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第十四話 屋上

十三話を少し編集したので、「ん? 話が繋がっていない」と違和感を覚えた方は十三話を振り返ってみてみてください。編集というか、省いただけですが(笑)


 錆び付いた鉄扉を無理やりこじ開けると、視界が青一色に塗り替えられた。頬を冷たい風が撫でていく。僕は弁当の結び目を掴んだ手を振り上げて、後から階段を緩慢な動きで上ってくる泰助を「早くしろ」と急かした。


 周囲を見渡したが屋上に人影はなく。テニスコートのラインがかろうじて見える緑色の床を横断し、かつてテニス観戦のために使用されていたベンチに深くもたれた。鉄柵に取り囲まれた空間に佇むと、獄に囚われた罪人のような気分になる。現時点における僕の心境には痛切なものがあるが、幸運なことに鉄柵の向こうには空と同調するような穏やかな海が広がっている。耳を澄ませば風にのって波の音が聴こえてきそうなぐらいで、計り知れぬ開放感をもたらしているため、極めて鬱々とした気分になることはない。


 あとからサンドイッチの入ったかごを携えた泰助がのん気にあくびをしながらこちらへ向かってくる。僕は眉間にしわを寄せつつも黙ったまま腰を浮かせて隣にスペースを開けてやった。泰助はそこに座り、「んで? 用ってなによ」と目元に浮かんだ涙をぬぐいながら僕の方を見た。


「とぼけるな、野雲明美についてと決まっているだろう」


「ああ、彼女。うん、可愛かったなあ」


 目を細めて言う泰助は、本当に現状が理解できていないように思えた。


「いいか、僕たちは昨晩に野雲明美の自宅へ侵入しようとしたんだ。そして窓も閉めずに帰った。つまり証拠を残して帰った阿呆丸出しの変態なわけだ、僕らは」 


 うんうん、と頷きながらも泰助の視線はサンドイッチの詰まったかごへと注がれている。恐るべきことに彼の食べるサンドイッチは全てがカツサンドであった。


「まだ捜査のメスは僕らに及んでいないみたいだけど、とにかくこれ以上に手掛かりを増やしてはいけない」


 カツサンドを前に上唇、下唇と交互に舌を滑らせる泰助を見ていると、必死になって悩んでいる自分が馬鹿馬鹿しく思えてくる。『学校では正体がばれないよう阿呆を演じ、裏では名探偵ぶりを発揮させ難件を次々と解決していく』そんな裏づけがされているのであればお見事というべき行動であるが、残念なことに泰助は『学校ではありのままの阿呆、裏では名探偵ぶった阿呆』である。どうしようもない。


 しかし、そんなどうしようもない状況に負けていられない。


 今日、クラスに美少女が転校してきた。

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