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キングと八千代
あの時私は困っていた。
これからテストがあるというのに、文房具を忘れてきてしまった。
答えられる問題なのに答えられない…私が絶望に打ちひしがれていると、そっと隣から手が差し出されてきた。手のひらの上に、シャープペンシルと消しゴムがあった。
隣の手を差し出した人間はいかにも声をかけづらい雰囲気の男子で、これまで話したことはなかった。ただし、名前だけはインパクトが大きすぎて覚えている。
その男子ーキングは、早く受け取れとばかりに手をさらにこちらに差し出してきた。
私はひとまず受け取ってそれで窮地を切り抜けた。
声をかけづらい怖い顔の割に優しいんだな…と、私ー八千代がキングに恋するまでさほど時間はかからなかった。
私はさっそく彼にアプローチしたが、全く彼は私に興味を持たない。何か話をしても、「そう」とか「うん」で終わってしまう。
そこで私は彼に興味をもってもらおうと逆転の発想をした。
つまり、彼に嫌いだと訴えつづけたのだった。
もともと四コマ漫画で描いてましたが文章にしようと思います。