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散文詩  作者: 仙崎無識
22/29

だからもう一度ティッシュを配ってくれないか

俺は前線を征くビジネスマン

磨いた革靴

爽やかなスーツ

鞄片手に今日も廻る


ビジネス街はビルが林立

地面近くを人が通る

機械仕掛けの摩天楼

今夜は仕事か飲み会か


街角(ブロック)ごとに立つ人間

その手に握るはポケットティッシュ

渡される時を待つ姿に

眼もくれず進む俺


多忙忙殺忘我に横暴

ティッシュ(無価値)如きに

構う間はない

貰う義務もない


もうティッシュは配らないでくれないか

拒否を気配に乗せて往く

垂れ流される広告とも

鼻水とも無縁だから




俺は窓際中間管理職

効きすぎる冷房

吹き出す逆風

今日も今日とて板挟み


ビジネス街は時計が麻痺

人々はただ仕事する

コンクリの鳥籠の中

今夜はサービス残業か


雨の日も風の日も

渡されるのはポケットティッシュ

拒む気力も消え失せて

幾つか上着に突っ込んだ


無忙羨望野望に絶望

拒む俺と抗う白

たかがティッシュ

それでもティッシュだ


されどティッシュは配られるのか

暇を持て余して受け取った

裏面を見る余裕(じかん)

遣る瀬無い気持ちがあったから




俺はしがない自由人

時間は増える

預金は減る

今日より明日が憂鬱だ


ビジネス街は煌びやか

人々はその魂吸われ

俺はハミ出た落伍者だ

今夜はネカフェかビジホかな


リーマンショックに給料(サラリー)も激震

ティッシュの如く白紙となった

道行く人は目もくれず

ティッシュは勿論渡されず


展望失望冒険に希望

望むはティッシュが

差し出されるか

手を伸ばすかだ


だからもう一度ティッシュを配ってくれないか

広告を映す背に無言で乞う

過去の栄華も失敗も

無に帰してやり直したいから


だからもう一度ティッシュを配ってくれないか

自らの手で掴みに行く

夢も希望もひっくるめて

もう一度前を向きたいから


とある男の栄光から衰退、再スタートまで。

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