米
昨日、活動報告に300ポイント記念の短編を投稿しています。
本編には全く関係ないので興味のあるかたは見て下さい。
「タイチ君はなんて言うか・・・」
「うん、ちょろいニャ。」
「そうねえ。」
「やめますよ。」
「あぁ、ごめんニャ。」
いや、自分でも甘いとは思うけどヒナが本当に嫌がっているのはわかるしな。まあ半分は楽しんでいるだろうけど。
「そうだね、タイチ君は冒険者ということだが得意なことはあるのかニャ?」
「一応シーフですからそれ関係は得意です。あとは薬を作ったりとか。」
「まあ、大概できる便利な奴ニャ。」
突っ込みたいが事実そういう部分もあることを否定できない。特にヒナの場合一緒に探索していたからそういう印象が強いだろうし。
「ふむ、そうかニャ。それならば森の調査をお願いしたいニャ。ここ最近魔物や動物の動向がおかしいニャ。」
「えっと森ってこの周囲のですか?」
「そうだニャ。ネルタ大森林というニャ。」
「なにか原因として考えられることってありますか?」
「そうねえ、無いわね。ここ3か月くらい里の付近にまで魔物が来るようになったのよ。」
「わかりました。とりあえず調査してみます。」
原因調査か。達成できたかどうかがわかりにくいお願いだな。下手をすれば調査している最中に原因となったことが無くなるかもしれないし。まあ原因が見つかれば良い分、その原因が無いことの証明をするよりは全然ましだが。それが無いという証明はそれが有るという証明に比べて難易度が極端に上がるしな。
「それでは、客間を用意してあるニャ。自分の家だと思ってゆっくりしてほしいニャ。」
「そうよ、ゆっくりしていってね、お婿さん。」
「ありがとうございます。それとミーシャさん、そのネタいつまで引きずるんですか?」
「お義母さんよ。」
「いや、だから・・・」
「お義母さん。」
「はい、お義母さん。」
圧力に屈した。だめだこの母親には勝てそうにない。いろんな意味で。
「じゃあ私が案内するニャ。」
ヒナの案内で屋敷の離れにあるお客さん用の部屋へ行くことになった。部屋を出てもコザの姿は見えなかった。自分で帰ったとは思えないから、たぶん誰かが運んで行ったんだろう。
「離れならルージュもそばに置けるから安心するといいニャ。」
「ああ、それはありがたいね。まあこれがヒナが初級迷宮を踏破したかった理由なんだね。」
「そうだニャ。私「共感」のスキルがあれば相手の思っていることがある程度分かるから、貴族達にものすごく需要があるニャ。まあ簡単に言えば家のために婚約させられるのを回避する方法が初級迷宮踏破だったニャ。」
「世知辛い話だね。」
「長として種族を繁栄させる方策を打つのは当たり前ニャ。」
「それにしてはあっさりと引き下がったね。」
「12歳の時に約束したニャ。初級迷宮を16歳までに踏破すれば冒険者として自由に生きていいって。ご先祖様からの言い伝えもあるしニャ。」
「言い伝えって?」
「遠い昔、私たちのご先祖様がドラゴンに乗った冒険者に助けられたらしくて、冒険者を目指す若者を邪魔してはならないって言い伝えられてるニャ。」
「へー。」
ドラゴンライダーの冒険者か。なんか勇者みたいだな。いや遠い昔って言っていたから本当に勇者なのかもしれないけど。
「まあタイチは調査を頑張るといいニャ。私はついていかないけどニャ。」
「ヒナが招いた事態だけどね。」
「タイチなら何とかなるニャ。私はしばらくのんびりしながらいろいろな手続きをしておくニャ。お断りの手紙も書かないといけないしニャ。」
「それはお疲れさま。でもヒナはいいの?里の人たちは完全に婚約者だと思ってるよ。」
「タイチがいいなら私はそれでもいいかと思っているニャ。」
「・・・。」
ヒナがちょっと頬を染めながらうつむいて、チラッ、チラッとこちらを見ながら爆弾発言をした。いや、ヒナはかわいいし、私にはもったいないくらいのいい女の子だけど、ほら、まだ付き合ってもいないのに婚約とかはちょっと早いっていうか・・・。
「冗談ニャ。黙り込まないでほしいニャ。」
「・・・その冗談は笑えないよ、ヒナ。」
そうですよね。ヒナみたいな美少女が私の相手になるわけないですよね。わかってたよ、嘘じゃないよ、ほんとだよ。
「まあ、将来はわからないニャ」
ヒナが何かをつぶやいていたが、落ち込んでいる私には聞き取ることは出来なかった。
数時間後、お昼でも一緒にどうかねと誘われ向かった先で待っていたのは懐石料理らしきものだった。ご飯に刺身の盛り合わせ、麩や人参、里いもなどが入った煮物に、アユの姿焼き、よくわからないキノコの入ったお吸い物に茶碗蒸し、そしてデザートにミカンまでついている。
何より1年以上ぶりの白いご飯だ。この世界に来てから一度も見たことが無かったので今まではそんなに恋しいとは思わなかったのだが、実際に目の前で見るとなんか感動するし、ものすごく食欲をそそる。やっぱり日本人ならご飯だったんだ。
「「「「いただきます。」」」」
両親、ヒナ、私と声を合わせて食べ始める。箸を使うのも久しぶりだ。ご飯を一口すくい噛みしめる。噛むごとにご飯の甘みが口の中で広がりこれだけで茶碗一杯は食べられそうだ。その他のおかずも食べていくが素材の良さが引き出され、うまみが凝縮されている。この世界に来てこんな食事が出来るとは思わなかった。
夢中でムグムグと食べていて気が付かなかったが他の3人の視線が私に集まっていた。
「えっと、何か?」
「いや、普通に箸を使うなと思ってニャ。」
「そうねえ、むしろヒナよりも上手かもしれないわ。」
「タイチはヤマト国出身だから当たり前ニャ。それに私はしばらく使ってなかったから下手になっただけニャ。」
セーフ!そういえば箸を使うのはこの世界に来て初めてだった。ヤマト国出身って誤解されたままで良かった。でも初めて会った箸を使う人たちが猫耳ってすごい世界だな。
「そういえば、この料理はこの国の料理と一風変わっていますがどうしてですか?」
「我々の先祖はヤマト国から逃げてきたのだニャ。ヤマト国の3代目が獣人の排斥政策をとったのだニャ。その時に持ってきた種から米や野菜を作っているからニャ。」
「そう聞いているわね。だから料理もヤマト国の料理なのよ。お口に合うか心配だったけれど大丈夫みたいね。」
「はい、とても美味しくいただいています。」
「パンもいいけどやっぱり米が一番ニャ。」
その後も久しぶりの和風料理を十分に楽しんだ。ご飯のおかわりは2杯で我慢しておいた。今の身分は居候っぽいしな。
料理には、醤油や味噌が使われていたので、どこかに蔵があるはずだ。ここを旅立つ前にたくさん仕入れよう。自分の中の最重要事項にそれをメモした。
サブタイトルに迷ったのですが、定番にしてみました。
やっぱり異世界に行ったら米を探しますよね。
読んでくださってありがとうございます。




