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RIN ~共に生きる異世界生活~  作者: ジルコ
第三章:猫人族の里にて
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里帰り

もうすぐ300ポイントです。

感謝、感謝です。

 翌朝、ノノとメルリスで別れて、改めて猫人族の里へ出発した。今度は盗賊に会うこともなく順調に進み、計画よりかなり早く3日目の夜には猫人族の里付近まで着いたが今は野営の準備中だ。夜は里に入れないとのことだったのでおとなしく明日の朝に入ることにしたのだ。


 盗賊に襲われた森で放置した盗賊たちが既にいなかったのは想定していたのだが、道をふさいでいた大き目の木が粉々に砕かれて道の脇に捨てられていたのには驚いた。斬ったでも焼いたのでもなく、まるでハンマーでたたき壊したかのように粉々になっていた。迷宮が近いから高ランクの冒険者の仕業かもしれない。ついでなので燃料としていくらか捨てられていた木材をもらっていった。


 翌朝、いつもの時間に起きて朝の訓練をし、それが終わったころにヒナも起きてきたので朝食をとることにした。ルージュがいるので夜の警戒をせず眠れるのは冒険者にとってかなりのアドバンテージだ。一応周囲に罠をはって最低限の警戒網は作っているが。


 食事の準備は基本的に私がしている。ヒナも料理が出来ないと言う訳ではないらしいのだが、作るのはあまり好きじゃないらしい。らしいというのはヒナが全く作ろうとしないから、確認のしようがないためだ。別に食事を作るのは苦じゃないし、ヒナも美味しそうにたべてくれるので別にいいかと思っている。


 食事も終わり、周囲の罠を解除しておく。落とし穴に落ちていたスライムとかはそのまま生き埋めにした。罠をそのままにして他の人がはまってもまずいからな。


「じゃあ、いよいよ里に行くわけだけどちょっと注意がいるニャ。」

「どういうこと?」

「猫人族の里はちょっと特殊な場所ニャ。タイチは私がいいって言うまでしゃべったら駄目ニャ。」

(郷に入っては郷に従えってやつだね。)

「わかった。従うよ。」

「それは良かったニャ。まあ何かあったら念話で教えてくれニャ。」

(そうだねー。暇なら僕と話していてもいいしね。)

「そうだな、ヒナの話を聞く限りかなり今までの街とは変わってるみたいだし景色でも見て楽しんでるよ。」

「よろしく頼むニャ。」


 珍しくヒナが頭を下げたので驚いてしまって、この時の私は気が付かなかった。下を向いたヒナがニヤッと笑っていたことに。





 里に近づいていくにつれて、今までこの世界で見たような防壁とは一風変わった防壁が見えてきた。


(ねぇ、タイチ。)

(ああ、瓦だな。)


 森の中に突然白い土壁があり、その上に色は群青色だが確かに瓦らしき物体が載っている。なんとなく日本の城で見た塀を思い出す光景だ。


「あっちニャ。」


 ヒナについていくと寺の門のような大きな木の扉が相手を威圧するかのように建っていた。ご丁寧に門の上のほうに「猫人族の里」と崩した字体で書かれた看板が掲げられている。話してはいけないと言われたから声を出せないが、なんだこの里は!!と突っ込みたい気分だ。

 門には槍を持った兵士が2人いるのだが、傘のような兜、鎧、すね当てと周囲の雰囲気もあるのかもしれないが足軽のような装備だ。今までのこの世界との違和感が半端ない。


「そこの者、止まれ。」


 足軽ズが槍をこちらに向けて威嚇してくる。ずいぶんと好戦的だ。いや、違うのか。街道から外れたこんな場所にまで来る人なんてめったにいないから警戒しているだけか。


「何用でここに参られた?ここは猫人族の里。普通の人族は入れぬぞ。」

「やっ、久しぶりニャ。」


 警戒心MAXの足軽ズをよそに、ヒナはまるで近所の人に会ったかのような気軽さで声をかける。大丈夫なのか?


「えっ、ヒナ様?ヒナ様ではありませぬか!!」


 足軽ズが槍を即座に置き、膝をついて頭を下げる。いわゆる土下座スタイルだ。


「平に、平にご容赦を!」

「あー、別にいいニャ。今は家を出て修行している身ニャ。普通の冒険者と同じ扱いでいいニャ。」

「ははー!!」


 いや、足軽ズさん。それ絶対に一般の冒険者に対する対応じゃないでしょ。


(ねえねえ、タイチ。ヒナ様だって、ヒナ様。ヒナって何者?)

