ライバルと救いの手
『今までいじめてきて本当にごめんなさい、私はあなたの事がずっと前から大好きでした』
瞳をうるうるさせて八千代はキングに訴えた。その姿勢にさすがのキングも折れたと見えて、
『八千代。もう何も言わなくていい。俺も悪かった』
そして二人は抱きしめあって一生一緒にいようと誓う…
…はず、だったのに!私のバカ!
私は昨日のキングにしでかした行為を思い出して赤面した。
「…で結局何も言えなかったって?」
ここは昼過ぎの学校、目の前には親友のアンナが座っていてこれまでの経緯を私から聞いて飽きれている。
「好きのすの字は言えたわ」
「それじゃ意味不明じゃん」
アンナの言う事は筋が通っている。
「向こうで彼女とか出来たらどうするの?」
「あんな変態野郎に女っ気があるとはとても思えないわ!」
実は、キングが転校した学校では、キングとその隣の席の眼鏡をかけた短髪の少女がキングとすぐに打ち解けて意気投合してしまったことを私はまだ知らない。
***
「キング君だっけ。初日からこんなに仲良くなれるなんてなんか運命みたい。一生一緒になってたりして」
眼鏡をかけた短髪の少女ー水無月鏡花は俺に微笑んだ。
「運命、一緒って大袈裟だよ」
そこでふと八千代を思い出した。
確か、一生いじめてやるとか大口たたいてたな?同じ一生…一緒なら、お前みたいな暴力女よりずっと鏡花ちゃんの方がいいよ。八千代よ、俺のことをいじめ続けるだと、傲慢なのもいい加減にしろ。
***
ところが天は八千代を見放さなかった。
「きみ、八千代ちゃんだよね?これキングの連絡先!」
「あなた誰?そしてなんで私にあのバカの連絡先なんかくれるの?」
八千代に手を差し伸べたのはキングの友人、川田なすびだった。