第三十八話 犯人
ああ、見直していたら誤字発見しました。
ええと、途方もないものは改正しますが、とりあえず意味は伝わるものは放置しておくことにします。改稿の時に直しますので、あしからず!
「この事件に対しての、オマエの意見をそろそろ聞かせてくれないか?」
僕はすでに習慣になりつつある状態で泰助に話を掛けていた。つまりは、パソコンの前に座りこちらに背を向けた泰助に、座り所のないまま直立した僕が話し掛けている状態である。もういっそのこと泰助のシャツの背面に妖怪の顔でも描いてやろうか。そうすれば、まだ話しているという感覚があるだろう。
「言ったじゃないか。野雲さんが犯人かもしれないって」
「違うな。そこまでは僕だって知っているんだから」
僕の言っている意味が分からなかったのか、泰助は何も反応を見せない。
「オマエはいつだって、僕の考えの一歩先にいる」
これは、事件が起こってから幾度となく感じたことである。別に僕の推理力が落ちぶれているとは思わないが、泰助はそんなことすら意に介さないぐらい卓越しているのだ。冷静すぎて、どこか怖いと感じるときもあった。
大半の推理小説とかだったら、「犯人はアナタだ」の宣告までに数人の容疑者が出てくるものだ。犯人の選択肢すらあれば、一人ひとりに虫眼鏡を当てて調べていけば事件の全貌は間もなく明らかとなっていくだろう。けれども、この事件にはそれがない。ほとんど犯人に目星がなく、かろうじて可能性を見出したのが野雲さんという犯罪に手を染める必要がないほど爛漫な人生を送っているだろう美少女。
「どんな理屈なんだ、それ」
泰助は鼻で笑うだけで、他には何も喋ろうとしない。
これまでは、ヘタレ団長と蔑んできたのだが、この事件の功績を機に少しは尊敬しようと思っていた。しかし、ここで行き詰っているということは、ここまでの有能っぷりは偶然だったということか。
「まあ、いいよ。僕はオマエみたいに探偵の素質はないし、出しゃばって怪我するよりはオマエに従うほうがいいかもしれない」
誰が嘘を吐いているのか。誰が竹内をあんな目に遭わせたのか。誰が次の被害のターゲットになるのか。
その時、インターホンが鳴り響いた。
暫時、無音になる。
静寂に包まれたなか、階下で泰助の母が玄関に向かう足音が聞こえてくる。
そして、何かの物音が空気を伝わってきたあと、二階のこの部屋に向かって母が声を上げた。
「この前の引っ越してきた女の子が来てるわよー!」
熱いのか冷たいのか判別のつかないような汗が、頬を伝った。