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私はあなたが好きでした  作者: 珀桃
9人の男女
9/20

ごめんなさいって呪文を唱えよう

9人の男女編これで終了です。

俺、キングは彼女に対して言い過ぎたとは思うし、あれぐらい言うのは当然だとも思う。昔から好きだった八千代が、俺に気があるかもしれないと今更考えて、彼女の真意を問おうとも思ったけど、鏡花ちゃんと恋人になれたばかりなのに、そんなことしてどうするんだよ、とも思う。俺はどうしようもない。


***


それから私となすびとアンナはキングについて話し合っていた。

「キングは悪い奴だな。こんなにも想ってくれている女子がそばにいるというのに」

「そ、それは言い過ぎよ。よ、世の中の男が石だとしたら、私はたまたまそのうちの一つを気に留めただけよ!」

「そしてその石に翻弄される八千代」

アンナがうまくまとめたところで、アンナの肩をつつく男がいた。アンナの彼氏、ミーシャだった。

「わっ、ミーシャ!」

アンナはびっくりして後ずさった。

「面白そうだから混ぜてくれない?」

ミーシャは屈託のない笑顔で言った。

***


「あんたがミーシャ…」

俺はびくびくしながら恋敵を見た。

「君は?」

「俺は川田なすび、よろしく」

(いきなり出てくるなよ!心の準備が出来てない!…もしかして俺の気持ちを知ってて来た?)

アンナが不思議そうになすびを見た。

アンナは俺の気持ちを知らないからどうして俺がこんなにびくびくしているのか分からないのだろう。

「じゃあ、さっきの話を詳しく教えてよ。なすび君」

「う、うん…」

(純粋に八千代とキングの恋話が聞きたいだけなのか?それとも…)


それから俺はなすびに要点だけをかいつまんで話をした。八千代がキングを好きなのにいじめていたこと。キングが耐えかねて転校したこと。転校先で彼女が出来ていたこと。こないだ八千代がその二人のデートに鉢合わせしたこと。そして八千代とキングが大げんかしたこと。


「やっぱりさー、あの呪文を唱えるしかないだろ」

すべて聞いたミーシャは八千代にアドバイスをし始めた。

「あの呪文?」

「君がいつまで経っても言えないでいる、ごめんなさいって呪文だよ」

「う、うん…頑張る…」

八千代の内心はこうだー絶対無理、だ。

「八千代!また無理って思ったでしょ!そーゆーの、すぐ顔に出るんだから」

「何故わかる!」

見るからに図星ですと八千代の顔が物語っている。


***

 同じ頃、キングも鏡花に八千代とのけんかのことを相談していた。

「キングもここは素直に…」

鏡花は思い悩む彼にアドバイスをし始めた。

「ごめんなさいって呪文を言わなきゃ。これ、仲直りの基本じゃない?」

「努力はしてみる」

キングの内心はこうだー絶対無理、だ。

「仲直りできたら私のおかげね!なんかお礼してよ!…ところで、けんかしてる相手って誰?」

「前にも話した…八千代って子なんだけど」

鏡花の表情が曇った。まさか、八千代とは思わなかったのだ。もしかして仲直りなんかさせたら二人はくっつくのではないだろうか?まだ、何もできていないというのに!それは阻止しなくてはならない。そんなことになったら、わざわざこの私がこんな男に媚びた意味がない。


その日、帰路で鏡花はつぶやいた。


「余計なこと言っちゃったな」

「ハナちゃん、どうしたの?」

梨子りこ)姉さん!」

梨子は鏡花にとって姉のような存在であり、鏡花のことをハナと呼ぶ。美人で優しく、鏡花にとって憧れの存在だ。

「助けて…」

「あら。甘えん坊さんね」

「キングが私から離れていくかもしれない!」

「ハナちゃん、心配し過ぎよ。キングは今のところハナちゃんにべったりだし、その…八千代ちゃんとかいう子ともすぐに仲直りするとはとても思えないわ」

「…よかったぁ…でもさ、梨子姉さん、どうしてそんなに分かるの?」

梨子はビシッと私に指を向けて言った。

「そりゃあ、もう!女の勘って奴⁈」


***


田丸たのまる)先生!」

放課後、なすびは職員室で彼の良き相談相手である田丸将大たのまるまさひろ)教諭を呼び止めた。

「どうしたんだ川田」

「ちょっと相談してもいいですか?土曜日に来たメールのことですが…どうしたらいいのかわからない」


なすびはメールの画面を見せた。

『アンナを助けたければ、彼女と恋人になれ』とある。


「意味が分かりません。俺はそんなこと言われなくてもそうするつもりなんです。元々八千代に協力したのも、八千代に近づけばアンナとも近づけるかな、と思っただけだし」

「でも三崎さん、既に誰かと付き合ってなかったっけ?」

三崎というのはアンナの名字だ。

「ミーシャのことですか」

「三崎さんとミーシャさんはとてもうまくいっている。それを快く思わない人がいるんじゃないか?」

「それなら俺にこんなメール送ってこないで、二人のどちらかに別れろと言えばいいのに」

「もしかすると、君の恋を応援してるのかもしれない」

「誰か分からない人にこんな口調で応援されても困りますよ」


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