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RIN ~共に生きる異世界生活~  作者: ジルコ
第三章:猫人族の里にて
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箱の中身

本日二話目の投稿です。

ご注意下さい。

「ねえ、これ何だと思う?」

「聞いてみればわかるニャ。ということで中身は何ニャ。」

「ハッ!自分で確かめる・・・、すみませんでした。捕まえた冒険者です。」


 なめた口をきこうとしたので私がダートホルダーに手を突っ込み、ヒナが剣の柄に手をかけた瞬間に態度が一変した。調教の成果は出ているようだが物覚えは悪そうだ。


「こいつらに捕まえられる冒険者か・・・。」

「まあ新人とかが囲まれれば捕まると思うニャ。」


 箱の大きさからして1人だけだろうし、新人で弱いのに一人旅なんて無謀もいいところだ。人のことを言えないような気もするが、私には最初からルージュがいたから一人旅じゃないし。最初はルージュに意識があるなんて知らなかったけどね。


「とりあえず助けるニャ。」


 ヒナがゴトゴトと中から音を出している箱に打たれていた釘を箱の角ごと斬り、ふたを外す。くぎ抜きが見つからなかったとは言え、ずいぶん荒っぽく感じるがヒナが剣で失敗することはないだろう。中の人がどう思うかはわからないが・・・。

 中にはさるぐつわをされた10歳くらいの金髪の少女がいて、急に明るくなった視界に目をしぱしぱさせている。


「うー、うー!!」

「ちょっと待つニャ。」


 ヒナが少女のさるぐつわを外してあげる。


「ちょっと、あんた達。私をどうするつもり!!私は勇者パーティの魔法使いよ!!貴重な人材なのよ!!」

「捕まっていたのを助けただけ・・・」

「あれね、私の美貌に目がくらんだ貴族かなんかがさらうように画策したのね!!でも残念ね。私には魔王を倒すという目標があるからそんな罠にははまらないわ。」

「だから・・・」

「私はメルリスへ行って、あっさりと迷宮をクリアしちゃって・・・」


 少女がマシンガンのように話し続けている。勇者パーティって1人じゃんとか現に今捕まってるじゃんとか突っ込みどころが多くて仕方がない。こちらの話も聞かないしどうしようかな。あっ、ヒナのこめかみに青筋が出てる。まずい。


「ヒナ、落ち着いて。」

「私は落ち着いてるニャ。」

「そう言いながら剣の柄に手をもっていかない。」

「大丈夫ニャ。壊れたものは叩けば大体直るものニャ。」

「そいつ、捕まってからずっとそんな感じなんすよ。」


 盗賊のリーダー(推定)も大変だったみたいだ。どうしたら黙るだろうか。口をふさぐこと、口をふさぐこと・・・、そうだ!


「むぐっ。」


 少女のしゃべっていた口に迷宮焼きを詰め込む。抵抗するかと思ったがすんなりと食べ始めた。毒とか入っていたらどうするつもりなんだ。食べ終えるとすぐにしゃべりだそうとしたので続けて放り込む。ムグムグと口いっぱいに迷宮焼きを詰め込んで頬を膨らませている姿はハムスターを彷彿とさせてかわいらしい。


