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第九十五話 雰囲気

九十九話じゃ終わらないことに気付いた。

ありゃりゃ!


 書斎から出ると、僕はひとまず野雲さんの部屋へ向かった。初めて野雲さんを見た夜、僕が覗き魔へ転じてしまった場所だ。


 ドアをスライドさせて中に這入ると、僕は思わず顔をしかめてしまった。部屋には空のダンボールが積まれていて、絨毯のうえには雑にたたまれた洋服が散乱している。窓から差し込む光のなかに、ミジンコみたいな埃が漂っていた。野雲さんはどうやら片付けるのが苦手らしい。


 女子の部屋に入るというのは、なかなか憚られるものだけれど、なぜかその時は緊張も興奮もしなかった。部屋の静けさとともに、ただ不思議な気持ちだった。


 部屋には何ら異変はなかったが、見渡していくうちに僕は机の上にあるものを見つけた。近寄って、そっと手にとってみる。僕の手に握られた紫色のお守りは、何かを訴えかけるように僕の視界にまじまじと映った。


 紐をほどいて、中に入っている紙を取り出す。


 もしも、毎晩この紙に描かれている絵が犯人の手によって書き換えられているのだとしたら、今回も内容が換えられているかもしれない。


 そんな予想をしながら紙を開いていくと、案の定、紙のイラストは微妙に変えられていた。初めは、「なにか違うな」という雰囲気だけでの憶測だったが、よく見ると、その変更点が思わぬものだったことに気付いた。


 まず、僕が変更されていることを予想していた荻江先生の絵は、やはり代えられていた――山の上に仰向けに倒れている絵で、おそらく山のようなものは浮島なのだろう。


「そんな……」


 思わず、そんな間のぬけた声がでてしまう。しかし、それも無理はない。なぜなら、変更されていたのは荻江先生の絵だけでなく、一番右、リンゴの人間の絵も変わっていたからだ。


 首をロープでくくられ、今にも崖から落されそうになっている絵だ。


 まさか、一晩で二人も襲うなんて……。


 完全に予想外だった。


 しかも、今から探そうにも、そもそもリンゴが好きな人間を知らないのだから探せない。島中の崖を全部見回るという手もあるけれど、このイラストに描かれているのが崖とは限らない。実際、東西南北それぞれのチームがまだそれらしき被害者を見つけていない。たとえ、荻江先生でなくとも、崖から落ちそうになっている人間を見つければ助けるはずだ。


 考えれば考えるほど、分からなくなってくる。


 僕の表情に焦りが現れたとき、また電話が鳴った。


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