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第百四話 立ち止まる

あーあ。

なんか、この小説の意義がつかめなくなってきた。

今読み返してみたら、「なんじゃこりゃ!」ってなった・・・。


スランプ状態で無理やり書いてるからかなあ?


まあ、もうすぐ終わるし、いいや。

今回得た教訓『やっぱりプロットは立てるべき!』


 両親が他界して天涯孤独の身となった私は、ついに行き場をなくして途方に暮れていた。すると、遠い親戚に私の面倒を見てくれるという人物が現れ、私はすんなりそれに応えた。


 引っ越した親戚の家には、老夫婦が住んでいて、息子娘は誰一人いなかった。私が数少ない荷物をもって木造建築のその家に訪れたとき、老夫婦はもともと細い目をさらに細めて私を寛大に迎えてくれた。


 老夫婦は、私の過去に詮索を入れることをしなかった。母方の自殺の知らせだけを知っていて、もうそこからある程度事情は察していたらしい。私には、とてもありがたいことだった。


 私が何日間部屋に閉じこもっていようとそれを許し、「あなたの好きにしていいのよ」が夫婦たちの口癖だった。最初からこの二人が両親だったら、どれだけ良かったかと思い、そしてそう思うたびに私はまくらに顔を押し付け泣いた。


 そんな老夫婦だからこそ、私が本土を離れた島で独り暮らしをしたいと頼んだ時も、笑顔で承諾してくれた。いらぬ心配を掛けず、ただ「いつでも帰ってきなさい」とだけ耳打ちした。


 どれだけ純粋な涙を流していようと、私はもう手遅れだった。精神が崩壊していて、老夫婦の優しさに触れるたび、傷は癒えるどころか逆に深まった。


 私は、身に寄ってくる男どもを、スタンガンで撃退するのに、快感を覚えてしまっていた。学校に行かず、夜になったらスタンガンをふところに忍ばせ、家を飛び出し街中を歩く。人通りの多い場所で壁に寄りかかっていると、大抵男にナンパされ、私はなりゆきまかせに男に着いていくのだった。


 あとは、人の目が届かない場所で、男を襲う。


 私がスタンガンを取り出した時、それは同時に男と女の力の差が逆転するのと同じだった。男の恐怖に歪んだ顔、悲痛な叫び、恐怖で震える身体、そのどれもが私に一時の幸福感を与えた。


 今まで私を征服してきた男という存在を、反転して自分が征服する感覚。そこに父の意思など微塵もなく、まごうことなく私的な行いだった。


 私がスタンガンを取り出すときは、たいてい男が私をレイプしたり、またその予兆があったときだった。そのおかげか、私の犯行は正当防衛と化され、厳重注意を受けるだけで終わった。処罰にいたったことはなく、むしろ男のほうが処罰を受けたことすらあった。


 しかし、そう何度も法廷に立てば、私の評判は悪くなるばかりだった。それどころか、私の噂は町中に広がり、今さら私に声を掛ける男も数少なくなった。


 私は、やがて居心地が悪くなり、高校三年の秋、本土を離れて裏井島へ引っ越した。


 そこで私は生まれ変わるつもりだった。父母にみたてた人形を自宅に置き、あたかも普通の家庭を繕ってみせた。私はもう書斎のスタンガンに手を出すことはないのだろうとすら思っていた。


 しかし、男という存在は、本土でも島でも同じだった。


 高校へ赴いた途端、男たちは私に話しを持ちかけ懇ろになることを企んだ。


 私は我慢ならなかった。男への恨みのためばかりではなく、ただ単に男という存在を痛めつけてやりたかった。あの恐怖に歪んだ顔を今一度見たくなったのだ。


 外れたネジは、もうどこにもなく、どこへ逃げたとしても、そこには壊れた私がいたのだった。


 私はあとさきを考えず、竹内を襲った。もしものとき正当防衛となるよう、私は竹内の方から襲ってくるように仕向けた。胸が見えるよう制服を着崩したり、喋り方も艶めかしく聞こえるよう心がけた。


 竹内が顔を赤くして私にキスを迫ったとき、男なんて単純だと私はつくづく思った。


 産田のときも同じ手順だ。肉じゃがを食べさせたあと、小川まで行って、竹内と同じことをしてみせた。飛んで火にいる夏の虫だなと、私は苦笑するしかなかった。


 荻江のときは、教室でスタンガンを使うわけにはいかず、しかたなく一度逃げ帰ってその晩に逢引に誘い、海岸で襲った。




     ▼




「ただね、君だけは、何もしてこなかったのよ。手料理を振舞っても、身を寄せても、顔を近づけても、頬を染めただけで何もしてこなかった。残念だけど、それじゃ襲えないのよ」


 携帯画面に表示された通話時間は、とうに二十分を過ぎていた。


 僕自身、いつの間にか走るのやめ、武美山の一歩手前で立ち止まってしまっていた。


 僕は野雲さんの話に面食らってしまっていた。


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