ママチャリなら世界を目指せたのに
世界の片隅に打ち捨てられたような身分
加速してゆく世界に追いつくための術もなく
一人いじけて現実から目を背けてしまえば
前にも後ろにも在るのはただの景色だけ
澄んだ青色の車体に鈍く光る警音器
こいつを見た瞬間、うっすらと世界が見えた気がした
変速なんて洒落た機能は付いてないけど
この自転車であの坂を登り切ったら変われる気がするんだ
昨日見た夢を叶えるために今走る
上がる息拍動が世界に自分の存在を知らしめる
自分の意思を伝えるのはこの自転車
早く気がついていれば世界を目指せたのに
世界中の誰もに忘れ去られたような気分
気の利いた自己主張するための方法も知らず
一人何もせず立ち止まってしまえば
後にも先にも立つのは虚しい後悔だけ
力強く回る車輪に鋭く効く減速器
こいつを見た瞬間何かを打ち立てられる気がした
電動アシストなんかに頼ってられない
この坂を登るそれだけのためにこぎ続けてる気がするんだ
明日もまた夢を見るために今走る
拓けた景色水平線が自分の歴史を刻み込む
自分を強く肯定するのがこの自転車
もっと早くこぎ始めていれば良かったのに
いつだって決めるのは自分からなのに
仙崎はママチャリじゃないと自転車に乗れません。