪で2匹同時に突き刺す。ドスッという重い音が響き2匹の命が消える。
「ガルァ!!」
熊が威嚇の声を出す。フォレストウルフは一瞬ひるんだがあきらめる気は無いようだ。熊の周りをぐるぐると回り隙を探っている。
熊は動かない。まるでどこからかかってきても同じだとでも言うように。
手に汗握る状況だ。何かきっかけがあれば戦いは始まりそしてほどなく終わるだろう。思わず足に力が入る。
パキッ。
パキッ?下を見ると足元の木の枝が折れていた。しまった。
熊と目が合う。あっ、やばい、見つかった。
しかしフォレストウルフは私よりも熊に注意を向けていた。そして私を見た熊の隙をつくように最後の望みをかけた一撃として首に牙を食い込ませる。
「グルァ!」
フォレストウルフの牙は確かに熊の首を捉えていた。しかし相手が悪かった。噛まれる直前に首を振り、致命傷となる箇所をはずすとその巨体を生かした前足による一撃で地面に縫い付ける。そして背後から右足に襲い掛かっていたフォレストウルフが危険を察知して逃げようとするのを許さず、左前脚によるふり抜きを頭部に当て、ホームランのように飛んだそいつはベチョっという音と共に木にぶつかり潰れた。
そしてここには熊と私しかいなくなった。
「・・・。」
「・・・。」
逃げるべきか?倒そうと思えば倒せるとは思う。しかし見た感じあの熊はこの森の中でも強い部類の生き物だ。もしかしたら森の主なのかもしれない。ここで倒してしまったら生態系が崩れて異常がさらに広がる可能性もある。
熊と目を合わせたまま考える。目をそらせば即座に襲い掛かってくるだろう。
「・・・。」
「・・・。」
目を合わせたままの状態が続く。長い。体感時間では1時間、実際には5分くらいのにらめっこの末、熊はフォレストウルフ2匹を口にくわえ悠々と森の奥の方へ去っていった。まるで私など最初からいなかったかのように。それは王者の貫禄さえ感じる歩みだった。
「ふぅ。」
(タイチー、そっちはどんな感じ?)
(今、そっちに戻る。熊だ。)
(熊?)
(ある日、森の中ってやつだった。歌みたいにのどかではなかったけど。)
今回の件でわかったことがある。マップをちゃんと確認すること、そして必ずしも魔物が襲う側とは限らないということだ。気を付けよう。
その後ルージュと走りながらことの経緯を話していった。
(ふーん。まあ人間だって魔物に勝てるんだから熊だって勝てるよね。)
「まあ、そうだね。」
(というか、熊にレベルってあるのかな?)
「ルージュにもあるんだしあるかもしれないね。」
(じゃあどこかに最強の熊さんとかいるのかもしれないね。)
その跳躍は木を超え、その噛みつきは岩をも砕き、その爪は固い魔物でさえ一刀両断にするそんな熊の姿を思いつきブルブルっと首を振る。
「やめてよ、この森にいたら最悪だ。」
(そんなのがいたら逃げきれないだろうしね。)
まあその時は最終手段を使うけどね。
(それにしても中心へ近づくにつれて薬草とか果物とかいいものが増えてきたね。)
「まあ、その分魔物との遭遇率も増えてるけどね!!」
ダートを翼に当てミルオウルを打ち落とす。こいつだけでなくフォレストウルフなどの動物系の魔物、鳥系の魔物との遭遇確率が上がっている。まだまだ走るのに支障が出るようなことは無いが両手で操作しなければいけないくらいの場所では魔法だけで対応しなければいけない。ちょっと他の手立ても考えようかな。
熊、恐いよ。
一度山道で見かけて、自転車で必死に逃げました。
あんな童謡は嘘や。
読んでくださりありがとうございます。




