2/20
行かないで
「今日の始まりがこいつのヘタレ顔なんて最悪!」
もう幾度となく彼に会うたびにこんな調子で話しかけている。彼はいつも「またか」と飽きれながら適当に返してくるがこの日はちょっと違った。
いつになく真剣な顔で、「…八千代」と言ってから間をおいて、
「俺、転校することになった」
と言った。ぽかんとする私。
心の中では(なんでそんな⁉)と混乱しているのだが、動揺を押し隠した。そして一瞬で最高の作り笑顔になった。
「ふーん。よかった」
「俺がいない方がお前も多分楽だし、俺も楽だからな」
俺も楽…私の彼にしてきたこと、暴言を挨拶がわりに言いつづけたり、ことあるごとにたたいたり、すれ違いざまに睨むなどということを考えればごく普通の感情だ。
しかし私はそれを聞いて頭が真っ白になった。
「あんたがどこへ行こうと、一生いじめてやるんだから!」
と大声でまくし立てた。
目から汗が流れているような気がした。
「なんで泣いてるのお前…」