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Crassic
Crassic
あるいは最上級の音楽
耳を通るのは幾年も昔に創られた音楽
楽器の調和に旋律の唱和
窓外を彩るのは幾星霜を経た紺碧の海
水面の日光に二種類の青
楽譜が進むにつれ 電車が帰路を急ぐにつれ
動機は朗々と 車両は騒々と
曲が終わるにつれ 駅が近づくにつれ
楽音は清々と 線路は粛々と
鋼鉄の車体が走る騒音が
我が心を躍らせる奏音を掻き消すならば
私は其の全てを葬り去ってしまいたいと思えるほどの
衝動を有していると言える
この最上級の音楽を邪魔するものがあるならば
仮令神であったとしても
一瞬の詩のために 一片の楽のために
永遠の安寧のために 鎮めてしまおう
私の鼓動が交響曲を妨げるのであれば、
この心臓を止めてしまうのもまた一興
最上級の音楽はその名に相応しく
最上級の状態を望むのであろう