第二十話 怖い
どりあえず、テストが終わったので執筆再開しますが、なんというか短期間で色々な本を読みすぎて文章に影響が……。まあ、些細な問題なので読者には差し支えないと思いますが……。
とりあえず、完結したら一斉推敲を決意した!
「よし、後は任せて野雲さんは家に帰っていいよ。夜も遅いし」
僕は部屋の壁に掛かっている時計を見ながら言った。もう七時を回ろうとしている。引っ越してきたばかりの彼女はまだやらなければならないことが沢山あるだろうし、そもそもこんな下劣な男らと行動を共にしたくないだろうという気遣いからの発言であった。
「いやっ……でも……」
野雲さんは自分の胸倉を握り締めて、困惑するように僕と泰助を交互に見た。竹内がさらわれたことに野雲さんは何ら責任はないのだが、彼女からすれば、さすがにのこのこ帰るのは気が引けるのだろう。
「私がいないと竹内君がさらわれた場所も教えられないし、色々と不便だと思うよ」野雲さんの言い方は逆に行きたがっているように聴こえた。しかし、僕は首を振る。
「駄目、野雲さんは帰るべき」
昨晩、あの雷が室内を青白く照らし出した一瞬、積まれたダンボールの数々や山のように盛られた衣類が僕の視界に捉えられた。やはり、あれは早急に片付けるべきだ。美少女の理想像として!
ちなみに、竹内がさらわれたのは武美山で間違いないだろう。というか、この小さな島には武美山しかない。しかも、武美山自体あまり大きくないから、遭難なんて有り得ないし、捜索するのも簡単なはずだ。
しかし、いま驚くべきことは、この島に不審者がいるということだ。もちろんのこと、パーカーのフードを深く被る大柄な男などこの島では見たことがない。まだその男が犯人だと決まったわけではないが、この時間に山のほうへ向かっているというのはおかしい。逃げた竹内を追いかけたという可能性も否めないだろう。
しばらくは「いやっ……でも……」と駄々をこねるように粘っていた野雲さんであったが、僕が譲らないことを悟ると、じゃあ、竹内君のことお願いね、と言って帰っていった。
「あーあ、せっかく仲良くなるチャンスだったのに」
野雲さんがいなくなると、さっそくカーテンを閉め切りながら泰助は呟いた。次に照明が消され、部屋の余地にガラクタが転がり込むと、あっという間にいつもの部屋へと戻った。
「うるせえ。二人っきりだとろくに会話もできないくせに」
僕が電話越しに垣間見た泰助の萎縮振りを想起しながら言ってやると、彼はひょっとこみたいな顔をして「し、しらねーな」ととぼけた。
「とにかく、今は竹内を探しに行くしかない――っていうか竹内のやつがとっくに家に帰ってるとかいうオチはないよな?」
「ないない。君が来る前に野雲さんの指示で俺が竹内の家に電話したんだ。やっぱり帰ってきてなかった」
淡々と述べる泰助。そういえば、僕は竹内が連れて行かれたって電話で聴かされたとき、足の力が抜けて座り込んでしまったほどだけれど、こいつはどうだったのだろうか。ここまで淡々としていると、何だが少し怖い。友人がさらわれたかもしれないっていうのに、なぜこんなにも普段通りに振舞えるのか。泰助はそういうやつだと認めてしまえば、それはそれで何ともないのだが、やっぱり少し怖い。