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私はあなたが好きでした  作者: 珀桃
あの人の想い
17/20

逃げきったつもりだった

ミーシャ、お前の知らないところで俺はアンナを守ったんだ。アンナのヒーローはお前じゃなくて俺だ。何でお前がいつまでも隣にいるんだよ。そこは俺の席だ。アンナはどういうつもりなんだ。納得いかないなすびはミーシャを呼び出すことに決めた。

「ミーシャ、ちょっと話がある。来い」

「何の話?」

ミーシャはきょとんとしている。なすびはミーシャを使用されていない空き教室へ連れ込んだ。

「ミーシャ、こないだアンナが誘拐されたの知ってるか」

「え?!」

どうやら全く知らないらしい。寝耳に水という感じでなすびの説明を聞いていた。一通り聞き終わったミーシャは顔面蒼白になって質問した。

「…その、鏡花とかいう女の子はどうしてアンナが稀血だって分かったの?」

「さあ、俺も知らない。でも鏡花とアンナは初対面のはずだ。」

「誰か、そこにいなかったのか?!」

ミーシャは口を震わせた。何かに怯えているかのように。他の人間…なすび、八千代、アンナ、キング、鏡花、ほおずき…あ、そういえば、髪の長い女がいたような…

「髪の長い女が途中で出てきたよ。そいつだけ名前がわからない」

「とうとう、ここにいるのがばれてしまった…」

「何なんだよ。お前ら二人とも何かあるのか、ばれたとか狙われてるとか、ストーカーとか物騒だな」

二人とはもちろんアンナとミーシャのことだ。

「なすび君、悪いけど周囲を見渡してみてよ。もし誰もいなかったら本当のことを話すよ」

「ここ、使われてない教室だから誰もいないよ」

一応、周囲を見渡す。誰もいない。窓やドアもミーシャが締め切っておまけに鍵もかけたので、教室は完全な密室になった。男と密室に閉じ込められても嬉しくないな、となすびは思った。

「これは3年前の話なんだけど…」


ミーシャはようやく口を開いた。


俺には一つ上の姉がいる。名前は梨子。とても優しい姐さんで、俺のことは何でもしてくれた。いじめられたときはいじめっ子を返り討ちにしたり、分からない問題は何でも丁寧に解説してくれる。そして掛け値なしの美人でひっきりなしに告白されている。しかし姉は誰とも付き合おうとしなかった。

「今日、同じクラスの男子に告られた。友達だって思ってたからショックだった。」

「付き合えばいいのに、どうして姉さんは全員ふっちゃうの?」

姉さんは悲しそうな顔でこちらを見る。今考えると恐ろしい顔だ。まさか、夢にも思うまい。姉が自分のことを狂おしいほどに愛しているとは…。

「だって、私…」

その時、風呂の湯が溜まったということを知らせる音が聞こえたから俺は支度をして風呂に入った。すると、姉さんの声が脱衣所から聞こえた。

「ミーシャ、今、石鹸ないでしょ」

風呂のドアが何の前触れもなく開いた。俺は呆然とした。だって何も身につけていない裸の姉がそこにいるんだから。一応このとき姉は16歳で俺は15歳。当たり前だが慌てた。混乱した。

「姉さん⁈」

「ミーシャ、私って魅力ないのかな?」

「あるに決まってるだろ!だから目をつぶってるうちにどこか行ってくれ!」

「ミーシャ、目を開けて。なら私といいことしよう、ね?」

 それからの事は思い出したくもない。とにかく姉とこんなことしたくなかった。俺には既に彼女がいた。言うまでもないがアンナのことだ。姉はこの事を知らなかった。しかしやめてくれず、彼女の存在を教えると豹変した。突然暴力的になり、監禁もしようとした。姉は狂ってる。アンナと一緒に姉から逃げた。3年音沙汰がなくなり、逃げおおせたと思ったのに、何の因果があるのか、ここにいることがばれた。そして姉はあの手この手でアンナを追い出そう、あわよくば殺してでも俺を取り返すつもりでいるに違いない。今回の誘拐もこの姉が裏で手を引いているのだろう。多分その鏡花とかいう女の子はこの事を知らない。利用されたのだ。偶然にも礼音とアンナの血液型が一致したために。


そのとき、鍵のかかったドアが激しく叩かれた。

「ミーシャ!いるんでしょ、開けてよ!」

声の主はアンナらしい。ミーシャはドアを開けた。

「アンナ。全部なすびから聞いた。アンナはさ、全部俺に教えずに解決するつもりだろ。だから俺には一切教えてくれなかったんだろ。俺の姉への恐怖心を考えて」

「…。」

隣から八千代が現れた。八千代も今の説明を聞いてようやく、アンナがなぜミーシャを呼ばなかったのか分かった。全てはミーシャのためだった。


「こら、君たち何をしてるんだ?」


「田丸先生!」

突然田丸先生がひょっこりと顔を出した。


「皆で秘密の話してたんですよ!」

なすびが適当にごまかす。もちろん嘘ではなく秘密の話に違いはないが。田丸先生はそれ以上追求せずどこかへ去ってしまった。何か思い悩んでいるように見えたが、きっと気のせいだろう。


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