なすびの思い、鏡花の正体
私にキングの連絡先を教えた男は何故かゲームをしながら自己紹介をした。
「俺はキングの幼馴染の川田なすび。八千代ちゃんを駅で見たんだ」
私はそれを聞いて心臓が飛び出る思いだった。…あの、あの、恥ずかしい場面を見られた!
「それで鈍感なキングは気づかない恋の匂いを俺は気づいたわけだよ、だから応援しようと思ってね」
ところでなすびと名乗った男はさっきからずっと何かゲームをしている。
それはアンナも気になったらしい。
アンナが尋ねた。
「なすび…君だっけ。さっきから何してるの?」
するとなすびはゲーム画面を見せた。画面には、金髪で緑色の目をした美少女キャラクターが写っていた。
「これは俺の58番目の彼女でレミリアちゃんというんだ」
「…お前、頭大丈夫か?」
アンナがいかにも幻滅したという様子で言った。
すると、教室のドアが開く音がした。アンナの表情が一瞬で嬉しそうに変わった。その変化をなすびはじっと見つめていた。アンナはドアの方へ走って行く。
「ミーシャ!」
彼、ミーシャはアンナの彼氏だった。アンナは私とは違って彼に素直で羨ましい。なすびは突然私の手を握った。
「八千代ちゃん!伝えられない者どうし仲良くしよう!」
「は?」
***
俺が転校してしばらく経った頃、鏡花ちゃんと俺は誰がどう見ても仲睦まじいカップルみたいに見える仲になっていた。今日の帰り道も一緒だった。
「へぇ、キングはロボット開発なんかしてるんだ。お金たくさんかかりそうだね」
「実家がお金持ちで、俺に期待しててね」
「ふうん。そうだ!キングの前の学校ってどんなのだった?」
「前の学校か。ろくな思い出がないよ」
在りし日の八千代からのいじめを思い出す。あの頃はひどかった。
「君と正反対の女の子がいてさ…」
***
それからずっとキングはその女の子のことばっかり話していた。きっとキング、気づいてないだけでその子のこと、心のどこかで思ってんじゃないの。私はそうと見たね。
「ハナちゃん」
「レオン!出てきて大丈夫なの?」
レオンー佐久間礼音は私の幼馴染だ。私のことをハナと呼ぶのは二人だけで、そのうちの一人が彼だ。生まれつき体が悪く心臓に病をかかえていた。
「ハナ、また何かあったの」
「レオンは心配しなくていい。お金なら私が工面するから」