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第三十五話 港

色々ありましたが、問題解決してよかったです。

もう気も落ち着きましたので、これを投稿します。


おろろ、気分が落ち着いたせいか、文章力が向上してる!?


なんてメンタルに流される作者なんだ!

 潮の香りが鼻の奥を収縮させるようだ。数羽のカモメが海と空の境目を旋回しながら、僕らを拒絶するように鳴いている。海の遥か遠くには靄が掛かったような本土の陸が薄っすら見えている。


 僕と泰助は、海岸沿いの堤防の上を二人並んで歩いていた。左方には真っ直ぐ海岸に沿って道路が続いている。もちろんのこと車は通る気配がない。道路の真ん中に横たわって日中の限り惰眠を貪っていても、おそらく何からも轢かれないだろう。危険が及ぶとしたら、それはカモメの糞ぐらいであり、堤防付近には所構わず白い半個体状の糞が投下されている。僕らは慣れっこなので、今更それを避けたりせずに、逆に靴で踏み潰すぐらいの覚悟で歩いていた。右方にはテトラポットを挟んで一昨日の雨の影響で濁った海が広がっている。こうも濁っていると魚は釣れないだろうから、いつもテトラポットに陣取って釣果を競い合うおやじ集団は見受けられない。もしも濁っていなかったら、風光明媚な海を拝めたことであろう。島の住人が自ら言うのもなんだけれど、本当にここの海は美しい。海底まで透き通るような南国チックの海に、宝石を飾りつけたようなサンゴ礁が見受けられ、日に当てられて波打つ海面の煌きは舌を巻くものがある。


 もう日も傾いて、久しぶりの青空が橙色に染まりつつある。学校が終わって義務教育から開放された時間であるから、もしかしたら散歩をするクラスメイトと出くわすかもしれない。それは困る。二人して堤防を歩いているのが若い男女のカップルであれば、海の濁りすら考慮されないぐらいロマンティックな光景なのであろうが、その実態は平凡な高校生と平凡な妖怪の組み合わせである。しかも同性ということが、更なる反感を買ってしまうだろう。


 僕は泰助を横目で黙視してみる。オレンジに映える彼の横顔は、どこか真剣で僕の心情と似つかない。足取りも速く、珍しくも若干僕が泰助を追いかけている状態だ。


 道路を挟んだ向こう側には武美山の片割れとも言える林が茂っている。皮肉なのは、武美山より生き生きとしていて、緑色に富んでいることである。ここは夏になるとセミがカモメに対抗するかのごとく鳴き続けるスポットだ。別に勝手に鳴きあうのはいいけれど、ここを通過する人間はたまったものではない。うるさいわ、カモメの糞は落ちてくるわ、蝉に小便を引っ掛けられるわと迷惑極まりない。


 前方、堤防を辿った先にいくつか漁船の停泊する港が見える。コンクリートで埋め立てられたその港は、毎日の四・五回フェリーがやってくる。島民にとっては本土へ向かうための唯一の足とも言える。


 港には小さなプレハブ小屋が佇んでいて、その潮風に当てられて廃れたような壁には受付の窓があり、ガラスを運んだ向こうには退屈そうに頬杖をつく港ばあちゃんがいる。港で搭乗の受付をしている婆ちゃんだから港ばあちゃんであり、本名は確か岸本友江さんだったような気がする。


 港へ近づいた僕らを視界に入れたばあちゃんは、暇を潰す玩具を見つけたように、ひょいと背筋を伸ばし、銀歯をむき出しにしてにやっと笑った。そして、こちらに向かって手招きした。まあ、僕たちも端から港ばあちゃんに用があったわけだから、歓迎されるのは都合がいい。


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