「私と彼女は冒険者で、たまたま君を捕まえた盗賊に襲われて撃退してここに来ました。ここまでは大丈夫ですか?」


 まだ口に詰まっていてしゃべられない少女がこくりとうなずくのを確認して話を進める。口の中のものが減ったら追加も忘れない。


「あなたを助けたいと思いますから落ち着いて話をしてもらえますか?」


 再びこくりと首を縦に振ったのを確認し、迷宮焼きを放り込むのをやめる。たったこれだけの話をするだけなのに5個もいるのか。


「むぐっ、むぐっ・・・んっ。勘違いして悪かったわ。助けてくれてありがとう。」

「やっと落ち着いたニャ。」

「私はタイチ、彼女はヒナ。メルリスから来た冒険者だよ。君の名前は?」

「ノノよ。本名はノノーリアだけど親しい人にしか教えないからノノって呼んで。あなた達は命の恩人だから特別ね。」


 ノノがウインクする。整った顔立ちをしているから様になるな。思わず顔を見つめてしまって気が付いた。耳が長い。


「エルフ?」

「そうよ。珍しいでしょ。」


 ノノが耳をピクピクさせる。耳って動かせるんだ。変なところに感心しているとヒナがずいっと前に出てきて話し始める。


「ノノはメルリスに行くつもりだったのかニャ?」

「そうよ。まだまだレベルが低くて弱いけど、いつか勇者様と一緒に魔王を倒す英雄になるんだから。」

「そうかニャ。頑張るといいニャ。」


 ヒナが懐かしいものを見るかのように温かい目で見ている。勇者と共に戦った英雄の物語はこの世界ではメジャーだし、勇者ごっことかもやっているのをよく見かけるから誰しも一度は通る道なのだろう。ヒナもそうかもしれない。


「ノノの事情はわかったよ。それで、だ。盗賊さん、これから誰が来るのかな?」

「なっ何の話だ?俺は知らん!!」


 盗賊は知らないふりをしようとしているみたいだが、ごまかし方がそっぽを向くってガキかお前は。


「どういうことなの?」

「ノノが釘で打たれた箱に入れられていたのが証拠だよ。いくら空気穴があるとはいえ、ここに生かして捕えておくつもりならそんなのは手間でしかない。少なくともどこかに運ぶつもりだったはず。そしてここにはノノを入れた箱を運ぶような馬車や荷車は無い。つまり誰かがここにノノを引き取りに来るってことだ。」

「はぁー、なるほどね。」

「知らん、俺たちはただそいつがうるさいから箱に入れただけだ。」


 まあ考えなしの盗賊ならその可能性もあると思うが。ヒナを見る。黙って首を振った。黒確定だな。


「この期に及んでいい度胸だね。ちょっとあっちでお・は・な・しをしましょうか。大丈夫、大丈夫。怪我をしても治せるってわかってるでしょ。」

「ひぃぃー。」


 盗賊の男がガタガタ震えておびえだす。そんなに怖がらなくてもいいじゃないか。お前が動くから当てないつもりだったのにちょっと狙いがずれて丸い玉が1つつぶれただけだろ。私もさすがに焦ってすぐに治療したから何とかなったし。男としてはごめんとしか言いようがないが。


「話す、話すからやめてくれ。名前とか詳しいことは何もわからねぇんだ。顔もローブとマスクで覆って隠してやがるし。綺麗な奴とか特殊なスキルがある奴、珍しい物を見つけたら合図すると2日以内に来るんだ。金払いがいい上客だから俺たちはどんな奴でも気にしねぇんだ。嘘じゃねえ!!」

「今回はいつ頃来るニャ?」

「たぶん今夜か明日の午前だ。」

「どうするニャ?」


 うーん、盗賊の話を聞く限りその人物もまっとうな職業じゃなさそうだ。善意の第三者がお金を出して盗賊に襲われた人を救っていると考えるほどお花畑ではない。


「そうだね、待ち伏せして捕えてみようか。相手の実力がわからないからいつでも逃げられるように準備はしておいて。」

「了解ニャ。配置はどうするニャ?」

「私が中で隠れて、ヒナは取引相手が入ってきた後に外から入って挟撃するのが一番確実かな。まあその前にこのアジトを念入りに調べないといけないけど。」

「わかったニャ。」

「私はどうすればいい?」

「ノノはとりあえず箱の中かな。」

「私も戦えるわよ!!」

「違うよ、敵を引き付けるっていうノノにしか出来ない重要な役割だ。」

「重要、重要ね。そうね、私にしかできないわね。フフフッ。」


 うん、ちょろい。盗賊にとらわれるような実力しかないノノをそんな得体のしれない相手と戦わせるなんてありえないからな。別の部屋に隠しておいて万が一そっちの部屋にその人物が行った場合、対応が間に合わずに人質にされる可能性もあるから箱に隠すのがベストだ。ものは言いようだな。


「じゃあまずはこのアジトを探索するか、まあ案内人付きだけど。」

「「おー。」」

たまに漫画とかで箱に穴もあけずに生き物を入れたりする描写がありますが空気はどうするんでしょうか。

普通に考えて死ぬか衰弱しそうですが。

読んでくださってありがとうございます。

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RINの外伝の小説を書いています。次のリンクから読もうのページに行くことが出来ます。 「お仕事ですよ、メイド様!!」(飛びます) 少しでも気になった方は読んでみてください。
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