第三十三話 共通点
次のターゲットが、僕?
背筋に沿って氷の管を通されたような感覚が僕を襲う。ようは、どうしようもないほどの寒気である。
「どういうことだよ」
僕は声を低くして泰助を睨み付けるよう言った。
「彼女に好かれると、災いがやってくる」
泰助は僕に向けていた指先を自分のこめかみに当て、ピストルを撃つように「ボーン」と声を発した。どちらかというなら「ばーん」だろと危うく突っ込みそうになったが、空気の読める男として名を馳せる僕としては堪えなければならなかった。
彼女と仲良くなりすぎると、厄難がやってくる。そういえば、いつか屋上でカツサンドを頬張る泰助がそう言っていた。少し言葉が違うけれど、意味は同じなのであろう。本土の友達からの情報らしく、曖昧なまま横流しにしていたが、確かに今回、竹内は災いに遭った。
「それを鵜呑みにするのかよ」
僕は声が上ずらないように注意しながら、架空のピストルの弾が頭を貫通した泰助を睨み続けた。やがて泰助は天井を仰ぎ、独り言のように――されど一定の説得力を伴った言葉を放った。
「本土では、知れてるだけで三人ほど被害にあってるらしいぜ」
「さ、三人?」
「ああ、一人目は半裸の状態でひと気のない砂浜で気絶させられていた。二人目は自宅のベランダから身を乗り出した状態でロープで固定されていて、三人目は夜の学校で凍死寸前のところを警備員に発見された」
泰助は、被害者を言うごとに指を折っていく。今、四本目を折った。
「そして、今回の竹内、火であぶられていた」
「でも、それが全員同一の犯人だとは限らないじゃないか」
僕は何をむきになっているのか。自分がターゲットになるという宣告に、混乱しているのだろうか。
「いや、この事件には共通点がある」
「共通点?」
僕は思わず、首をかしげた。