第二話 泰助
更新は少しずつ小まめにやっていこうと思います。
サブタイトルは、思いつかなかったという成れの果てだと思ってくれて構いません。いや、思ってください。
今でも鮮明に思い出すことができる。あれは浦井高校に入学して一週間後のことであった。
浦井高校とは、人口およそ八百人の裏井島に建てられた唯一の高校である。ちなみに、小中学校は合併していて全校生徒は三十人程度。そこから浦井高校へと進学するのが平常なので、高校の全校生徒もあまり変わらない。最近は高校へ進学するのを機に本土へ通う島民もいるようだ(島は日に四・五回フェリーがやってくるだけなので通学は厳しいものになるが)。
僕は浦井小学校、浦井中学校、と何のひねりもなく代わり映えしない学校生活を淡々と過ごした。そのためか浦井高校に進学してからもそんな生活は続いていくだろうと考えていた。しかし、高校に入学して一週間後のこと。突然、間島泰助にこう持ち寄られた。
『高尚探偵団へようこそ』
レンズの外れた虫眼鏡を右目にあてがって、僕の顔を覗きこむソイツはどう見ても探偵ではなかった。不潔だと思われる一歩手前ぐらいの手入れしかされていない髪や、高校生ながらに薄く生えたひげ、筆箱のなかに無駄に多く小道具を入れて来ていたあたりは僕の中の探偵のイメージからかけ離れてはいなかったが、どうにも胡散臭かった。今まで、あまり関わってなかった人物であったから(こんな島では逆に関わりを持たない人のほうが少ないのだが)、僕の知らぬところでこっそり活動をしていた事実があろうと驚くこともないし、逆に胡散臭いのが探偵らしさではないかと突き詰めれば、確かにそうである。
とにかく、推しに推されたので僕は高尚探偵団に入ったのだが、入ってビックリ。もはや高尚でも探偵でも団体でもないではないか。団員はリーダーである泰助と、団員一号である僕だけで、探偵らしい事件もろくにおきない。活動の内容は『無人住居の探索』や『ウミガメをスパイ』などという高尚というか低俗なものであった。僕が探偵団の活動を事件ではなく用件と呼び始めたのも無理はない。
騙された、と悲壮感に浸りつつも唯一の団員という意味不明の責任感が「辞める」という一言を遮らせていた。よって、嫌々ながらに用件に付き合う現在にいたるのである。本日も夕刻に警報機のような電話のベルが鳴り、応答すると「今晩、うちに来い」と命令をうけたのである。