(予想はいくつかあるけれど、この先の展開が怖い物しかないな。本人に聞いてみればいいんじゃないか?)

(ねー、ヒナ。聞こえてるんでしょ?)


 答えないかー。そうだよな。ヒナの顔を見ればわかる。あれはいたずらを企んでいるときの目だ。そして私たちの反応を見て絶対に楽しんでいる。いい笑顔してやがるぜ。

 ヒナがいたずらを仕掛けてきているから話してもいいような気もするが、どこまで本当なのか判断が出来ない。今までの知っている情報もヒナからの情報しかないしな。本当に話したらまずい状況の可能性もあるし。お釈迦様の掌の上でもてあそばれる孫悟空の気分だ。


「それでそちらの人族の少年は?」

「私の連れニャ。屋敷に連れて行くから準備するニャ。」

「えっ、まさか本当なのですか?」

「本当ニャ。いいから早く持ってくるニャ。」


 足軽ズの若いほうが門の奥へと走っていき、しばらくして赤い腕輪を持ってきた。そしてその腕輪を私に差し出す。腕にはめろということだろう。


「ヒナ様のことをよろしくお頼み申す。」


 腕輪を受け取ると、その手を両手でしっかりと握られた。目もうるうるさせているし嫌な予感が膨れ上がる。しかし話すことは出来ないのでうなずいておいた。ヒナは相棒だし間違ってはいないはずだ。

 足軽ズが再び土下座で見送ろうとするのをヒナが押しとどめてなんとか頭を下げるだけで見送ってもらった。非常にきれいな90度のお辞儀であった。


 門の中に入るとそこには黄金色の大地が広がっていた。


(稲だね。)

(ああ、まごうことなき稲だ。)


 見渡す限りの田んぼであった。稲穂は収穫時期だからであろうか重そうに大きく垂れており豊作であることがうかがえる。用水路もあるようだが水は流れていなかった。ところどころに農具を置く倉庫だろうかそれとも休憩用の家だろうか小さなかやぶき屋根の建物が建てられている。


(のどかなところだねー。)

(ああ、なんだか懐かしく感じるな。)


 日本の原風景って感じだ。この規模の田畑なんてテレビの映像でしか見たことが無いはずなのになぜこんなにも郷愁を誘うのであろうか。

 物思いにふけりながらヒナの後をついていくと第一里人を発見した。


「あれぇ、ヒナ様じゃねぇですか。おかえりんさい。」

「ただいまニャ。」

「その腕輪は・・・。あれまぁおめでたいことだ。わしぁ、ちょっとひとっ走りしてくるだ。」


 先ほどまで腰を曲げて稲を刈っていたおじいさんが信じられないくらいの速さで中心の方へ走っていく。下手な冒険者より絶対強いぞ、あのおじいさん。

 進んでいくにつれてあのおじいさんが知らせたのか、会う里人達から「ヒナさまー」とか「おかえりなさい」と声をかけられてヒナの人気と有名さが認識できるのだが、その次に多い「おめでとうございます」の言葉が不穏すぎる。予想が当たっていないことを祈りたいが無理だろうな。


(熱烈歓迎だね。)

(いいね、ルージュは。私は騒動に巻き込まれる気配がプンプンしてちょっと胃が痛いよ。)

(ストレスは溜め込むと体に悪いよー。)

(それはストレスの原因のそこで楽しそうに歩いているヒナに言ってよ。)


 ヒナは相変わらずいい笑顔で声をかけてくる里の人々と言葉を交わしている。こちらの念話での問いかけには一切答えずに。ストレスはかかっているが律儀に話さないのはヒナを信頼しているからだ。まあ最終的にはひどいことにはならないだろう。

 そう考えるとだんだん逆にどんなことに巻き込まれるのか楽しみになってきた。ヒナと一緒に家や店が並ぶ通りを景色を楽しみながら歩いてまっすぐに進み、中央の塀に囲まれたひときわ大きな建物の門をくぐる。あっ、やっぱりちょっと後悔するかも。

方言は適当にごっちゃにしてます。

これで地方が特定されたりしたらびっくりですね。

読んでくださってありがとうございます。

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RINの外伝の小説を書いています。次のリンクから読もうのページに行くことが出来ます。 「お仕事ですよ、メイド様!!」(飛びます) 少しでも気になった方は読んでみてください。
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